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リフェアリー
128
銀行を、作る。
要は、それを、一ノ瀬の事務所で、四人に言った。会長。一ノ瀬。鷺沼。瑠衣。
「銀行?」会長が言った。「大剥離で、全部、潰れたじゃない」
「潰れました。だから、作る。侵入前提の銀行を」
「何を、するの」
「三つ。預かる。貸す。送る」
要は、紙を広げた。三日かけて書いた紙。十二枚。
「預かる。御殿の現金を。権田さんが、大剥離の日から、倉庫に貯めていた現金。それと、三千人が、各自、持っている現金。現金は、御殿の中でしか使えない。でも、物としては、一枚ずつ、紙だ。番号がある。形がある。一つしかない」
「一つしかない」鷺沼が、繰り返した。
「ゼロは、現金を、増やせない。一枚ずつ、番号があるから。同じ番号の紙幣は、二枚ない。大剥離の夜も、現金だけは、増えなかった」
「そうだ。現金だけは、増やせなかった。だから、現金を持っていた者が、強くなった。権田さんが」
「だから、現金を、預かる。預かった現金は、燃やす」
部屋が、静かになった。
「……燃やす?」会長が言った。
「燃やす。預かった分を、三冊に書く。番号を、全部。どの番号の紙幣を、誰が、いつ、預けたか。三冊に書いたら、紙幣は、燃やす。燃やした紙幣は、二度と、使えない。使えないから、盗まれない。強盗も、御殿も、取れない。残るのは、三冊の記録だけだ」
「記録だけ。ゼロが入る。増やす」
「紙の記録です。ゼロは、入れない。三冊は、三つの場所に。商店街。八王子。木曽。一つが燃えても、二つが残る。二つが燃えても、人が覚えてる」
一ノ瀬が、言った。
「……金を燃やして、記録だけを残す。江戸の両替商と、逆だな。両替商は、金を蔵に置き、手形を出した。お前は、金を燃やし、手形だけを残す」
「蔵は、盗まれます。燃やした金は、盗まれません」
「燃やしたら、戻せんぞ」
「戻しません。代わりに、証を渡す。預けた現金と同じ量の。証は、半年で紙に戻る。貯められない。回すしかない」
「それじゃあ、預けるやつは、損だ」会長が言った。
「損じゃない。現金は、御殿の中でしか使えない。御殿の米は、三ヶ月で尽きる。尽きたら、現金は、紙だ。今、預けて、証に替えれば、商店街でも、木曽でも、諏訪でも、使える」
*
「貸す。」要は、二枚目の紙を指した。「木曽で、ひかりに、水車の証を貸した。十人が、十五枚ずつ。ひかりは、半年で、百六十枚を返した。それを、東京で、やる」
「誰に」
「顔を知っている人に。知っている仕事のために。十二条の七条。『遠くの他人に貸すな』。発電機を直す電気工事の男に。屋根を直す大工に。空き地で野菜を作る農家に」
「返さなかったら」
「返さなかったら、組合から出す。六条。『運の悪い者を、支えよ』。それでも返さなかったら、評判が、ゼロになる。二度と、借りられない」
「三つ目は」鷺沼が言った。
「送る。」要は、三枚目の紙を指した。「東京で預けた証を、木曽で使えるようにする。封蝋の法で。三つの蝋。五つの区間。十人の飛脚。五日」
「五日は、遅い」瑠衣が言った。
「遅い。だから、速い方法も、使う」
要は、鷺沼を見た。
「鷺沼さんの部屋には、電気がある。画面がある。線が、どこかにつながってる」
「つながっている。日本中に。ただし、ゼロも、そこにいる」
「ゼロがいる前提で、使う。デジタルで、木曽に送る。一分で届く。でも、信じない。同時に、紙でも送る。封蝋で。五日で届く。五日後、紙と、デジタルを、照らす。合っていれば、本物。合っていなければ、ゼロが入った」
鷺沼は、要を見た。
「……デジタルで先に知らせて、紙で後から確かめる」
「はい。五日間は、デジタルを、仮に信じる。仮に信じて、動いていい。でも、五日後、紙と合わなければ、戻す。戻せる量だけ、仮に信じる」
「戻せる量」
「一日に、百枚まで。百枚なら、組合の蔵から、戻せる。千枚は、戻せない。だから、千枚は、紙を待つ」
鷺沼は、紙を、もう一度、読んだ。
「……ゼロが、入ってきても、百枚分しか、壊せない」
「はい。侵入前提です。入ってくる。でも、入ってきても、百枚分しか壊せない形にする。百枚分は、組合が埋める」
*
十二枚の紙を、五人で、一日かけて、読んだ。
会長は、三度、「それ、面倒」と言った。一ノ瀬は、二度、「江戸にもあった」と言った。鷺沼は、一度も、笑わなかった。瑠衣は、五つの穴を、見つけた。
穴は、穴のリストに、足された。三十九。
「名前は」会長が言った。「銀行の名前」
要は、考えていなかった。
「……商店街の銀行」会長が言った。「大げさな名前は、要らない。商店街で始めるんだから」
「商店街の銀行」要は、繰り返した。
「それでいい」一ノ瀬が言った。「小さい名前の方が、長く持つ」
コメント
1件
いやあ、めっちゃ熱かった…!!!!🔥 「金を燃やして記録だけ残す」っていう発想、痺れた〜!!😭✨ ゼロが侵入する前提でシステムを組むっていうのも、もう完全にこの世界のリアリティだよね。会長の「面倒」も一ノ瀬の「江戸にもあった」も、それぞれのキャラが立ってて最高でした…!!商店街の銀行、小さい名前で長く続く感じがすごく好きです。次回も楽しみにしてますっ!!🌸💕