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「……ふぅ、さっぱりした」
柔太朗がバスローブをゆるく羽織っただけの姿で、洗面台の鏡に向かっている。お風呂上がり特有の熱を帯びた白い肌が、少しだけピンク色に上気していて、濡れた髪からは滴がポタポタと落ちて、鎖骨のくぼみに溜まっていた。
「……柔、髪。ちゃんと乾かさないと風邪引くよ」
後ろから入ってきた勇斗が、呆れたように、でも愛おしさを隠せない目で見つめる。手には大きなタオルとドライヤー。
「……勇ちゃん、やって」
柔太朗が鏡越しに勇斗を見つめ、少しだけ小首をかしげた。いつもなら「自分でできるし」ってツンとするのに、今日は少しだけ甘えたい気分らしい。その無防備な瞳に、勇斗の心臓が不意打ちを食らったように跳ねた。
「……はいはい。おいで」
勇斗は柔太朗を自分の前に立たせると、背後から包み込むようにしてタオルを頭に乗せた。柔太朗の細い肩が、勇斗の胸にすっぽりと収まる。
「……ん、……勇ちゃんの手、おっきい」
「……柔がちっちゃすぎるんだよ」
ドライヤーのゴーッという音が狭い洗面所に響く。温かい風と一緒に、柔太朗の使っているシャンプーの甘い香りが勇斗の鼻腔をくすぐった。 指先で柔太朗の柔らかな髪を梳くたびに、うなじの白い肌がチラチラと見えて、勇斗は喉の奥が熱くなるのを感じていた。
(……やべぇ。……これ、意識してないのかよ、こいつ)
勇斗は必死に理性を保とうと、別のことを考えようとする。けれど、目の前の柔太朗は、心地よさそうに目を細めて、勇斗の腕に体重を預けてきた。
「……勇ちゃん」
「なに」
「……あたたかくて、きもちいい……」
柔太朗がふにゃりと笑い、そのまま後ろにのけぞって勇斗の肩に頭を乗せた。鏡越しに視線が絡み合う。柔太朗の瞳は、熱に浮かされたようにとろんとしていて、少しだけ開いた唇が誘うように震えていた。
「……柔、お前……。……誘ってる?」
「……誘ってない。……でも、勇ちゃんが、じっと見てるから……」
柔太朗の手が、勇斗の腰回りに回された。バスローブの合わせ目が少しだけはだけて、柔太朗の綺麗な胸元が露わになる。勇斗の手からドライヤーが滑り落ちそうになった。
「……っ、柔。俺、これ以上は我慢できないよ? 明日、朝早いんだってば」
「……いいよ。……勇ちゃんなら、何されても……」
柔太朗が背伸びをして、勇斗の耳元で「……好きだよ、勇ちゃん」と、掠れた声で囁いた。 その瞬間、勇斗の中で何かが弾けた。
「……お前、……覚悟しろよ」
勇斗はドライヤーのスイッチを切り、柔太朗の体を強引に自分の方へ向けさせた。そのまま洗面台の縁に柔太朗の腰を押しつけ、逃げ道を完全に塞ぐ。
「……っ、勇ちゃん……顔、近い……」
「近いだけじゃ済ませない。……全部、俺のものにするから」
勇斗は柔太朗の潤んだ瞳をじっと見つめ、奪うような深いキスを落とした。 洗面所に残る湯気と、二人の混ざり合う熱い吐息。 外の世界では「完璧なアイドル」として振る舞う二人が、たった一つのドライヤーをきっかけに、互いへの執着心を剥き出しにする。
「……柔。……愛してる。……寝室まで、待てないかも」
勇斗の手が柔太朗のバスローブの帯を緩やかに解いていく。 鏡に映る二人の姿は、どこまでも危うくて、どこまでも美しい。
夜の静寂の中に、二人の荒い呼吸だけが重なって溶けていった。