テラーノベル
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夜の分の薬を貰い、ご飯の後それを飲む
葛葉さんはお父様に呼び出され、渋々出て行った
俺の心配をしていたみたいだけど、俺も小さな子供じゃない
それに寝ているだけなら誰でも出来る
着替えを済ませた葛葉さんはもう一度俺の所に顔を出すと家を出て行った
きっと社交の場に呼ばれたのだろう
キッチリと着込んだその姿はモデルと見間違うほどカッコよかった
俺は薬のせいかすぐに眠くなり、ベッドに戻った
何時間眠ったのだろう
目を覚ますと喉が渇いていた
きっと熱のせいだろう
部屋にある冷蔵庫を覗くが、水が入っていない
さっき飲んだものが最後だったのか‥‥
仕方なく部屋を出てキッチンへ向かう
冷蔵庫の中のペットボトルを見つけて喉を潤す
壁に掛けてある時計を見る
もう11時だ
3時間くらい寝たんだな
一気に飲み干したペットボトルの空を捨て、新しいペットボトルを手に取る
そして部屋に戻ろうと振り返った時、俺の耳に何か聞こえた
なんだ?
音楽か?
葛葉さんが出かけるときにでも聴いてたのかな
階段の辺りまでくると、小さいけれども確かに音楽は聴こえてくる
俺は階段に一歩脚を伸ばす
それと同時に叶さんの声も思い出した
3階には呼ばれた時以外は立ち入らない
踏み出した脚を元に戻す
けど、その音が気になって仕方ない
消した方が良いのかな?
でも行くなって言ってたしな
行くなと言われたのに葛葉さんの部屋の前まで来てしまう
「あれ?‥‥ここの部屋じゃない」
耳を澄ませてもこの部屋ではない
叶さんが帰って来て聴いてるのかも‥‥
だったら早く立ち去らないと!
でも‥‥向かいからでも無さそう
俺は奥の部屋を見る
ここは葛葉さんのパートナーの部屋?
ダメだと思いながら奥まで歩いて行く
部屋の方ではない
向かいの作業場の部屋のドアがほんの少し開いている
そこから聴こえてたんだ
俺は顔をそっと近づけた
「こや‥‥」
「‥‥!!」
その声に驚いて、手に持っていたペットボトルを床に落とした
そして恐る恐る叶さんの方へ顔を向ける
その音に気づいて作業場からも声がする
「叶さん?」
ドアが開き中から人が出てくる
でも俺は言いつけを守らなかった罪悪感から動けなかった
「こや?大丈夫?」
「叶さん‥‥ごめんなさい‥‥」
「なんでそんなに怯えてるの?怒ってないよ、僕」
「どうかしたの?」
「あ、丁度よかった。新しく来た子、紹介するね?」
叶さんが怒ってないようで少し安心した
落としたペットボトルを拾い、後ろを振り返った
そしてまたペットボトルを床に落としてしまう
「こや?大丈夫!‥‥熱下がってないのかもね」
「‥‥ごめん‥‥なさい」
熱のせいなんかじゃない
俺は憶えている
忘れる筈がない
俺を気にかけていてくれた人の事を‥‥
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コメント
2件
こ、こや~ かなかな 怒ってなくて良かった~ 師匠なんかどんどんレベル上がってません?凄すぎる✨