Kisaragi You side -
尾けられていることには、薄々気がついていた。
それが、こえくんであることにも。
正直、嬉しかった。
僕のこと、
こんなに愛してくれてるんだって。
それも、中途半端な想いなんかじゃなくて、
もっとちゃんとした、強い想いなんだって。
…でも、それは駄目だとわかっている。
ストーカーを愛と読んでしまうのが駄目なこともわかっている。
そしてなにより、好きな人がそんなことをしているのに、
嬉しいと感じてしまう自分が駄目駄目なことも。
だから、
ケリをつけようって、
正面から素直に伝えようって。
そう思ったんだ。
◇
放課後、帰りのチャイムが鳴る頃。
僕はさっさと帰り支度を済ませていた。
「よし。 じゃあ、またね、こえくん」
荷物を肩にかけ、
彼に向かって、そう控えめに手を振る。
「えっ、あっ…!」
すると、彼が慌てたように近づいてきた。
「…本当に一緒に帰れないの?」
「うん、ごめんね」
朝から言っておいたはずなんだけどなぁ、
と思いながらも、良心がちくりと痛んだ。
「そっかぁ…。 じゃあ、また明日…」
そんな寂しそうな顔をしないで…!
罪悪感に押し潰されそうになりながらも、
彼に手を振ったまま、靴箱まで向かった。
「はぁ…」
ひとつ、溜息を漏らす。
これは疲れたとかいう意味ではない。
これから繰り広げられるであろう物事への
緊張を解くためのものだ。
もし、彼が元に戻ったら。
もし、彼と付き合えたら。
もし、彼と上手くいけたら。
もし、彼と一線を越えられたら。
もし、彼と…
そこまで想像して、また溜息を吐いた。
今の溜息は、自分に対する呆れである。
「ゆうさんってば、何考えてるの…」
恥ずかしくなって、余計にむしゃくしゃした。
…でも、今からするのは、簡単に言えば告白。
脳が軽いショートやバグを起こしても、
それは仕様がないことで、不可抗力だろう。
「はぁー、もう〜っ…!」
よし、腹を括ろう。
僕は今から、こえくんに告白するんだ。
考えることはそれだけ。
必要なのは少しの勇気だけ。
神経を研ぎ澄まして、近くに彼がいるかを探ろう。
いつもなら、すごい視線と
小さなシャッター音が聞こえる。
…ぱしゃり。
そう、こんな音…
「!」
今、確かに聞こえた!
一度、パニクってから、
あらかじめ立てて来た作戦を実行するべく、
タイミングのいいところで、自分に合図をして、
(わざとらしくだが、)地面へとしゃがみこんだ。
そう、その名も仮病作戦!
根は優しい彼なら、きっと思わず飛び出してくれる筈だ。
「ゔ、ぅ…!」
それっぽい呻き声も追加してみる。
「! …ゆうくんっ!?」
すると、ようやく気がついたのか、彼が近づいてきた。
心配した彼の手が僕の背中に触れる。
僕は、その一瞬の隙をついて、
彼の手首をぐっと掴んで引き寄せた。
「えっ…?」
彼はバランスを崩し、
中腰の僕と、目線が同じ高さになる。
「へっ…、ゆ、ゆうく…」
驚いて目を見開いた彼に向かって、僕は
悪戯げに、小悪魔のように微笑んで見せた。
「因果応報だね。
…えへ、引っかかったでしょ。 こえちむ」
コメント
6件
めちゃくちゃ好きです!!!私もすたぽらではゆさん推しなのでぶっ刺さりました…🫶フォロー失礼します!!!
小悪魔組大好きです!!めっちゃ好き
とんでもなく好きです