第37話「裏切りの碧族」
🚀 シーン1:対峙する者たち
冷たい夜風が戦場を吹き抜ける。
ゼインは銃型フラクタルを構えたまま、目の前の男を睨みつけた。
黒いマントを纏い、鋭い眼光を放つ男——その瞳には確かに碧素の輝きが宿っていた。
「……お前、ヴェール・バインドに所属している碧族か?」
ゼインの問いに、男は微かに笑みを浮かべた。
「その通り。俺の名はカイゼル。ヴェール・バインドの特殊戦闘部隊“ナイトブレード”の一員だ」
ナヴィスが青い瞳を細めながら肩をすくめる。
「へぇ……“ナイトブレード”ねぇ。自分を人間側に売るとは、どんな気分だ?」
カイゼルは淡々と答える。
「俺は売ったわけじゃない。俺の信念に従っただけだ」
ゼインは静かに息を吐いた。
「……戦う理由は後で聞く。まずは、力を見せてもらおうか」
カイゼルはゆっくりと片手を上げると、漆黒のフラクタルエネルギーが彼の手元に収束した。
「面白い。お前がどれほどのものか、試させてもらうぞ」
🚀 シーン2:一瞬の激突
次の瞬間——
『EXECUTE (SHADOW_DASH)』
カイゼルの姿が消えた。
「速い!」
ゼインが反応するよりも早く、カイゼルはゼインの懐に潜り込み、鋭い蹴りを叩き込む!
ドガァッ!!
ゼインの体が吹き飛び、地面に激しく転がった。
「チッ……!」
ゼインはすぐに体勢を立て直す。
ナヴィスが前に出ようとしたが、カイゼルは鋭い視線を送る。
「お前らが二人がかりで来るなら、こっちも本気を出すぞ?」
ナヴィスは苦笑し、黒髪をかき上げた。
「へぇ、やる気じゃねぇか」
ゼインは拳を握ると、碧色のフラクタルが腕に収束した。
「ナヴィス、手を出すな。こいつは……俺がやる」
ナヴィスは驚いたように目を見開いたが、すぐに笑う。
「お前、戦いが楽しくなってきてるんじゃねぇの?」
ゼインは目を伏せ、ゆっくりと前に進む。
「……どうだろうな」
🚀 シーン3:碧族対碧族の戦闘
「来い、ゼイン」
カイゼルが手を構える。
ゼインは低く身を沈めると、瞬時にフラクタルを発動した。
『EXECUTE (IMPACT_STRIKE +75)』
碧色の閃光がゼインの拳から放たれ、カイゼルへと突き進む!
カイゼルも即座に反応する。
『EXECUTE (DARK_COUNTER)』
黒いエネルギーがカイゼルの腕を覆い、ゼインの拳と衝突した!
バァァンッ!!
激しい衝撃波が発生し、周囲の地面が砕け散る。
「やるな……」
カイゼルがわずかに驚いた表情を見せる。
ゼインは冷静に距離を取りながら、次の手を考える。
「こいつ……攻撃を相殺するフラクタルを使ってやがる」
カイゼルは微笑む。
「正解だ。そして、俺のフラクタルはそれだけじゃない」
『EXECUTE (SHADOW_BIND)』
次の瞬間、ゼインの足元から黒い影の鎖が伸び上がり、彼の動きを封じた!
「チッ……!」
ゼインがもがく間に、カイゼルが一気に間合いを詰める。
「終わりだ!」
カイゼルの拳がゼインの腹部へと突き刺さる——
その瞬間、ゼインの瞳が鋭く光った。
『EXECUTE (OVERRIDE)』
カイゼルのフラクタルコードが一瞬、強制的に書き換えられる。
「なっ……!」
影の鎖が一瞬だけ緩み、ゼインは即座に反撃に転じた。
「まだ終わらねぇよ!!」
ゼインの拳がカイゼルの頬を撃ち抜く。
ドゴォッ!!
カイゼルの体が宙を舞い、数メートル先へと吹き飛ばされた。
🚀 シーン4:戦いの行方
カイゼルは地面に転がりながら、ゆっくりと起き上がった。
口元の血を拭いながら、ゼインを見つめる。
「……なるほど、噂通りの力だな」
ゼインは荒い息をつきながら、カイゼルを睨みつける。
「お前の狙いはなんだ? なんでヴェール・バインドなんかに協力してる?」
カイゼルは静かに立ち上がり、ジャケットの裾を払った。
「……それを知る必要はない」
次の瞬間、彼の体が闇に溶けるように消え始めた。
「……!」
ナヴィスが反応するが、止める間もなくカイゼルは完全に姿を消した。
「クソッ……逃げられたか」
ゼインは拳を握り締めた。
「奴が何者なのか、必ず突き止める」
ナヴィスは微かに笑い、ゼインの肩を叩いた。
「ま、また会うだろうさ」
夜明けの光が、徐々に戦場を照らし始める。
ゼインは静かに、遠くの空を見上げた。
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