テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#連載小説
観察者
310
椿
27
## 第六章 消えた女の子
湊と朧は、暗い廊下を走っていた。
「こっちだ!」
朧が先頭を走る。
後ろからは、何かが追いかけてくる音。
タッ……。
タッ……。
少しずつ近づいている。
「朧、まだ追ってきてる!」
「分かっている!」
湊は女の子の手を強く握った。
「大丈夫。もうすぐ出口を――」
その瞬間。
女の子が突然立ち止まった。
「……どうした?」
湊が振り返る。
女の子は廊下の先を見つめていた。
「……あそこに、お母さんがいる」
「え?」
湊も見る。
しかし、誰もいない。
「いないよ」
「いる……」
女の子が一歩前へ進む。
「待って!」
湊が手を引く。
だが――
女の子の姿が、一瞬だけぼやけた。
「え?」
次の瞬間。
手の中から、すっと感触が消えた。
「……!」
女の子が消えていた。
「どこへ行った!?」
湊が周りを見る。
朧もすぐに立ち止まった。
「湊、落ち着け」
「でも、今まで手をつないでたのに!」
「何かに連れていかれた」
朧が床を見る。
そこには、女の子の靴が片方だけ落ちていた。
湊はそれを拾った。
「……絶対に助ける」
朧はうなずいた。
「当然だ」
そのとき――
校内放送が入った。
『残念でした♪』
司会者の声だった。
『大切な人を見失ってしまいましたね♪』
湊が叫ぶ。
「返せ!」
『返してほしければ――』
少しの沈黙。
『地下室へ来てください♪』
「地下室……?」
『そこに、次のヒントがあります♪』
放送が切れた。
湊は朧を見る。
「行こう」
「罠だ」
「分かってる」
湊は靴を握りしめた。
「でも、助けるためには行くしかない」
朧は少し黙っていた。
そして、
「……分かった」
二人は階段を探した。
やがて、校舎の端に古い階段を見つける。
地下へ続いている。
階段を下りるたびに、
ギィ……。
ギィ……。
古い音が響いた。
地下室の扉の前まで来る。
扉には赤い文字で、
**『被験者000』**
と書かれていた。
湊の顔がこわばる。
「また……俺の名前だ」
朧が扉を見つめる。
「この場所は、お前を知っている」
「どういうこと?」
「それを確かめる」
朧が扉を開けた。
中には古い机と、たくさんの写真が並んでいた。
湊は一枚を手に取る。
そこには――
幼い頃の自分が写っていた。
「……俺?」
さらに別の写真。
学校にいる湊。
そして――
知らない施設の中にいる湊。
「こんなの……知らない」
そのとき、机の上に一冊の古いファイルがあることに気づいた。
表紙には、
**『鬼の血を持つ者について』**
と書かれていた。
湊がページを開く。
そこには一行だけ、赤い文字があった。
**『被験者000は、鬼と人間をつなぐ鍵である』**
湊は息をのんだ。
「俺が……鍵?」
すると背後から、
パタン。
扉が閉まった。
二人が振り返る。
誰もいない。
でも、部屋の奥から小さな声が聞こえた。
「……湊」
女の子の声だった。
「助けて……」
湊は声のする方を見る。
そこには、一枚の赤い扉があった。
朧が低い声で言う。
「湊」
「うん」
「その扉の先にいる」
湊はゆっくり扉に手を伸ばした。
カチャ。
扉が開く。
その向こうには――
女の子ではなく、
一人の小さな男の子が立っていた。
男の子は湊を見ると、静かに言った。
「……やっと来たね」
湊は固まった。
「君は……誰?」
男の子は笑った。
「僕は――」
その瞬間、校内放送が鳴り響いた。
『最終試験、開始です♪』
そして男の子の後ろから、
無数の赤い目が現れた。
コメント
1件
うわ……引き込まれた……。 女の子が手のひらから消えた瞬間、すごく怖かった。ずっと握ってたのに、って湊くんの焦りが痛いほど伝わってきた。 地下室のあの赤い表紙のファイルも気になるし、“鍵”って何なんだろう。 最後に出てきた男の子、まさかあの女の子が変身したとかじゃないよね……? とにかく、今回もめっちゃ面白かったです。続き気になりすぎる🥀