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ゆうき あきや
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#心理描写重視
第128話:ベルサイユ宮殿爆誕。神獣のオーラに当てられたSP軍団の狂乱
ドバイの石油王とスイスの銀行家という、世界を裏から牛耳るVIPたちからの「お見舞い」。
限界集落の我が家に派遣されてきたのは、黒スーツに身を包んだ屈強な男たち――『王室専属造園部隊(完全武装のSP軍団)』だった。
彼らは純金製のクワとスコップを手に、台風で荒れた古民家の庭の復興作業(オペレーション・クリーンアップ)に当たっていた。
元・需品科である俺の完璧なロジスティクス計画の下、作業は淡々と、かつ極めて効率的に進むはずだった。
だが、この「聖域」において、俺の計画通りに物事が進むことなど稀である。
「……なぁ、お兄さん。なんか、外の様子がおかしくないですか?」
ジンバルにセットされたiPhone miniを抱えた小春ちゃんが、縁側のガラス戸に張り付きながら震える声で言った。
俺は作業日報の作成(という名目のタイピング)の手を止め、視線を庭へと向けた。
「異常事態か? SPたちが熱中症で倒れでもしたか?」
「いえ、倒れてはないんですけど……その、全員『泣きながら』庭を掘ってるんです」
「……は?」
俺が縁側に出ると、そこには異様な光景が広がっていた。
黒スーツの上に純白のフリフリエプロンを装着した筋骨隆々のSPたちが、大粒の涙をボロボロと流しながら、一心不乱に純金のクワを振るっているのだ。
「OH……! ビューティフル……! モア・ビューティフル!!」
「我々ハ、コノ気高キ白キ神ノタメニ、史上最高ノ楽園ヲ創リ上ゲネバナラナイ……ッ!」
「イエッサー! 全テハ、絶対的支配者(シロサマ)ノ御心ノママニ!!」
屈強な男たちが、嗚咽を漏らしながら、しかし寸分の狂いもない精密な動きで庭の土を造形していく。
彼らの視線の先、縁側の特等席には、真夏の太陽の光を浴びて神々しいまでのオーラを放つ純白の神獣――シロの姿があった。
『ミャウ(精が出るわね。私の昼寝にふさわしい美しい庭にしなさいな)』
シロが神秘的な『オッドアイ』の瞳――左目のサファイアブルーと右目の琥珀色――を細め、優雅に毛繕いをしながら一鳴きすると、SPたちの狂乱はさらに加速した。
「ヒィィィィッ!! シロ様ガ我々ニ言葉ヲカケテ下サッタ!!」
「急ゲ! 左右対称ノ幾何学模様ヲ完璧ニ再現スルンダ!!」
本来であれば感情を押し殺し、冷徹に任務を遂行するはずのプロフェッショナルたちが、シロの放つ『圧倒的なマイナスイオン』と『絶対的階級のオーラ』に完全に脳を焼かれてしまったのだ。
さらに、それに感化されたのか、一緒に作業をしていた体長3メートルの巨大ヒグマまでもが「グルルォォ……(芸術が爆発するぜ……)」とばかりに、器用な前足で庭石をミリ単位で配置し始めた。
コン吉とコン次郎も、SPたちが用意した花の苗をくわえて、トコトコと定位置に植えていく。
一千万人が見守る配信のチャット欄は、すでに理解不能の事態に大爆発を起こしていた。
『SP軍団が泣きながら庭仕事してるwwww』
『シロ様のオーラで屈強な男たちが洗脳されてて草』
『ヒグマの石積みが職人レベルでヤバい』
『この限界集落、ついにマインドコントロールの領域に突入したぞww』
そして、数時間の狂乱の作業の末。
「マスター・アキヤ! 完了致シマシタ!!」
リーダー格のSPが、涙と泥にまみれた顔で誇らしげに敬礼した。
俺と小春ちゃんが庭を見渡した瞬間、完全に言葉を失った。
そこにあったのは、北海道の限界集落によくある「家庭菜園向けの素朴な庭」ではなかった。
左右対称に美しく刈り込まれた幾何学模様の植え込み。
計算し尽くされた配置で咲き誇る、色鮮やかな季節の花々。
さらには、台風で折れた大木の幹を巨大ヒグマが彫刻して作り上げた、謎の『三段式噴水(裏山の湧き水を引いている)』までが中央に鎮座している。
それはまさに、フランス絶対王政の象徴たる『ベルサイユ宮殿の庭園(フレンチ・フォーマル・ガーデン)』そのものだった。
「お兄さん……。うちの庭、ベルサイユ宮殿になっちゃいましたよ……」
小春ちゃんが、現実を直視できずに遠い目をしている。
『限界集落ベルサイユ宮殿爆誕wwww』
『ボロい古民家と西洋風庭園のミスマッチ感がエグいww』
『SPとヒグマの底力、バグりすぎだろ!!』
『シロ様、完全にマリー・アントワネットのポジション』
世界中のVIPたちも、この圧倒的な芸術作品の完成に財布の紐を木っ端微塵に吹き飛ばした。
『(ドバイの石油王からの¥50,000MeTubeギフト)=”Hahaha! Excellent! My unit has created a true paradise for Shiro-sama!“(ハハハ! 素晴らしい! 私の部隊がシロ様のための真の楽園を創り上げたぞ!)』
『(スイスの銀行家からの¥50,000MeTubeギフト)=”Akiya! This is art! The ultimate fusion of nature and royalty!“(アキヤ! これは芸術だ! 自然と王室の究極の融合だ!)』
『(ハリウッド女優シャーロットからの$5,000MeTubeギフト)=”Oh my God! I want to film my next movie in that garden!“(なんてこと! 私の次の映画はその庭で撮影したいわ!)』
極彩色のスーパーチャットが飛び交い、SP軍団は達成感に包まれて男泣きをしている。
だが、俺は元・社畜としての『どんな環境変化にも動じない鋼のポーカーフェイス』を維持したまま、ローデスクの前に座った。
「……よし。庭園の復旧(魔改造)を確認。これより、指揮官のエネルギー補給を開始する」
俺がいつものタッパーを開けると、そこには完璧な水加減で炊き上げられた『玄米』と、自家製の『大豆ミートのデミグラスハンバーグ風』が鎮座していた。
ベルサイユ宮殿の庭園を借景にしながら、俺は一切の表情を崩すことなく、ストイックに玄米を咀嚼し始めた。
大豆の植物性タンパク質が、俺の細胞にガソリンのように染み渡っていく。
「お兄さん……! 目の前にベルサイユ宮殿の庭ができあがって、SPさんたちが号泣して抱き合ってるカオスな状況で、なんでそんな貴族みたいな優雅な顔して大豆ミートかじれるんですか!?」
小春ちゃんがジト目でツッコミを入れるが、俺は咀嚼を止めない。
「当然だ。外部の環境がどれほど変化しようとも、己のロジスティクスとルーティンを維持することこそが、サバイバルの鉄則だ。ベルサイユの風に吹かれようとも、玄米の栄養価は変わらない」
俺は熱いほうじ茶で喉を潤すと、カメラの前に向き直り、キリッとした真顔でいつもの『限界言い訳タイム』を発動した。
「世界中の皆さま。我が家の庭がベルサイユ宮殿のように改修され、SPたちが神獣のオーラに洗脳されていると思われているかもしれませんが、冷静になってください」
『出たァァァァァ!!!』
『この状況でまだ言い訳するのかこの男は!!!』
『主の限界言い訳タイム・ベルサイユ宮殿編ww』
『さあ、この圧倒的な造形美をどう論破するww』
俺は淀みない口調で、極めてフラットに言い放った。
「これはベルサイユ宮殿の真似事ではありません。十勝の厳しい冬と台風に備えるため、地元の農家の間で昔から伝わる『効率的排水システムを兼ねた幾何学模様の畝(うね)作り』を実践しただけです。そしてSPたちが泣いているのは、土を掘り返した際に発生した『タマネギに似た催涙成分を持つ野草』のガスを吸い込んでしまったため。ええ、ただの『伝統的な農業技術の再現』と『アレルギー反応』が重なっただけですね」
「んなわけあるかあああ!!!」
小春ちゃんが、庭の装飾用に余っていた『造花の赤いバラ(トゲなし)』で、俺の後頭部にベルサイユ風の華麗なスナイプを見舞った。
「幾何学模様の畝作りってなんですか!! どこの農家が庭のど真ん中に三段式の噴水作るんですか!! 催涙成分で泣いてる人が『オーマイゴッド! ビューティフル!』って叫びながら土掘るわけないでしょうが!! どう見たってシロちゃんのオーラにあてられた男たちの愛と狂気の結晶でしょうが!! 素直に『うちの猫のカリスマ性がヤバい』って認めなさいよ!!」
『小春ちゃんのベルサイユ・ローズ・スナイプ炸裂ww』
『幾何学模様の畝作り(完全なフランス庭園)』
『タマネギの催涙成分(ただの感動の涙)』
『適応力バグおじさん、ついにベルサイユ宮殿まで地元農家の知恵だと言い張るww』
『言い訳のスケールがバグりすぎてて腹痛いww』
俺の理不尽極まりない農業的な限界言い訳と、小春ちゃんのキレキレのバラ・ツッコミに、一千万人の視聴者たちは腹がよじれるほどの大爆笑の渦へと叩き落とされた。
『ミャウ(悪くない庭ね。ご苦労様)』
シロが縁側から満足げに鳴くと、SPたちとヒグマは「おおお……!」と再び感動の涙を流し、純金のスコップを高く掲げて歓喜の声を上げた。
「……まぁ、理由はどうあれ。庭が綺麗になったなら、兵站としては合格だ」
俺は苦笑いしながら、ベルサイユ宮殿風の庭園に降り注ぐ十勝の青空を見上げた。
VIPたちの資本の暴力と、神獣の圧倒的なカリスマ性。
そして規格外のもふもふたちが織りなす限界集落の古民家は、世界一バグっていて、世界一優雅な『聖域』へと、さらなる進化を遂げていくのだった。
コメント
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ベルサイユ宮殿爆誕、めっちゃカオスで面白かったです…笑 SP軍団がシロ様のオーラに完全にやられて泣きながら庭造ってるの、尊すぎます✨ でもアキヤさんの「幾何学模様の畝作り」って冷静な言い訳に小春ちゃんのバラスナイプがキレキレで最高でした。限界集落ついにベルサイユ化…世界一バグった聖域、これからどうなるんだろう🤍