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「宗親さん、私、もう……」
危うく自分から彼が欲しいとおねだりしそうになって、慌ててキュッと口をつぐんだ。
「……春凪、今なんて言おうとしたの?」
なのに。鏡の中から宗親さんが私を熱のこもった目で見つめてくるから。
私はソワソワと視線を彷徨わせる。
「お願い、聞かせて?」
分かってるくせに言わせようとするなんて、意地悪!って思う一方で、こんな風に情事の時は子供みたいに真っ直ぐに私をいじめてくる宗親さんのことを何て色っぽいんだろう、ともぼんやりとした頭で思ってしまった。
そんな私に、彼が再度言葉を連ねてくるの。
「ほら、この可愛い口で――」
言うなり、懸命に引き結んだ私の口の端を優しくほぐすみたいに宗親さんの指が割り入ってくる。
シャワーの水音にかき消されても不思議じゃないはずなのに。
宗親さんの囁くような低音ボイスも、彼が私の口中をかき回すクチュクチュという微かな音も、何故か鮮明に私の中に響いてくるから。
「あっ。ダメっ、むねち、きゃさっ……。ぁんっ」
ただ舌先や歯列、口蓋をゆるゆるとなぞられているだけなのに、ゾクゾクと背中に甘い痺れが走ってしまう。
気が付けば、私は熱に浮かされたみたいに宗親さんにおねだりしてしまっていた。
「お願っ。もっ、焦らしゃな、ぃ……でっ」
生理的な涙がじんわり目端に滲んで、私は赤ちゃんみたいに宗親さんの指先を吸い上げながら必死に鏡越し、彼の目を見詰める。
それだけならまだしも、無意識に背後の宗親さんの昂りを自分の蜜口に誘い込みたいみたいに腰が動いていた。
「っ、……本当、春凪には敵わない、なっ」
宗親さんは私の耳元、熱い吐息を落とすような声音で途切れ途切れにつぶやくと、「ねぇ春凪。今日は……このまましても、いい?」と私の秘芽を指の腹でやんわりと撫で上げてくるの。
お尻の所に宗親さんの硬いのが当たってるのも凄く熱くて恥ずかしくて……。
「この、まま?」
――それは……このままここでしちゃうっていう意味?(そんなの今更だよね?)
――それじゃあ、もっと違う意味なのっ?(ハッキリ言ってくれなきゃ何のことか分かんないよぅ)
熱に浮かされながらも、彼の真意を問いたいのに。
今まで焦らされ過ぎて痛いくらいにツンと張りつめて立ち上がった花芽は、ほんのちょっと擦り上げられただけで私の身体をビクッと跳ねさせた。
「ひゃっ、あぁ……んっ」
思わず強すぎる刺激から逃れるように腰を引こうとしたら、口からずるりと抜かれた宗親さんの手指にグッと腰を掴まれ阻まれてしまう。
そのまま、お尻を突き出すみたいに彼の方へ腰を引かれた私は、宗親さんの昂りが亀裂をなぞる様に愛液でぬめる入り口を探しているのを感じて。
「ね? ダメ?」
宗親さんがクチュクチュといやらしい音を立てながら私を焦らす。
(宗親さん、限界だって言ったくせに、どうしていつもみたいにすぐに挿入ってきてくれないの?)
きっとこれは先の宗親さんからの問い掛け、『このまましてもいい?』に答えないと前には進んで下さらないやつだ、とぼんやり思った私は、明確に〝このまま〟が何を指すのかも分からないままにコクコクと頷いた。
「ダメじゃ、ない、です……っ」
彼とひとつになれるなら……もう何もかもが些末なことに思えてしまって。
だって、宗親さんがすることに、ダメな事なんて何もないはずだもの。
宗親さんは私の答えを聞くなり「有難う。一生大事にします。僕の……春凪っ!」って背後から私をギュッと抱き締めてきて。
「ふ、……あぁぁっ!」
今度こそ私の中に押し入ってきた。
何度肌を重ねても、宗親さんが私の隘路をこじ開けるようにして挿入ってくるこの瞬間だけは苦しく感じてしまう。
別に痛いとかそいういうことは全然ないのだけれど、何て言うのかな。
圧倒的な質量を感じさせられて、彼に貫かれているのを実感してしまうというか。
その苦しささえ幸せに感じちゃうって言ったら呆れられてしまうかな?
でも、今日は何だかいつもとは少しだけ感触が違う気がして。
膣内に受け入れた宗親さんがとても熱く思えるのは気のせい……?
焦らされ過ぎて、いつもより感覚が研ぎ澄まされてしまったのかも知れない。
「んっ、宗親さっ、……」
でも何だかそんな些細なことがちょっぴり不安になって、思わず背後の宗親さんを振り返ったら、そのまま唇を塞がれてしまう。
「んんっ……!」
宗親さんが私の舌を自らの舌で優しく撫でるみたいに擦り合わせた後、やんわり吸い上げるようにしてきて。
それが堪らなく気持ちよくてゾクゾクしてしまう。
「ふ、ぁっ……」
唇が離れると同時、どちらのものとも分からない唾液の糸が私たちの間を繋いで、それが鏡にハッキリ映っていることに気が付いた私は、今更のようににわかに恥ずかしくなる。
宗親さんのキスに蕩けた私の顔は、こんなにもいやらしいの?って自分自身ドキッとして。
途端、宗親さんが「あ。春凪っ。すごい締め付け……っ」って私を抱く腕に力を込めてくるの。
力を入れる余り筋の浮いた男らしい彼の腕が、私の胸を押しつぶす様さえもとてつもなく卑猥に見えてゾクゾクしてしまう。
いつのまにかピンと勃ち上がっていた日頃は隠れたままの乳首が、宗親さんの腕に押し潰されて痛いぐらいに気持ちいい。
「んっ、宗親さっ、気持ち、いっ」
普段はそんなこと恥ずかしくて絶対言えないのに、何だか今日は素直にそう口に出来てしまったのは何でだろう。