@家
松前が突然、こんな話を持ってきた。
「朋菜様。安政の大獄はご存知ですか?」
「知ってる。井伊直弼が将軍後継ぎに対する反対派を処罰した事件でしょ?」
「そうです。では、その井伊直弼がその後どうなったかはご存知ですか」
「それは…知らない」
すると松前は、少し間を置いてから話し始めた。
「桜田門外の変で、水戸脱藩の志士らに暗殺されたそうです」
「暗殺されたそうですって…松前も知らなかったの?」
「僕もタイムスリップしてきた身ですから」
「あ、そっか」
他にも、松前は公武合体派の幕府と尊王攘夷派の朝廷や薩長などの動きについても詳しく教えてくれた。中でも、朋菜の印象に残ったのは1862年7月からの文久の改革についてだ。文久の改革は、三代将軍であった徳川家光が始めた参勤交代の制度が緩和されたことでも有名だった。
朋菜は色々と、文久の改革について調べてみることにする。当然、この時代には辞書などはないので大変だったが、数日後には大体調べ終えることができた。
「朋菜様、お疲れ様です」
「松前。私、あれから文久の改革について調べてみたの」
「おお、それは。朋菜様が自らお勉強をなされるとは…」
「勉強は前からしてるっての」
「どのようなことをお調べに?」
興味津々な様子の松前に、朋菜は文久の改革について調べた事を話した。
「それで島津久光が江戸から帰ってくるときに、生麦事件が起こったの」
「すごいですね、朋菜様」
松前に褒められ、機嫌上々な朋菜なのであった。







