翌朝起きてからは署員達のお見舞いに大した事ないと笑って、無理やりご飯をガツガツ食べて、院内をグルグル歩き回ったりして過ごした。ぺいんが言っていた通り、青井が目を覚ました時に隣にベッドで寝てる自分がいるのを見られてはいけない。早く回復して退院しなければ。
「アオセーン暇じゃねぇ?しりとりしようぜ。」
身体を青井のほうに向けて1人でしりとりを始めようとするとドアがノックされ、神崎が入って来た。
「失礼するぜ、調子どうだつぼ浦?」
「ああこの通り、全然元気だぜ。もう退院して良いよな?」
「いやいや気が早すぎるだろ、とりあえずかげまるに診てもらってからだ。」
こう言っているが救急隊員達の会議では、身体面より精神面が心配だと暫く入院させる事が決まっていた。
昼間は早く元気になるぞ!と張り切っていたのに夜になると突然負の感情が渦巻き、つぼ浦の心を蝕んでいく。いてもたっても居られなくなり、街が静かになり始めた頃病院を抜け出した。行くあてもなくフラフラと彷徨いながら、人の気配がしたら隠れながら気付いたら海まで歩いて来ていた。
「…アオセンが告白してくれた場所だ…」
力無くストンと座り込みボーッと海を眺める。自分は何をしてるのだろう、アオセンは辛い中頑張ってるのに、どうして何もできない、どうしてこんなに弱いんだと自身を責め立てた。
「…こんな自分勝手で弱くて頼りねーヤツ…アオセンも嫌いだよな。」
目の前の海に沈めば…どす黒い感情が湧いてくる。あの世に行けばアオセンに会えるかも、なんて淡い期待は一切無く。こんな自分を好いてくれる人なんて誰もいない、アオセンにすら嫌われるなら嫌われる前にいなくなりたい。しかしそんな事をする勇気さえ持っていないとまた責め続ける。身体が小刻みに震えている理由は分からなかった。
「いたっ!つぼ浦!!」
「つぼ浦ー!!」
声のするほうを振り返る気力も近付いてくる足音から逃げる気力も無い。両サイドに座ってきたのはぺいんとまるんだった。
「…なんで…」
「『つぼ浦見つかりました、西海岸です!』無事で良かったー!」
「警察も救急隊も総出で探したんだからな!」
「………また迷惑かけて…やっぱり俺は…」
やっとの思いで絞り出した声が2人の耳に微かに届く。どうした、何があったと話しかけるが返事は無くつぼ浦は一点を見つめて動かない。と思ったら急に立ち上がり、おぼつかない足取りで海に向かって歩き始めた。只ならぬ雰囲気を漂わせながらどんどん海の中へと進もうとするのを2人で慌てて止めた。
「ちょっつぼ浦!…えっとー、海はまだちょっと早いんじゃない?夜だし寒いよ。」
「そ、そうだよ!また夏になったら来よ、らだおも一緒にさ!」
「嫌だっ離せっ!」
力いっぱい抵抗するが今の弱っているつぼ浦はいとも簡単に組み敷かれてしまう。肩を担がれ砂浜まで戻された。
「ちょっと1回落ち着こ、あっちにベンチあるから座ってさ。」
「つぼつぼー!」「つぼ浦さーん!」「つぼ浦ー!」
「おっ皆来た、おーい!」
「ほら皆で話そ!」
座らせたつぼ浦の周りに署員達が集まり心配だった、良かったと口々に声をかけるがその言葉のひとつひとつが重くのしかかる。顔色が悪くなっていく様子に気付きすぐにその場は解散となり、ぺいんのパトカーの助手席に乗せられたつぼ浦は緊張が切れたのか走り出すとすぐに寝てしまった。
「…大丈夫だよね、絶対らだお起きるよな。そうだよな、つぼ浦。つぼ浦も元気になるもんな…2人の仲良いとこも痴話喧嘩も早くまた見たいよ…」
黄色い仮面を外して大粒の涙を拭いながら寝ているつぼ浦に問いかけた。
コメント
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めっちゃ感動します... 最高です。もう天才(?!) 続き待ってます!
感動過ぎて続き待ってます、!!!