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初投稿です!
プリ小説で書いているヤツをこっちでも載っけることにしました!
本編2,800字程度
※注意※
・木兎×赤葦のお話です
・赤葦の片思いのまま終わります
・口調迷子の可能性有り
・一話完結です
それでも良ければどうぞ!
赤葦→「」
木兎→『』
その他→[]
兎赤 / 生きるのが下手みたいです
__________
赤葦side.
はぁ…今日もだ。
「木兎さん!!」
バシッ ドンッッ
『あかーしナイストス!」
「いえ、今のは木兎さんの打点より 少し下でした」
「すいません、改善します」
『え…そうなの?』
[まぁ、言われてみれば少しだけ…?]
『え〜、そう?!ってことはそれでも打てる俺、さいきょー!!』
また、トスの位置をミスってしまった。
何度も何度も練習して来たのに、最近になってからずっとこうだ。
木兎さんだってそれに気付いているはずなのに、敢えて触れてこないのは、彼なりの優しさなのだろうか。
まぁ、でも今はそんなことは関係ない。
「練習に集中しないと…」
__________
アレはいつだっただろうか。
そう、俺が木兎さんのことを”好きになった日”は。
「木兎さッ…!?」
ズルッ
『お”わっ!?』
あぁ、そうだ。
俺が木兎さんを好きになったのは…
いや、木兎さんが”好きだと自覚した”のは、
少し前の部活での出来事だった。
あの日は雨が降っていて、体育館の床はいつもよりとても滑りやすくなっていた。
『うおっ…』
ツルッ
『あっぶね〜!』
[木兎〜、気をつけろよ〜]
『大丈夫 だいじょーぶ!』
『あかーし、トス上げて!』
「はい!」
いつも通りの練習、いつも通りの環境、そして
《 いつも通りのトス 》
…になるはずだった。
「ナイスレシーブです!」
「木兎さんッ!」
シュッ バシッ
「ナイスキーです木兎さん」
『あかーしもナイストス!」
1回目は完璧。
そして、木兎さんの調子も確実に上がってきている。
そのまま2回、3回と普段通りのトスを何度も上げた。
もう何度上げたかも分からなくなってきた頃。
俺も段々と調子が上がって来ていて、それにノリすぎてしまったのかもしれない。
「木兎さッ…!?」
ズルッ
『お”わっ!?』
俺はトスを上げると同時に木兎さんの方へと足を滑らせ、木兎さんを巻き込んで転んでしまった。
気付いた時には俺は木兎さんの下にいて、前を向けば木兎さんの顔がすぐ近くにあった。
いわゆる、床ドンのような体勢だ。
自分で言うのも何だけど、上げた感覚としては完璧なトスだったと思う。
でも、体育館が滑りやすいというとても肝心なことを忘れていた。
『あかーし大丈夫!?』
「はい、大丈夫です…」
「すいませんッ…」
『あかーしが大丈夫なら良かった!』
あぁ、この人は優し過ぎる。
もしかしたら、俺の不注意のせいで取り返しの付かない怪我を負っていたかもしれないのに。
でも、罪悪感に包まれそうになった俺の心には、
また別の感情が入り乱れていた。
『あかーし顔赤くない?』
『熱でもある!?』
「いッ、いえ…」
[おーい、お前ら!イチャついてねーで練習戻れー]
「イッ、イチャついてなんかないです!」
『うおっ、あかーしが元気だ』
「俺を何だと思ってるんですか…」
「…俺、顔赤くなってたのか」
きっと、ずっと好きだったんだと思う。
でも、どこかでこの気持ちを受け入れたくなくて、ずっと蓋をして…
気付かないフリをしてた。
この、叶うわけもない独り善がりの恋に。
でも、もう自覚してしまった。
自覚してしまったら最期、俺はもうこの気持ちを忘れることはできないだろう。
だからと言って、俺がこの気持ちを木兎さんに伝えることは多分、一生ない。
だって、木兎さんはきっと俺のことを恋愛対象として見ていないから。
俺が女性だったら、まだ可能性があったかも知れない。
いくら同性愛への関心が高まったとしても、差別は免れないし、受け入れられる可能性も低い。
それに、もし伝えたことでこの関係が変わってしまったら、バレーにも影響が出てしまう。
それだけはどうしても避けたかった。
あの人はエースだから、バレーが大好きだから、俺の一方的な感情で困らせてはいけない。
だから木兎さんに悟られないように、俺は今日もまた
いつも通りの俺を演じる。
何が正解かなんて分からない。
まぁでも、これはきっと不正解だったんだと思う。
現に今、俺はプレーに支障をきたしている。
『あかーしもう一本!』
「はい!」
落ち着け、落ち着け落ち着け。
今までしっかり出来てたじゃないか。
それに、好きな人が頼ってくれているんだぞ。
…でも最近になって、時々思うことがある。
“なんで木兎さんを好きになってしまったんだろう。”
初めてそう思ってしまった時、俺は酷く絶望したのを覚えている。
そんなことを考えてしまった、自分自身に。
そんなことを思ったところで、木兎さんを好きな気持ちはなくならない。
寧ろ、日に日に大きくなっている気がする。
もう授業を受けていても、ご飯を食べていても何をしていても、ずっと木兎さんのことばかり考えてしまう。
いつか読んだ恋愛小説には、片思いがこんなに苦しいものだとは書かれていなかった。
恋愛とは、もっと明るくて暖かくてとにかく眩しい。
そんな印象を持っていたのに。
どうやら俺の初恋は、普通の恋とは違うみたいだ。
この恋に耐えられなくなった俺は、いつかこの思いを貴方にぶつけてしまうのだろうか。
それだったら、伝える前に…伝えてしまう前に、
俺は、貴方の前から消えてしまう方がいい。
「…バレー、辞めようかな」
そう呟いた時、俺の目から大粒の涙が溢れた。
それから2週間程経った日、
俺はこの恋を強制終了させるべく、一度バレー部の方々に辞めようと思っている旨を伝えてみた。
勿論、木兎さんが好きだと言うことは伏せて。
無言で辞めても、後悔なんてしないと思った。
でも、俺は心のどこかで木兎さんに引き止めて欲しいと思っていたのかもしれない。
『やだっ!!』
『あかーしのトスじゃないと打たない!』
[おい木兎、こんなこと言うってことは赤葦にも事情ってもんがあんだよ]
[それくらい分かってやれ…]
『でも、あかーしバレー好きじゃん!』
「……ッッ!」
『じゃあ、あかーしはバレー嫌いになったの?』
「…好きですよ」
『なら辞めないでよ!!あかーし!!』
誰かに相談もせず、一人でずっと抱え込んでいた。
貴方にこの気持ちを伝えることもなく、勝手な判断で退部しようとして、貴方を泣かせてしまった。
強制終了させるはずの初恋は、どうやらこのまま継続してしまうようだ。
俺はその日、部活を続ける決断をしてしまった。
そして今、俺の初恋の花は咲き乱れることもなく、枯れることもなく、ずっと蕾のままでいる。
もうすぐ貴方は卒業して、俺には会うことは出来たとしても、到底届くはずのない遠い存在になっていってしまうのだろう。
ここまで片思いを拗らせてしまった俺は、貴方の卒業を心から祝うことが出来るのだろうか?
今更になって俺は後悔している。
俺はずっと、貴方にこの思いを伝えたかった。
こんなことになるのならいっそのこと、貴方が好きだと伝えてしまえばよかった。
でも、もう伝えることはできなくなってしまった。
俺はこれからずっと、この後悔を胸に生きていくしかないのだろう。
ねぇ、木兎さん。
こんな結末にしか辿り着けなかった俺は、
「生きるのが下手みたいです」