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第五章 鬼ごっこ
「走れ!」
朧の声が響いた。
湊は女の子の手を握り、廊下を走った。
後ろから、
ドン!
ドン!
何かが壁にぶつかる音がする。
「朧、あれは何なんだ?」
「分からない。だが、ここにいるものは全部、俺たちを追ってくる」
「じゃあ、どこへ行けばいい?」
朧は周りを見た。
廊下の先には三つの道がある。
右。
左。
そして階段。
「階段だ!」
二人は階段を駆け上がった。
しかし――
「……あれ?」
二階に着いた瞬間、湊は足を止めた。
そこには、さっきまで一階にあったはずの赤い扉が並んでいた。
「この学校……おかしい」
「同じ場所を繰り返している」
朧が扉を調べる。
そのとき、
――カチッ。
一番右の扉が勝手に開いた。
中から小さな声が聞こえる。
「……こっち……」
女の子が震えた。
「また声だ……」
湊は首を振った。
「今度はだまされない」
その瞬間。
背後から、
「見つけた♪」
明るい声が聞こえた。
湊が振り返る。
廊下の向こうに、あの司会者が立っていた。
白い仮面。
不気味な笑顔。
そして手には、古い学校の名札を持っている。
「司会者……!」
『お久しぶりです、湊さん♪』
朧が前に出る。
「お前が全部仕組んだのか」
『ええ♪』
司会者は楽しそうに笑った。
『でも、まだゲームは始まったばかりですよ』
「何が目的なんだ!」
『目的?』
司会者は首をかしげる。
『もちろん、観察ですよ♪』
湊は眉をひそめる。
「何を観察している?」
司会者は答えなかった。
代わりに、持っていた名札を床へ落とした。
カラン。
そこには――
#連載小説
観察者
310
椿
27
『000 湊』
と書かれていた。
「……!」
湊の顔が青ざめる。
「俺は……最初から知っていたのか?」
『そういうことです♪』
朧が司会者へ近づく。
「湊に何をした」
『それは秘密です♪』
司会者が指を鳴らす。
すると学校中の電気が消えた。
真っ暗になる。
「湊!」
「朧!」
二人が声を掛け合う。
しかし――
女の子の手が、湊の手から離れた。
「え?」
「待って!」
湊が手を伸ばす。
でも、もう届かなかった。
暗闇の中から、女の子の声が聞こえる。
「湊……助けて……」
「今行く!」
湊が走ろうとした瞬間。
朧が腕をつかんだ。
「待て!」
「でも!」
「違う」
朧が暗闇を見つめる。
「声が二つある」
「……え?」
耳を澄ます。
確かに聞こえる。
「助けて……」
そしてもう一つ。
「……湊……」
まったく同じ声だった。
朧が言う。
「どちらかが偽物だ」
湊は息をのんだ。
そのとき――
学校中にサイレンが鳴り響いた。
『鬼ごっこ、開始でーす♪』
廊下の奥から、
ドン……。
何かが歩いてくる。
司会者の声が響く。
『逃げてください♪』
『捕まったら――ゲーム終了です♪』
湊は朧を見る。
朧は静かにうなずいた。
「湊」
「うん」
「今度は、絶対に離れない」
二人は手を取り合った。
そして、暗い廊下の奥へ走り出した。
その先に待っているものが――
湊の過去と、朧の秘密につながっているとも知らずに。
コメント
1件
第5話、めっちゃ好きな展開きたわ…!暗闇で女の子の声が二つに増える場面、ゾッとした。同じ声で「助けて」と「湊」って呼ぶのが逆に不気味でいいな。それに湊の名札が「000」ってのも気になる…最初から何か知ってたってこと?朧との信頼関係も強まってて、次で二人の秘密に迫るっぽいし、続きが待ち遠しい🔥