テラーノベル
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――国王オルディス・ヴァルター・ヴァルドール、崩御。
原因は、表向きには〝体調の急変〟。
だが実際は――。
(暑さに耐えかねた、か)
年齢もある。
だが、それだけではない。
いくら権力を有した者とはいえ、あの王都の空気の中で、弱った身体が持つはずなかった。
「各領への通達は、すでに始まっているそうです」
背後から、セドリックの声。
――ではなく。
「城からの報告では、すでに各領への通達が始まっているとのことです」
ヴァン・エルダール城からの早馬が持ってきた報せを、城主であるランディリックのもとへ届けにきた従者が、簡潔に言い直した。
セドリックは、ランディリックが不在の間、ヴァン・エルダール城を守ってくれている。
ここに届くのは、彼によって選ばれた情報だけだ。
「分かった」
短く返す。
そうして心の中で一人思う。
(次が決まるまでの間が、一番荒れるな)
よもやアレクト殿下以外の者が玉座を狙うことはあり得ないだろうが、政局が大きく変わる局面では、その可能性はゼロとは言い切れない。
王の死は終わりではなく、むしろ――始まりだからだ。
誰が継ぐのか。
誰が支配するのか。
そして、誰が切り捨てられるのか。
(……アレクトは、オルディス王がこうなる前から動いているだろうがな)
あの男が、この機を逃すはずがない。
常に何手か先まで読んで行動に移す男だ。
だからこそ――先のデビュタントだ。
あの場にマーロケリー国の皇太子を引き入れたのも、すべては布石だろう。
(おそらくは我が国の娘をセレンに嫁がせ、かの国との間に強固な縁を結ぶため――)
その第一候補に、リリアンナが選ばれたことは火を見るよりも明らかだった。
静かに息を吐く。
乾いた風が、要塞の中を抜けていく。
軽く、冷たい風。
だがその外で、確実に大きな流れが動き始めている。
「……リリアンナは、城だな」
「はい。ヴァン・エルダール城にてお過ごしです」
一拍の間。
視線を、わずかに伏せる。
(あの子は知らないままでいい)
そう思うが、知らないままでいられるほど、甘くはない気もした。
「……伝令を出せ。城へ戻る」
「は」
従者が一礼し、足早に去っていく。
その背を見送りながら、ランディリックは再び書簡へと目を落とした。
王の死。
それは、盤上の駒が一つ消えたということに過ぎない。
だが――。
(次に動くのは、誰だ)
ランディリックの脳内で、抜け目のないアレクトが盤上へ手を伸ばしている幻影が見えた――。
#独占欲
#ワンナイトラブ
コメント
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国王崩御!!