何だか寒いと思い、
無意識に瞑っていた目を開ける。
と、そこには真っ白な景色があった。
「ぇ…?」
そう呟いてる最中、
私は動いていないのに動いていた。
ふと、隣を見るとそこには大きくて真っ白な翼が生えた男の人が居た。
「ぇ…?誰…?」
「僕?神様だよ!」
自身が神様だと言う男性は私と手を繋いでいた。
しかも少し微笑みながら。
それを見ると何だか心の奥底が温かく感じた。
「神様…?」
半信半疑ながらも再度確認するように聞く。
「うん、神様!」
「君と僕は一緒にゴールを目指してるんだよ」
ゴール…?
何のことだろうか。
「君が生まれたあの日からずっと…」
そう言いながら神様はもう片方の手で私の頭を優しく撫でた。
それが心地よくて。
そう思っている間もずっと2つの足跡が下には続いていた。
そしていつの間にか寒いと思っていたはずの気持ちは幸せへと変わっていた。
それからずっと私と神様は手を繋いで歩いている。
私はこの真っ白な場所がどんな景色をしているのか分からないなま。
でも多分、砂浜のような気がする。
潮の匂いがして、
足裏には砂の上を歩いているような感覚がしたから。
でもそんなある日、ふと止まりたくなった。
ゴールとか何だかどうでも良くなって、
今すぐに止まりたかった。
そして神様でも誰でもいいから抱きしめて『いい子だね』って頭を撫でて欲しい気持ちに包まれた。
「ね、神様────」
それを伝えようと神様の方を見る。
と、そこには誰も居なかった。
「ぇ…?神様…?」
下を見ると足跡は1つしかない。
隣を見ても自身の手を見つめても握っていたはずの神様の手は無かった。
そう。
私は1人になってしまったのだ。
この真っ白な空間で。
独りぼっちになってしまった。
「なんで…?」
「ずっと一緒だったのに…」
「神様 “ も ” 私を見捨てるの…?」
そんな自分が呟いた言葉で、
ふとあることを思い出した。
私の家族は5人家族。
お父さんとお母さん。
そして兄と私と妹の三兄弟。
私は真ん中だった。
母は兄と私を比べては『兄を目指せ』と怒り、
はたまた妹と私を比べては『お姉ちゃんなんだから』と理由付けする。
しかも学校は楽しいとは言えるものでは無かった。
でも虐めとかでは無い。
ただ、孤独を感じていただけ。
元々、人見知りな私は人と話すことが出来ず、
でも頼られたらとても嬉しくて。
でも空回りして。
そしてそんなある日。
真夜中に私は願ったんだ。
『神様、どうか助けてください』
そう何度も何度も願った。
天に手を伸ばして。
普段は神など居ないって知りながらもそんな時だけ神様は居るかもしれないなんて馬鹿なことを考えた。
そしていつの間にか私は眠っていて…
気づいたらここに居たんだっけ…
でもまた独りぼっち。
忘れていた孤独感を思い出し、
胸は重りをつけたかのように重く締め付けてくる。
「神様…」
「独りぼっちは嫌だよ…」
そう声を漏らしながら必死に涙を堪える。
が、涙腺は崩壊し、
ついに涙が瞳からぼろぼろと零れてくる。
そんな時
「泣かないで」
「僕はここに居るよ」
「僕はずっと君を背負っていたよ」
と神様の声が私の下から聞こえた。
下には先程見た1つの足跡ではなく、
私をおぶる神様の姿があった。
「神様…?」
「うん、ずっと僕はここに居る」
「君が辛くて歩けないなら辛くなくなるまで僕が背負ってゴールを目指してあげる」
「そしてまた一緒に2人で手繋いでゴール目指そ?」
そんな言葉を聞き、
止まったはずの涙が零れ落ちていく。
「僕は君を背負ってるから前みたいに撫でるとかは出来ないけど…」
「ずっと一緒だよ」
神様の顔はゴールを見ているのか、
真っ直ぐ前を見ている。
けど、私のことを気にしている声は優しくて。
「今、君の目には真っ白な世界しか無いと思う」
「けど、僕から見た世界はとても綺麗なものだよ」
「きっと歩いていくうちに見れるようになるよ」
「君の今の視界はとても狭い」
「だから広めて。景色を見て」
そう私に言葉をかける神様の背中はとても温かいものだった。
「うん…頑張る……」
多分、私が居なくなってたら神様はさっきの私みたいな気持ちになるのかな。
それは嫌だな…
神様は強い。
けど、人間と同じ心を持っていて。
皆が思うことは神様も思っていて。
「ね、神様…」
「なに?」
「私、歩ける」
「うん、分かった」
少し嬉しげにしながら神様は私を降ろして手を繋ぐ。
歩みは止めないままに。
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