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第8話 死亡遊戯
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(通信開始)
[sideA]
実記: 皇紀2781年(西暦2120年)6月14日
晴天
「両名!リング上へ!」
ジャッジ(判定員)が叫ぶ。
格闘場の対角線上にサナダと吾郎が姿を見せた。
唸る兵士たち。
「きたー!ザ・レジェンド!!」
「ハーフ・キラー復活!」
「くー!オレの青春ー!!」
「サナダー!サナダー!…」
(ジャッジ)「クッソ共ー!静粛にー!!
…よろしい。これより、訓令兵第3721番サナダ・カイシュウと第3746番マエダ・ゴロウの、 …決闘を始める!!。」
(唸る兵士たち)
(ジャッジ)「戦闘ルールはたった一つ!
貴様等である!
1:軍規では立ち合う兵士達が認めればリング上では何をしても構わない!
2:勝敗はどちらかが戦闘不能になる事。それはジャッジが判断する。
3:決着後の取り決めに関しては全員協力をし速やかに行う事。
最後に!決闘は新日本軍の決闘実記にも記録される。即ちここに居る全員が決闘の結果に責任を負っている事を肝に銘じる様に!尚、故意に神聖なる決闘を汚す者は除隊又は殺処分の対象となり…。」
〜3分スキップ〜
(ジャッジ)「では、健闘を!両者リング中央へ!!」
(兵士たちの唸り・叫び)
サナダと吾郎はリング中心で向かい合った。
(ジャッジ)「拳を見せろ。…よし、各サイドに戻って3カウントしたら決闘開始だ。わかったな? …よし!行け。」
各自コーナーポストへ。
3…2…1
(ジャッジ)「では始めよ!」
兵士達「ウオー!!」
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実 記: 同日12時25分 決闘 開始
サナダ) 勢い良くリング中央に飛び出す。
マエダ) 両手を平行に、右腕をやや高く上げながら膝を使い下半身のみで上下に揺れ始める。
サナダ) マエダの動きに反応、突進を止める。
(兵士)「ギャハハハ!なんでェあのタコ!あれ何?祭り!? 超ダセー!サナダさん早く殺って下せぇ!!」
マエダ) 上下運動を繰り返しながらサナダとの間合いを徐々に詰めて行く。
(サナダ) 「(…?なんだこの奇妙な動きは。これでは隙が無いのか隙だらけなのかが…。)」
サナダ)様子見の為、一発右のミドルキックを放つ。
マエダ) 膝を曲げた低い姿勢から左肘をミドルキックに上手く合わせる。肘がカウンターとなりサナダの右足を強打。
(サナダ)「ウッ!!」
(佐藤)「上手い!吾郎ちゃん!!、木戸ちゃんの作戦大当たりだね!奴さん凄い集中力だよ。」
(木戸) 「…まだまだ始まったばかりじゃきぃなんとものぉ。(汗)」
サナダ) 被弾した右足を2-3回軽く空で伸ばしながら仕切り直す。
マエダ) 再びジリジリと間合いを詰める。
(サナダ) 「(…不気味な奴だ。しかし今の肘は危なかったですね。ほんの数ミリズレていたら骨折していた…。いやまったく出来過ぎだ。ではこれで…。)」
サナダ)思い切ってマエダの間合いに飛び込み、彼の下半身の動きが止まる様な顔面パンチの連打。
(兵士達) 「オオー!!」
(佐藤) 「ヒエーッ!!」
マエダ) サナダのパンチに合わせて交互に両腕をパッと花を咲かせるように上げ下げを繰り返し、しっかりと顔面ガード。
次に両腕を同時に上げサナダの首にモンゴリアン・チョップを見舞う。(敵の首の付け根に両手刀を振り下ろす打撃。蒙古の怪人/キラー・カーン〔1947ー2023〕が得意とした。)
(サナダ) 「がはぁ!」
(兵士) 「おいおい…なんかおかしくないか? タコの攻撃…効いてるのか!?」
(サナダ)「 (ッつ。なるほど。…やっぱりガチの隠密戦闘術でしたか。ならこうしましょうか…。)」
サナダ)動きをマエダに合わせ、モハメド・アリ・スタイルばりのボクシング・ステップを踏み始めた。
(マエダ) 「(ありゃあ一体…?いやいや、集中集中…。)」
そのさまはリング上でなければ西洋と東洋のダンスバトルにも見えた事だろう。小気味良くステップを取るサナダ、膝を曲げ伸ばし摺り足のマエダ、異質ともいえる決闘だった。しかし2人の間には何者も入り込む隙はないように思えた。
サナダが恫喝で獣の様な『動』の攻撃を出せば、マエダが絢爛でしなやかな『静』の守備で捌く。こんな攻防が長い時間続いた。
これを観たものは皆、これが真の “武 芸”(Martial Arts)だと言うだろう。
ただ、当の本人達にとっては恐ろしいほどの集中力という一筋の糸の上での武芸という舞踏。これは先に 糸が切れた方が地獄に堕ちる死の舞踏会なのだ。
(サナダ) 「あぁ鬱陶しいですねェ!!アナタ。本当に鬱陶しい!!」
サナダ)腕と脚による攻撃が全て遮られ、剛を煮やして右肩からのラグビースタイルのタックルを見舞った。
(佐藤) 「うひゃあ!」
マエダ) 飛んで来たサナダの全身を、両腕を花びらで優しく包み込むような形で抱きかかえ、そのまま半身を捻りながらサナダを倒した。
(兵士達) 「ウオー!!」
柔道なら完全に『一本!』であったが、これは決闘なのだ。 マエダは反撃を警戒しすぐに跳び下がった。
(兵士)「アイツ…あのタコやばくね!?」
(兵士)「凄ェ…あんなに強かったんだ。弄って危なかったんだな俺ら…。」
(兵士)「でも、なんか…実はサナダが弱いのかもな。」
(兵士)「いっこも攻撃当たらないし。」
(兵士)「ウソッ…!サナダさんの戦闘力…低すぎ!?」
(兵士)「お前それ昔の広告じゃんw」
(兵士)「wwwww」
(サナダ)「 (クソッ…、言いたい放題…ゴミ共はこれだから信用ならないんです…じゃぁもう終わらせてやりますよ!)」
サナダ)ポケットから山切り型のチタン製ナックルを取り出し、両手にはめた。
(兵士) 「ここで来たー!!伝説の鉄拳!!」
(兵士)「よく動画で使ってたヤツな。」
(兵士)「…不利だから今使うって?神聖な決闘で!?」
(兵士)「でも懐かしいなぁ!まさか本物観る日が来るとは!ハーフ・キラー!!」
(兵士)「強いけどマエダはただのサラリーマンだぞ?鉄拳は酷いわー。」
兵士を二分する賛否両論に耳を貸さず、サナダは前田の顔面目掛けて重い右フックを放ち、
マエダは今まで通り左前腕でフックをいなした。
…が、今回の結果は違った。山切りのチタン・ナックルがマエダの前腕に喰い込んだのだ。
(マエダ)「ああ!!あいたぁぁ!!!」
(通信終了まであと1分)
[sideB]
前田は東京中の若者を助け、信者を増やしていった。
ーそれもそのはず、老人に牙をむく老人など当時は居なかったのだ。
若者達にとっては初めて尊敬に値する年配者なのだ。
『日本国の世直りはええじゃないか、豊年踊はお目出たい』
このよくわからない言葉が彼のスローガンらしかった。はるか昔、前田が父親から武術と一緒に教わった言葉らしい。
彼は若者と老人を区別してはいけない、
国王サナダに謁見して国を変えたい、が口癖だった。
ーある日遂にその機会が訪れた。
前田吾郎の名を聞いた国王が会いに来るようにと言っているらしい。
来る時は1人で、が条件だったので信者達はしつこく引き留めたが、
『まぁええじゃないか、アヤットサー!』
と、あまりにも軽く言うので、最後には誰も何も言わなくなってしまった。
しかし…念の為上着の第二ボタンにカメラを仕込んで状況をモニタリング出来るようにしておいた。
何かあれば私達も…すぐに行動を起こせるように。
(通信遮断)
シルバニア王国東京都青梅市新日本軍化学工場より