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「彼女は僕のいとこだよ。今年度から帝国のアカデミーに留学してきた聖国ハイネの王女さ。グウェンダルがパートナーがいないって言うから、僕の代わりにエスコートを頼んだんだ」
王女と聞いて父や母、マイルズが慌てて挨拶をすると、彼女はあわあわと狼狽える様子を見せた。
アカデミーに今年度から留学してきたということは、ユージーンよりも年下だろう。先ほどまで美しい女性だと思っていたのに、途端に彼女が子どもに感じられた。
グウェンダルと特別な関係ではないということについホッとしてしまう。
彼はそんなメリーティアの様子をずっと見ていたらしく、その視線に気づいて慌てて態度を取り繕った。
「あ、音楽がはじまったみたいだ」
オーケストラが音楽を奏ではじめ、パートナーたちが手を繋いでダンスホールに進み出る。
ふつうのパーティーならば身分の高いペア、もしくは主役が先に踊るはずだ。
しかしユージーンの背中越しに第一皇子を見やると、彼は皇后のうしろにじっと立ち、母親と貴族たちが挨拶を交わすのを眺めているだけのようだった。
その光景を傍から見ると、皇后のほうが今夜の主役だと勘違いしそうになる。
第一皇子は時折こちらへ視線を向け――なぜかユージーンをにらみつけていた。まるで妬むような目つきだ。
主役なのにダンスをする素振りすらない。そもそもパートナーもいないようだった。彼には婚約者がいたはずだが会場のどこにも姿が見えない。
第一皇子は高慢だと噂されているものの、ユージーンを妬ましそうに見たり唇を尖らせて足元に視線を落としている様子は、ひとりぼっちで寂しがりの子どものようだった。
「ねぇメリーティア嬢」
不意に話しかけてきたのはユージーンだ。
第一皇子を観察するのを一旦やめ、笑顔をつくる。
「なんでしょうか」
「いくらパートナーといえど、お兄さんと踊るのはつまらないよね。今夜グウェンダルには別のパートナーがいるし、せっかくだから帝国一の美女と踊る栄誉を僕にくれないかな?」
ユージーンから手を差し伸べられ、メリーティアはすっと目を細めて微笑んだ。
(これ以上ないチャンスだわ)
「大変申し訳ございませんが、謹んでお断り申し上げます」
「おや、どうしてだい?」
「今夜はほかに、どうしてもダンスを踊りたい方がいるのです」
メリーティアははっきりと告げると、ユージーンの横を通り過ぎて第一皇子に近づいた。
第一皇子ヨハンセン・ヘイスティン・ヴェドニア。
皇后そっくりの赤髪に、キツネを思わせる吊り気味のグレーの瞳。年齢はメリーティアと同じだ。
そこそこ高身長でほどよく鍛えられた身体つきをしている。八重歯が愛嬌たっぷりで、少々独特ながらこのような顔立ちを好む令嬢も多いだろう。気性が荒そうな外見に違わず苛烈な性格でなければ、もっと人気を博したに違いない。
女遊びが激しく、ゴシップ誌の常連。貴族たちにも横柄な態度で、平民のことは人間と思っているかどうかすら怪しい。品格もなければすべての部分でユージーンに劣る、皇后という強力な後ろ盾がいなければ到底皇帝になどなれない人物だ。
――そして皇后の言いなりのまま、グウェンダルを暗殺未遂事件の犯人に仕立て上げた男。
ヨハンセンはメリーティアを見下ろして胡乱なまなざしを向けてくる。
これまで彼とは言葉を交わしたことがない。だがこちらの存在は認識しているようだ。ハイゼンベルグ家はユージーンを支持しているため、メリーティアを警戒しているのだろう。
「第一皇子殿下、どうかわたしにあなたとダンスを踊る栄光をいただけませんか?」
ヨハンセンに向かって膝を折り頭を下げるメリーティアを、周囲が奇異の目で見ている。女性から男性をダンスに誘うことは稀だった。
両親がそれとなく止めようとしているのが視界の端に映ったが、あえて見ないようにする。
今日ここでどうしてもヨハンセンに近づかなければならないのだ。
グウェンダルもきっと、メリーティアの行動が理解できなくて顔を顰めていることだろう。
「なんで俺があんたと踊らないとならないんだよ。あんた今、ユージーンに誘われてたろ」
おそらくヨハンセンや皇后は、メリーティアがグウェンダルとの婚約を解消した理由をユージーンと結婚するためだと考えている。派閥の筆頭家門の娘と皇子が結婚するのはよくあることだ。
だからなおのことメリーティアの行動が釈然としないのだろう。
派閥の貴族たちとにこやかに話していた皇后も、ぞっとするような視線をメリーティアに向けていた。
だがここで退くわけにはいかない。
もあ
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鬼霧宗作
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#復讐
りう。
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さぶれ-SABURE-
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