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番外編
旅行から帰ってきた日。
いつもの部屋なのに、少しだけ静かに感じた。
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「なんかさ」
元貴がソファに倒れこむ。
「帰ってきたらちょっと寂しくない?」
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「旅行楽しかったからでしょ」
涼架が普通に答える。
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「それもあるけど」
ごろっと転がって、涼架のほうを見る。
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「なんか、もっと一緒にいたかった」
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その一言に、涼架の手が一瞬止まる。
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「…今も一緒にいるけど」
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「なんか違うじゃん」
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そう言いながら、元貴はそのまま近づいてくる。
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「ちょ、なに」
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「充電」
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「は?」
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そのまま、ぴたっとくっつく。
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「元貴」
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「んー?」
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「重い」
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「ひど」
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でも離れない。
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「ちょっとだけ」
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「さっきもそれ言ってた」
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「今回はほんとにちょっと」
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涼架は小さくため息をつく。
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「…はいはい」
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そのまま、好きにさせる。
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元貴は満足そうに笑う。
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「やっぱ落ち着く」
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「そればっかだね」
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でも、その言葉が少し嬉しい。
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そのとき――
元貴のスマホが鳴る。
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「ん?」
画面を見ると、クラスの女子からのメッセージ。
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「誰?」
涼架が何気なく聞く。
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「クラスの子」
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「ふーん」
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特に何も言わない。
でも――
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「ちょっと返信していい?」
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「どうぞ」
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元貴は普通にやりとりを始める。
楽しそうに、少し笑いながら。
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その様子を見て、涼架は目をそらす。
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「……」
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少しだけ、面白くない。
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「ねえ」
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「ん?」
元貴が顔を上げる。
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「さっき“もっと一緒にいたい”って言ってなかった?」
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「言ったよ?」
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「今は?」
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「今も思ってる」
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「じゃあなんでそっち優先してるの」
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少しだけ、声が低い。
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元貴は一瞬きょとんとする。
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「え?」
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数秒考えて、
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「……もしかして」
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ちょっとニヤッとする。
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「嫉妬?」
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「違う」
即答。
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「いや絶対そうじゃん」
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「違うって」
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でも、少しだけ視線がズレる。
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元貴はスマホを置く。
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「なに」
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「やっぱこっちがいい」
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そのまま、またくっつく。
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「……」
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「ねえ涼架」
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「なに」
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「機嫌悪い?」
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「別に」
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「うそだ」
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顔をのぞきこむ。
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「ほんとに」
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「じゃあなんでさっきあんな言い方したの」
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少しの沈黙。
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「…ちょっとだけ」
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「うん」
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「そっち見てるの、やだった」
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小さな本音。
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元貴は一瞬止まって――
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「…そっか」
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そのまま、ぎゅっとくっつく。
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「じゃあ見ない」
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「極端すぎ」
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「だって涼架のほうがいいし」
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あっさり言う。
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「……」
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言葉が出ない。
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「てかさ」
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「なに」
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「嫉妬する涼架、ちょっと好き」
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「やめて」
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「なんで」
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「調子乗るから」
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「もう乗ってる」
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ちょっと笑う。
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「元貴」
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「なに」
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「ほんとズルいね」
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「またそれ」
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「無意識でやってるのが一番タチ悪い」
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「えー」
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でも、嬉しそうに笑う。
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「じゃあさ」
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「なに」
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「もっと甘えていい?」
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「今以上?」
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「うん」
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少し考えてから、
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「…いいよ」
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その代わり、少しだけ引き寄せる。
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「こっちもやるから」
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元貴は一瞬驚いて、
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「なにそれ」
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でもすぐ笑う。
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「じゃあそれでいい」
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そのまま、また距離がなくなる。
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結局――
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振り回してるのは元貴なのに、
離せないのは、涼架のほうだった。