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番外編
夜。
同じ布団に入ってから、少し経ったのに――
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「ねえ、涼架」
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「なに」
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「やっぱさ、ちょっと近くない?」
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「元貴が寄ってきてる」
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「え、うそ」
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「ほんと」
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「……」
ちょっと考えて、
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「じゃあいいや」
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「いいんだ」
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「だって離れるのやだし」
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その一言に、涼架が少し黙る。
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「…ほんとズルいね」
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「え、なんで?」
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「なんでもない」
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元貴は気にせず、そのまま少しだけさらに寄る。
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「てかさ」
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「うん」
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「今日さ、楽しかった」
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「うん、知ってる」
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「なんで?」
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「顔に出てた」
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「うそだ」
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でも、ちょっと嬉しそうに笑う。
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「また来たい」
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「いいよ」
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「絶対ね?」
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「うん」
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少しの沈黙。
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「…ねえ」
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「なに」
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「もうちょい近くてもいい?」
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「さっきから十分近い」
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「いいじゃん」
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そのまま、ぐっと距離を縮める。
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「……元貴」
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「なに」
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「わざと?」
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「なにが?」
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ほんとに分かってない顔。
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涼架は小さくため息をつく。
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「ほんとズルい」
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「だからなんで!」
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でも、離そうとはしない。
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むしろ――
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「このままでいい?」
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少しだけ不安そうに聞く。
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その顔を見たら、否定なんてできない。
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「…いいよ」
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その瞬間、元貴がちょっと嬉しそうに笑う。
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「よかった」
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そのまま、自然に寄り添う。
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―朝―
「ん〜…」
元貴が目を覚ます。
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「……あ」
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ほぼくっついてる。
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「ちょ、近すぎ…」
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でも――離れない。
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「涼架、起きてる?」
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「起きてる」
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「やっぱ近いよね」
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「元貴が抱きついてた」
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「え!?」
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「ほんと」
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「うそでしょ!?」
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一気に顔が赤くなる。
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「ごめん…」
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「別にいいけど」
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その一言で、また固まる。
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「いいの?」
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「嫌なら離してる」
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元貴は少し考えてから、
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「…じゃあもうちょいこのままでもいい?」
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「まだ甘えるの?」
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「だめ?」
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ちょっと上目で聞く。
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涼架は完全に言葉を失う。
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「…ほんとズルい」
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「だからなんでって!」
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でも、しっかり腕はそのまま。
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「てかさ」
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「なに」
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「涼架って彼女みたいだよね」
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「は?」
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「なんか面倒見いいし」
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「元貴が子どもすぎるだけ」
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「えー」
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でも、少しだけ笑う。
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「じゃあさ」
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「なに」
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「そのままでいてよ」
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「なにが」
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「そういうとこ」
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一瞬、空気が変わる。
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「…離さないよ」
涼架が静かに言う。
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元貴は少しだけ驚いてから、
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「うん、いいよ」
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って、あっさり笑う。
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やっぱり――
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一番ズルいのは、元貴のほうだった。
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