｢暖かくなってきたっすね…｣

あれから数日、本格的に春になってきた。

気温も常温になり寒がることも無い日が続いた。

｢…(サブローくん、なんて言おうとしたんすかね)｣

つい最近の出来事を思い出す。

雨がポツポツと降っていた、あの二人だけの空間での出来事を。

｢…(というか、何で俺サブローくんなんかにドキドキしてるんすかね…)｣

｢(もっ、ももも、もしかして俺！サブローくんのこと…！？)｣

心臓をドクドクさせながら深く考えた。

深呼吸をして、頭の中を整理した。

｢絶対ないっす。俺がサブローくんの事を好きだなんて考えたくないっす｣

そう自分に言い聞かせて、心臓の音を落ち着かせた。

｢…(あの木、もうすぐで咲きそうっすね)｣

空いていた部室の窓から外を覗き込むと、桜の木が咲きそうになっていた。あの木は毎年ヤルミナメンバーで花見をしたりと、思い出が詰まっている。

｢今年はあの人たちも来そうっすけど…｣

あの人たちとはＹＢＴ(通称ヤルミナぶっ潰し隊)の事だ。

｢サブローくん、場所取りに使われなきゃいいっすけど｣

｢って！なんでまたサブローくんの事…！！｣

顔を赤くして混乱していると

｢よーハック！ち〇この事でも考えてたか〜？｣

｢だ、誰がサブローくんの事！！！｣

後ろからキリンが声をかけ、肩をポンッと触った。

ハックはもっと顔を赤くして全力で否定をした。

｢顔真っ赤だぞ〜｣

｢うるさいっす！！｣

｢…タブーさんは？｣

これ以上からかわれるのが嫌だったのか、話題を変えた。

｢買い出し行ってるぞ｣

｢珍しいっすね、キリンさんがついて行かないなんて｣

｢そうか〜？｣

｢そうっすよ。いつもタブーさんにべったりでイチャついてるくせに…｣

ハックが不思議そうに言った。

｢あんまりべったりすると嫌われるしな！｣

｢ふーん…｣

キリンがヘラッと笑ってそう答えた。

ハックはもう一度窓から桜の木を眺めて、考えた。

最近まで、ずっと寂しかったのに

どうしてっすかね。

何だかそんな気持ちが消えていった気がするっす。

そう微笑んだ。

｢おいハックゥ！正直ち〇この事どう思ってるんだぁ〜？｣

｢…なんとも思ってないっすよ｣

｢じゃあ好きか嫌いかで言ったらどっちなんだ？！｣

何だか若干興奮気味でキリンは聞いてきた。

｢…嫌いっすよ。大っ嫌いっす｣

｢へぇ〜…｣

ハックはそう言っているが、顔が隠しようのないほど真っ赤になっていた。

｢そうかそうか〜大好きなんだなぁ〜〜！！｣

｢はっ！？なんでそうなるっすか！！｣

キリンはニヤニヤしながらこちらを見てきた。

｢お、もうすぐ来そうだな｣

｢もうすぐって…誰がっすか？｣

ダンッ

｢おいハック！今日は道端にいた老人に呪いのビデオとやらを授かったから、今日はそれを見ようじゃないか！｣

部室のドアを思いっきり開けて、その呪いのビデオとやらを見せながらサブローがやってきた。

｢…そうっすねー｣

｢ん？どうしたんだ？顔が真っ赤だぞ｣

サブローがグイグイとこちらに攻めてくるため、顔が赤くなってしまった。

｢真っ赤じゃないっす！これは、その、暑いだけっす！｣

必死に言い訳を言うと、サブローはそれを信じてしまった。

｢ではこの呪いのビデオをみて熱を冷まそうではないか！｣

｢分かったっすから！！一旦離れてくださいっすー！｣

またまたグイグイ攻めるサブローに、ハックは混乱してしまった。そんな光景を、買い出しから帰ってきたタブーと近くにいたキリンがニヤニヤしながら見ていた。