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「ブロントって何なのよ?」
「『ブロント・エンド』というコロニーですっ!」
「へー」
パフィが聞けば素直に答えてくれるので、情報源には困らない。しかし、今知りたい事が少ないパフィからの質問は少ない。
「もう帰っていいのよ」
「え……」
「待て待て待て!」
質問が思いつかずに解放しようとしたが、ハーガリアンによって止められた。
「レジスタンスに狙われてるんだから、もっとこう…なんかあるだろ!?」
「そそそうですよ! 俺たちは貴女様を排除しようとしてるんですよ! ツーサイド派とかレジスタンスのリーダーとかに興味無いんですか!?」
「なんで自白しようとしてるんだ!?」
「正直に言うと、どーでもいいのよ」
『ええええ……』
パフィは心底興味無さそうである。
その事に苦情を言いたそうなネフテリアが後ろからペシペシ叩くが、パフィに両手を掴まれ、体を後ろに傾けられ、黙れと囁かれて沈黙した。時々変な声が漏れている。
その様子を、ムームーが辛そうに見ていた。
「なんてムゴい事を……」
そんなムームーも、少しずつ足が痺れてきたようだ。アリエッタを撫でて気を紛らわせている。
「なんでそんなに興味無いんですかね……」
テンションの落ちたハーガリアンが、改めて丁寧に聞く。後ろのネフテリアを見て、ラフに話しかけるのが怖くなったのだ。
「レジスタンスってアレなのよ? 自意識過剰で、排他的で、身内にしか友達作れない可哀想な人たちなのよ?」
「いやそんな事は……」
「だいたいリージョンが違うとか同じだとかどうでもいいのよ。近所でも知らなくて信用できない人なんて沢山いるんだから、世界が違うだけで拒絶するとか器が小さすぎなのよ。そんなんじゃ絶対モテないのよ。アリエッタもそう思うのよ?」
「はいっ」(呼ばれた!)
「小さい子もこう言うくらいなのよ。そんな人達──」
「ちょっとちょっとパフィ!」
「──何かあったのよ?」
やたらと辛辣な意見を述べるパフィに、ムームーが慌てて声をかけた。
「そこまでにしてあげよう? ほら」
ムームーが指差した先には、すっかり凹んで膝から崩れ落ちた後のレジスタンス達。ハーガリアンが「大丈夫だ、傷は浅いぞ!」などと真剣に励ましている。
「どうしたのよ?」
「いや今のは絶対ダメージ大きいでしょ……」
ツインテール派達も、哀れみを込めた目で助けようとしている。恐る恐るパフィを見ているが、それは自分もレジスタンスと同等に扱われないか心配だからである。
離れた場所にいるツインテール派達がボソボソと話し合っていた。
「今のはひでぇな……」
「うん、アタシもあんな美人に言われたら凹む……」
「あの子供に同意されたのがトドメになったし」
『異世界怖い……』
パフィ個人の性格なので、異世界かどうかはあまり関係無い。
一方で、同じくボソボソと別のグループも話し合っている。そちらにはハーガリアンも励ましの合間に時々混ざっていたりする。
「俺ちょっとヤバかった」
「わかる」
「お前達。パフィさん……いや、パフィ様に貶される為の企画を考えておけ」
『了解!』
顔を紅潮させながら、何やらソルジャーギア内で始める話をしていた。異常なまでに気合に満ちている。
本来関係の無いツインテール派達も一緒になって頷いているが、そこは総司令たるカリスマ性という事かもしれない。
(なんか気持ち悪いのよ)
気付いたパフィが冷たい視線を送ると、嬉しそうにビクビクと痙攣し始めた。
「……まぁいいのよ。こいつらには飽きてきたし、そろそろ帰るのよ?」
「いやいや。何も思いつかないなら、わたしが話していい?」
「えー。アリエッタが退屈するのよ」
「なんでそんなやる気無いの……」
アリエッタが喜ぶからという理由でのんびり見学した戦闘行為の結末が格好悪かったのと、アリエッタとの時間が終了したせいで、すっかりやる気とテンションを失ってしまったようだ。
「アリエッタ、おいでなのよー」
「う?」(なんだろ?)
なんで座らされているのか理解していなかったアリエッタが立ち上がり、ムームーが解放された。まだ餅に巻かれたままだが。
ここでパフィも立ち上がった。ネフテリアが解放され、その場で横向きに倒れた。もちろん餅は巻いたままである。
「こっちなのよ。こっち」
「はいっ」
2人でネフテリアの足の方に移動し、パフィが指を差した。
(えっ、本当に? そんな事していいの? 大丈夫なの?)
疑問の顔で見上げたアリエッタに対し、パフィは何度も頷く。それを見て安心し、アリエッタはネステリアの痺れた足を撫でてあげた。
「ほえあおおあああいいえああ〜〜っ!!」
変な声で鳴き声を上げるネフテリア。
アリエッタは一瞬驚いたが、なんだか楽しくなってしまい、次は指でツンツンしてみた。
「おっぴょおおお〜〜〜!」
「あははははっ」(変な声ー)
「私もやるのよ、うりうり」
「たすけっオアァァァ〜〜〜!」
パフィを恐れるあまり決して誰も助けに入ろうとしないまま、王女の苦しみはこの後しばらく続くのであった。
なおこの後、ネフテリアがすっかり動かなくなってから、このままでは良くないと思ったムームーが、レジスタンスから色々と情報を聞き出すことになる。
「それじゃ、いまからツーサイドアップのアジトにのりこむか」
「えっ、マジですか?」
ピアーニャの提案に、クォンが驚いた。
「まぁまぁ。良いじゃないですか。ここからはそう遠くないですし」
スレッドがクォンを宥めようと、ジュースを差し出した。
「なんでアンタがいるの!?」
「さっきボッコボコにされてなかった?」
「ははは。私のツーサイドアップを愛する心は、あれくらいでは折れませんよ」
「いや心じゃなくて物理的な話なんだけど……」
同じツーサイドアップ派のレジスタンスである女達にボロボロにされていたのは本日の事。まるでそんな事が無かったかのように平然としている。
あまり気にしない方がいいのかなと考え直したミューゼとクォンは、おとなしくピアーニャに従う事にした。
ソルジャーギアの近所にある店から出て歩くと、すぐにその場所に到着した。
「ここが我々の拠点の1つです」
「いやちかいな!?」
ソルジャーギアの隣の少し大きな建物。ここがツーサイドアップ派の拠点である。
「隊員も多いので、ここがなかなか都合がいいんですよ。勤務後に顔を出して語り合うんです」
「仕事終わりの集まりかっ!」
「えっ、2つの派閥の拠点はまだ判明していないって、先輩から昨日聞いたんだけど……」
まさかのお隣さんである。
「ハーガリアンのやつ、なにやってんだ……」
「あの総司令が何もしてないわけ無いんだけど、近すぎて見逃しちゃったのかな?」
その総司令は、現在パフィに貶される計画を、ツインテール派達と一緒になって考えている。
どういう事か後で詰め寄ると決め、今はとりあえずツーサイドアップ派の拠点に乗り込む事にした。
玄関を抜け、スレッドの案内で中を進み、少し大きなドアの奥へと通された。
『ようこそ。ツーサイドアップカフェへ』
中にはきらびやかなボディスーツとアーマメントに身を包んだイケメン達が、ミューゼ達を出迎えた。
『へ?』
3人とも唖然としている。
理由はさわやかスマイルのイケメン達……ではなかった。少し奥には別のきらびやかで悩ましいボディスーツに身を包んだ女性たちがいる。そのうちの2人が、先ほどスレッドをボコボコにしてミューゼ達を追い回した女と、自爆してボロボロになった痴女である。
よりによって、その2人がしゃなりしゃなりと優雅に近づいてきた。
「どうだい? いい男達だろう? よく来たね。歓迎するよ」
「オマエ、さっきすっごいカオで、おいかけてきてたろ……」
「そうさ。でも今はそういうの無しだ」
「ええ、イケメンの前では敵も味方もありません」
「なんだそれ……」
謎のノーサイド精神により、なぜか自分達を完全に敵視してくる相手から丁重なもてなしを受ける3人。先程までお菓子を食べていたのを考慮されてか、ドリンクだけがテーブルに置かれた。
「あ、食べたい物がありましたら、おっしゃってくださいね」
そう言って、メニューを置いた。気遣いもしっかり出来ている。
「ここはそーゆーミセなのか?」
「いいえ、予行練習を兼ねての勧誘です。貴女方は丁度女性グループだったので、イケメンを揃えておけば話に乗るだろうと思いまして」
「いやオマエらレジスタンスだろ。なにカンユウしてるんだ」
「ああ。だが正面からヤりあったら敵わなかったからな。いっそ話し合いで丁重に追い返そうという魂胆だ」
「それ言っちゃうんだ……」
今は敵意を感じないからと、ミューゼもクォンも、そしてピアーニャも大人しく話をする事にしてみた。
「わたくしはエンディアと言います。宜しくお願いします」
「アタシはフーリエ。よろしくな」
丁寧で煽情的な方がエンディア。男勝りな方がフーリエである。
自己紹介を終えると、イケメン達が6人近づいてきた。警戒されないように、そして顔を見やすいようにと、ピアーニャ、ミューゼ、クォンの正面にそれぞれ2人ずつ座った。
まずは同じサイロバクラム人のクォンから堕としにかかるようだ。
「お嬢さん。すばらしいツーサイドアップをお持ちですね」
「既に僕の心は貴女に釘付けになっています。ともに歩んでいきませんか」
「すみません。クォンにはもう心に決めた方がいるんです」
案の定秒殺されていた。クォンはハッキリキッパリ遠慮なく断る性格なのだ。
続いてミューゼの番。
「どうだいお嬢様。俺たちと──」
「あたしにはもう可愛い嫁がいるし、男は別にいいかな」
「………………」
秒すらもたなかった。ミューゼはアリエッタ一筋なのだ。
最後にイケメンとピアーニャの戦いが……
「おーよちよち。大きくなったら美人さんになるねぇ」
「お兄ちゃんが高い高いしてあげよう」
「コドモあつかいするなぁっ!」
バキィッ
……物理的に始まってしまった。