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「エドワードは休んできな。疲れただろ」
「しかし,,,」
「【君の】家庭も大事にすべきだよ。外に車あるから今日はもう帰りな」
「,,,!すみません,,,」
「はー、,,,さっ!坊ちゃんのお手伝いしますかね。」
「,,,なんできやがった,,,」
陣痛の辛さにベッドから出ることもできず、ひたすらハンカチで口を抑えることしかできない。ゴホッゴホッと咳き込むとウェールズが近づいてきた。
「いーくんが心配で来たんだよ。家帰ったら誰もいなくてやっと見つけたメイドさんはオロオロしてたしね」
フランシスがゴソゴソと何かを探す。
「,,,まっ、俺もさ王家の誕生は間近で見てきた身だから。苦しいことくらい分かってるよ。」
思わず驚いた顔をしていると、スコットランドが新しいハンカチを持って近づいてきた。
「体制、変えられねぇか?」
「ちょっと,,,きついな。どこ向いても、吐く」
「じゃ横向いとけ。俺が口抑えとくからお前はなんか握っとけ。」
と言って小さいテディベアを出しくる。 北アイルランドも動き出し、各々が手助けをしだす。
「あっこれを押すのね?アーサー。押して欲しいとことか、痛かったら言いなよ」
「あ、あぁ。ありがとう兄上」
「,,,なーんで優しいのかって顔してんね」
「え」
「えええええ!?いーくんそんなに俺達のこと信頼してなかったの!?」
飲み物を持ってきたフランシスがボソッと言い、ウェールズが過剰な反応を返す。
「うるせぇ!迷惑になるだろ!」
「ごめんってぇー、スコくん,,,」
ぽかんとしていると頭を軽く小突かれる。
スコットランドだ。
「,,,兄だしな。ただし俺達も仕事があるからずっとはしねぇぞ。」
ハハハという声が響く。一日、呻き声しかなかったこの部屋からするとだいぶありがたい配給である。
「うううううう、」
「大丈夫?いーくん。次俺が押したげるよ」
「ウェールズ。そろそろ時間がやばい。」
「えっ!もうそんなに経ったの!?」
「少なくとも10時間はいたぞ。」
「あー、」
「,,,すまない、兄上達,,,助かったよ」
「,,,」
北アイルランドが少しムスッとしてこちらへ向かってきた。何か変なことを言ったかと思って身構えたが、手のひらを頭の上に乗せられた。
「勘違いすんなよ。俺たちは兄弟なんだからな。それに、お前の体も今はお前だけのものじゃないんだから。」
スっと立ち上がり、そのまま振り返らず去っていった。スコットランドも同じく続いていき、ウェールズだけもう一度向かってくる。北アイルランドとは反対になでなでと頭全面を両手でなでくる。
「ちょ、兄上,,,?」
「んー?」
「いかれ、ないんですか?」
「おまじないだよー。いーくんは気づかなかったかもしれないけれど、部屋の中だけじゃなくて外の廊下まで妖精たちが心配してるんだからね。可愛くて元気な子産みなよー。」
フランシスにもニコッとしてウェールズも去っていった。
フランシスは廊下に出て見送ったあと、こちらへゆっくりと向かってくる。
「さっ。あとはお兄さんとのマンツーマンだね。」
「きめぇ,,,兄上たちの方が良かった,,,」
「はぁ!?恩というものをな,,,」
「うっ!いででで,,,」
「ああ、もう,,,」
背中をさする。
「,,,陣痛きてから何時間?」
「,,,分かんねぇ、31日の午前から病院には来てる,,, 」
「え!?そんなに経ってんのか!?」
「そうだよ,,,だからもう声出させんな,,,」
「あー、じゃあ声出さずに俺の話だけ聞いてくれるか?」
「あっそーだ。俺さ、何ヶ月か前の会議の休憩中にお前呼び出したじゃん?覚えてる?」
「,,,,,,あぁ。チューリップ野郎どもが来た,,,」
「そうそう。あの時におれ、あの子が夢に出てくるっていったじゃん。そのあともしばらく出てきたんだけどね、一昨日かな?顔を見せてくれたんだ。」
「,,,オルレアンの乙女,,,が?」
「あぁ。あんな美人だったかなぁって見惚れてたらこっちにトコトコ来てさ手握るの。口パクでなんて言ってたかは分かんなかったけどさ。なんかその後は気が楽になった。だから今お前とは真逆でめっっちゃ気分上々ー笑」
「まじ入れ替われ,,,」
「あはは。あぁ、そんで話変わるけどな。俺さ。エドワードから連絡来て病院に行ったわけよ。あの子自身焦ってたんだろうね。いつも夜中に電話なんてしないのにしてきたし。てっきりそんなもんだから、今日のことかと思ってたよ。」
「,,,もう7月の2日に入るじゃねぇか,,,」
「ああ。そうだな。そんでまだ陣痛続いてた時用の物も持ってきたら廊下で大柄な男がなんかザワザワしてるわけよ。近づいたら案の定あの3人だったしね。」
「,,,そんなに,,,騒いでたのか,,,?」
「あいつも言ってただろ?兄弟なんだってお前らは。」
背中側にいたのが、次は俺の目の前に来る。
「マシューにも、一緒に行こうって言ったんだけどな。【アルフレッドと行きます】ってよ。あいつらも腐ったとしても兄弟なんだな。」
マシューは本当にアルフレッドをよく思っているのだろうか。フランシスは度々家に帰らなかったし、結局あのときもアルフレッドについていたから知らないだろうが、マシューは記憶力がいいんだ。絶対に亡国になったとしても名前は忘れたりしない。
廊下にあったアルフレッドの顔が消えているあの絵画。描かれた3人の中で触っていないのはマシューだけだったのだろうか?
もし、俺がマシューの立場だとすると、あの絵画こそ最高ランクの呪いに思える。
優しいマシュー。でも、喧嘩をする時は本気で喧嘩する。そこだけがこの何百年、ずっと心配してきたことだ。
「,,,おい?どうした?」
「,,,い,,,てぇ,,,」
「ああ。押したげるよ。どこ?」
「い,,,や,,,,,,ナース、コール,,,」
「え?」
「10cmですね。」
「え?」
「先生!先生ー!」
「え!?アーサー!?」
「,,,すまねぇ,,,ちょっと、外で、待っててくれねぇか,,,来たやつに状況説明しといてくれ,,,」
ついに本陣痛がはじまる。