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私の昔話、ですか。
1946年6月、私は欧州連合の成立一年前にこの地球に生まれた。
ベネルクス三国の一つ、ネーデルラントで私は生まれたした。
「綺麗なお花です」
私が一番最初に目にしたのは、一輪の花でした。
「お前、、、ドールか?」
屈んでお花を見ている私の隣に人が、いえ、雰囲気的には、私と同じ存在ですから、ドールでしょう。
「えぇ」
私は先程まで見つめていたお花から目を離し、話しかけて来たドールを見る。
そのドールは、紅、白、蒼のグラデーションになっている腰程まである長いパーマのかかっている髪を下ろして、左耳には銀のピアスを付けています。ラベンダー色の瞳で、瞳孔は十字架の様な形になっていて、右腕には青と赤の腕輪が交差して浮いていました。そのドールを一言で表すなら、カッコいい大人の女性でしょうか。
「そんな所で屈んでいたら折角のドレスに土が付くぞ?」
不思議そうにそのドールは私のくすんだピンクと赤色のドレスを指差しながら聞いてきました。
「あら、お気遣い有難う御座います。ですが、このドレスは正装ですので、そう簡単には汚れませんよ」
私はそう微笑みながら答えました。
「その花が気になるのか?」
そのドールは私の隣に屈み、お花を優しい手つきで愛でました。
「えぇ。とても、可愛らしいお花だと思いまして」
「この花はな、この国、ネーデルラントの国花のチューリップだ。そうだろう可愛いだろう」
少し自慢げにそのドールは可愛らしいお花の名前を教えてくれました。
「チューリップ、可愛らしいお名前ですね。教えて下さり有難う御座います。えっと、」
そのドールの方を向いて感謝を述べてから名前を言おうと思っていたのですが、名前を聞くのを忘れていました。
「自己紹介が遅れたな。私はこの国、ネーデルラント様のドール、蘭華だ。宜しくな」
白い歯を口の中からひっそりと覗かせるように彼女、蘭華さんは笑いました。
「はい。宜しくお願いします。私は、まだ生まれていない御主人様、、、欧州連合様のドールです。以後お見知り置きを」
そっとドレスの裾を掴み綺麗に一礼をしました。私の紺色に星をまぶしたような髪が前に出ないように気を付けながら。
確か、こんな感じで私は蘭華と出会ったんだったな。
「欧州連合、、、そうか、未来には完成するんだな」
何か深みのある様な言い方で蘭華さんはそう言いました。
「欧華。お前、まだ生まれたばっかだから家も無いだろ?私の家に来ると良い。主もそう言うのでは怒らないからな。逆に歓迎するだろう」
ニカッと笑って、先程の、深みがあって、少し悲しそうな雰囲気を無かったかのような仕草を蘭華さんは見せました。