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春の陽気が続く中、学校の空気は少しずつ変わり始めていた。みなみの心には希望の光が差し込んでいたが、その影で暗い風が忍び寄っていた。
ある日、クラスのいじめっ子の一人、川村がみなみへの嫌がらせをやめきれず、策略を練っていた。彼女はボイスレコーダーを使って、みなみが自分をいじめていると捏造した音声を録音し、密かにクラスメイトたちに流布したのだ。
「ほら、みんな聞いて。みなみが私をいじめてたんだよ」
川村の声は冷たく、嘲笑を含んでいた。その録音された声は、巧妙に編集されており、みなみがまるで加害者であるかのように見せかけられていた。
クラスメイトたちは困惑し、徐々にみなみから距離を置き始めた。
「みなみ、あれ本当なの?」
「どうしてそんなことを……」
信じていた友人たちの疑いの視線に、みなみの心は張り裂けそうだった。
仁もまた、その録音を聞き、混乱していた。
「みなみ、どういうことなんだ……?」
みなみは必死に否定した。
「違うの、私はそんなことしてない……」
しかし、言葉は届かなかった。誰もが、証拠の音声を信じてしまったのだ。
孤立し、涙をこぼすみなみ。
誰もが彼女を疑い、見放す中で、みなみは再び深い闇に閉ざされていった。
仁は葛藤していた。心の中の信頼と、目の前の証拠の狭間で揺れていた。
みなみは教室の隅に座り込み、視線を落としたまま動けなかった。冷たい視線が痛いほど刺さり、胸の奥が締め付けられるようだった。
「どうして、こんなことに……」
涙が止まらなかった。誰も信じてくれない。仁さえも。
その夜、みなみは部屋の暗闇に沈み、過去の痛みが一気に押し寄せた。虐待の記憶、いじめの絶望、そして今、孤立という現実。
一方、仁は録音を何度も聞き返していた。心のどこかでみなみを信じたい自分と、証拠を疑えない自分が葛藤していた。
「みなみ……本当のことを教えてくれ」
翌日、仁はみなみと放課後の図書室で向き合った。みなみは震える声で真実を語り始めた。
「私がいじめるなんて嘘……あの音声は加工されてるの」
しかし、仁の瞳には迷いが残っていた。
「どうしてそんなことをするんだ……」
みなみは答えられなかった。
孤立は深まり、学校生活はさらに辛いものとなった。だが、みなみの心の奥には、ほんのわずかな希望の光も消えていなかった。
「私は諦めない……」
そう自分に言い聞かせ、彼女は静かに目を閉じた。
その日から、みなみの学校生活はまるで風に吹き飛ばされる砂のように不安定だった。クラスメイトの視線は冷たく、廊下を歩くたびに囁き声が聞こえた。
「やっぱりみなみは嘘つきなんだ」
そんな言葉が胸に刺さり、みなみは毎日押しつぶされそうになった。
仁はそんなみなみの様子を見て、胸が痛んだ。
だが、録音の証拠がある以上、どうしても完全には彼女を信じきれなかった。
放課後の図書室、仁は重い口を開いた。
「みなみ……本当のことを話してくれ」
みなみは震える声で答えた。
「仁くん、あれは……嘘。編集されてて、私がいじめてるみたいにされたの」
仁は言葉に詰まり、目を伏せた。
「でも、証拠があるんだ……」
「私も証拠を消したい。でも……どうすれば」
二人の間に言葉が詰まったまま、時間だけが過ぎていった。
ある日、いじめっ子の川村がまた新たな嘘を流し始めた。みなみの孤立はさらに深まり、教室の空気は重く沈んだ。
それでもみなみは諦めなかった。
「信じてくれる人はいるはず」
小さな希望を胸に、彼女は少しずつ真実を証明する方法を探し始めた。
仁もまた、みなみを信じようと決意し、証拠を見破るために動き始めた。
二人の絆は、困難の中でさらに強く結ばれていった。
ある日、仁は学校のパソコン室で川村のスマホをこっそり調べていた。
録音の編集アプリの履歴を見つけた瞬間、胸が熱くなった。
「これが真実の証拠だ……」
しかし、証拠があってもみなみに対する疑いの目は簡単には消えなかった。クラスメイトたちの心の壁は厚く、仁も孤独と戦っていた。
みなみは学校で一人、教室の隅で静かに過ごした。そんな彼女を見かねて、数人のクラスメイトがそっと話しかけてきた。
「みなみ、大丈夫?」
その言葉にみなみは涙をこらえきれず、初めて素直に心を開いた。
「ありがとう……本当は辛かった」
少しずつだが、彼女の周りに小さな味方が増え始めていた。
仁も放課後、みなみと話し合った。
「証拠はある。でもそれだけじゃ、みんなの心は動かない。俺たちが信じ合うしかないんだ」
みなみはその言葉に涙を流しながらも、力強く頷いた。
「私も、仁くんを信じてる」
「絶対に俺がみなみがやってないってみんなに信じてもらえるように頑張るから」
「孤独だなんて思わないで」
わたしは仁くんの優しさに思わず涙を流した。
二人の絆は、まだ傷ついてもなお、確かな光を放っていた。