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「まっーーまだだ!」



スクは起き上がろうと試みるが、全身は既に凍結し、勝負有りである事は明らかであった。



「何をしても無駄ですよ」



ユキが冷酷に、死に逝く者への言葉を送る。



「全ての細胞が凍結崩壊し、後は全て無に還るだけです。全神経凍結により、せめて痛み無く逝くといいでしょう」



それはせめてもの情けか。かつての彼には考えられなかったもの。



“今更あがいても仕方ないか。少しでも力を削いでおきたかったが……”



「ふ……認めよう。私の負けだ。特異点、私の敵う相手では無かった……」



“最期に強敵との闘いで死ぬなら本望か”



「だが、この地やお前達における実態調査は全て本部へ報告済み。直属部隊の方々も動くだろう……ふふ」



スクは可笑しくて仕方なかった。



結果破れたとはいえ、自分の調査報告により、この地が終焉に向かう事を。



個人的な闘いには破れたが、狂座軍団長としては勝利した事の意味であった。



「お前がいかに強かろうが、所詮戦は数の論理。お前一人の力だけでは、我等の戦力差を埋める事は決して出来ん!」



スクの身体が凍結崩壊し、塵になっていく。



「先に地獄で待っている」



それが塵となって消え逝く、スクの最後の言葉だった。



「……先に逝っててください」



ユキは塵になって、夜空に四散していくスクを見据え思う。



「地獄……か」



“私は自分がしてきた事を、無かった事にしようとは思わない”



“この報いは受けます……必ず”



ーーでもその時が来るまで、命の限りアミを守り抜く。



世の中がどうなってもいい。



“だがアミだけは必ずーー”



「それが私の存在意義なのだから」



ーー此処の情報が全て狂座に送られているなら、遅かれ早かれ攻めてくるのは間違いない。



直属部隊。おそらく幹部級が来る筈。



“それならそれで丁度良いです。これで全てのケリを付ける。アミやその他には黙っていた方が宜しいですねーー”



そうユキが考えあぐねていると、奥の方から声が聞こえてきた。



「ユキ~!」



アミが息を切らせながら、ユキの元に走り寄ってきたのだ。



「目が覚めたらユキがいないし、心配していたのよ」



「すみません……」



アミはこの場で何をしていたのか、敢えて聞かなかった。



狂座の者と戦闘をしていた事は明らかだったから。



ただ無事だった事にアミは心底安堵したが、彼の頬に切り傷が有るのを発見する。



「ユキ? 頬に傷が!」



ユキは指で頬をなぞってみると、指にうっすらとした血糊が付いていた。



「この位、大丈夫ですよ」



心配そうに見つめるアミに、ユキは笑顔で返した。



幾多もの死線を潜り抜けてきた彼にとって、傷など日常茶飯事であったから。



だからこそ、アミの次の行動は予想外であった。



不意にアミはユキを抱き寄せる。



「アミ?」



アミはユキの切り傷に唇を這わせ、血を吸い出していたのだから。



「あ、あの……本当に大丈夫ですから」



「駄目よ、消毒しないと黴菌が入っちゃうでしょ」



「それは分かりますが、恥ずかしいですよ……」



ユキはその行為を大袈裟だと思いながらも、心地良いので、されるがままとなっていた。



でもその心配が嬉しく思う。



「アミ……」



“お慕い致しております”



“ーーて、私何やってるんだろ!? ユキが呆れちゃってるじゃない”



アミは急に自分がした事が恥ずかしくなり、俯いて顔が紅くなる。



「アミ、ありがとう」



俯いてるアミにユキは笑顔で返す。



その笑顔があまりに美しくも愛おしくて、アミは再びユキを抱きしめた。



「ごめんね。でもあまり無理はしないで」



“これはきっと気休めだ”



“ユキはまた闘いへと赴いていく……”



“そんなユキに私は何もしてあげれないーー”



狂座の戦力を前に、アミ達は無力に等しかった。



だからこそ彼の力に縋る他、道は無い。



“私にもっと力があれば、ユキが傷付く事も無いのに……”



そんなアミの心を見透かしたかの様にーー



「大丈夫ですよ」



“私は貴女を護ると誓ったーー”



「では、家に戻りましょうか」



「うん」



二人は手を繋いで帰路へ。



“その言葉を違えるつもりはありませんから”

雫 -SIZUKU- ~星霜夢幻ーー“Emperor the Requiem”~

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