テラーノベル
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各国の代表は視線を見合わせると、覚悟を決めた表情を浮かべる。
「星々の鎧降臨!」
ソニアの魔導装備召喚魔法によって、俺の着ている鎧が強化され、白銀の光を放つ。
「総員、リガルドの兵を美しくバックアップせよ! 私も隊壁に加わる!」
彼女の号令でトリスタンの魔法騎士達が、リガルドの暗黒騎士に防御魔法をかけていく。
「防御力向上!」
「武装守備力向上!」
「皮膚鋼質化!」
「筋力極限上昇!」
それを見てセレーネも杖を掲げる。
「アクアレムヒーラー隊! 魔獣の勢いを殺す防壁を作ります! ウォーターシールド!」
アクアレムのヒーラー隊が、暗黒騎士隊の前に2重、3重の水の壁を形成していく。
「ギデオン工作隊、地形液状化地雷を設置して地面を融解させるぞ!」
ギデオンの工作チームが、水壁周辺に地雷を設置。
地面を液状化させることによって、タイタスの回転を減衰させるつもりだ。
それぞれの国々ができることを迅速に行い、回転攻撃を待ち構える。
タイタスは地面を抉りながら高速コマの如く回転し、俺達の元へと急接近してくる。
竜巻のような、バリバリと赤岩を砕く音が響く。
あんなもん耐えられるわけないだろと、転生前の俺が冷静にツッコんでくる。しかし俺は逃げそうになる気持ちを押さえつけ、シールドを構えた。
『僕の力を全部、君の防御に回すからね!』
「頼む!」
『シャドウウォール!』
ナハトの能力によって、俺の盾が闇の魔力を帯びる。
盾の両サイドからコウモリの羽が伸びて、暗黒騎士の盾っぽくてカッコイイ。
「来るぞ!」
まずはギデオンの地形液状化地雷が起爆し、泥沼が回転力を下げる。更にアクアレムのウォーターシールドにぶつかり、ブレーキをかけていく。
しかしながらその程度では止まらず、シールドを突き破って俺達暗黒騎士隊と甲羅が衝突する。
「踏ん張れぇぇぇぇぇぇぇ!!」
触れるもの全てを引き裂かんと回転する甲羅と、帝国最強の暗黒騎士隊のシールドがぶつかり、激しい火花を上げる。
昔コマ同士を戦わせ、負けた方のコマがバラバラになるっていう玩具があったが、本当にこっちがバラバラになりそうだ。
「ウォーターヒール! リジェネレート! ヒールプロテクション!」
「チェーンバインド! アーマーブレイク! ストレングスダウン!」
「手足の穴にアンカーぶち込め! とにかく回転を止めろ! 暗黒騎士達が押しつぶされるぞ!!」
セレーネの回復、ソニアの拘束&デバフ魔法、ジャガーのアンカーによってタイタスの回転エネルギー減衰をはかる。
しかし、それでも巨大魔獣の回転は止まらない。
「ぐるじい……」
思わず弱音が漏れた。シールドを押さえる腕が痛い。膝が折れそうだ。俺の体からぐんぐんカロリーが消費されていくのがわかる。
このままでは骨と皮になってしまう。
256
瑞希 流星♟也中
372
🍎🥧アップルパイ
84
「だずけて、ママ上……」
◇
砦内で待機していたステラに、テレパシーにも似た悪寒が走っていた。
ラウルの使用していたカップが突然割れ、窓辺に黒猫とカラスが同時に舞い降り、彼女を覗き込む。
虫の知らせ、新たなタイプとも言われる、第六感的なスキル。
彼女はサキュバス化してから、そのセンスの部分が強くなっていた。
「ラウルちゃんが危ない!?」
ステラは空飛ぶ箒を呼び出して柄に腰掛けると、砦の窓からダークライン目掛けて弾丸のようにすっ飛んでいく。
ステラはダークライン上空を飛行すると、案の定冗談みたいな光景が広がっていた。
ひび割れた防壁を守ろうと、騎士たちが隊列を組み、回転する山のような亀をシールドで必死に押さえているのだ。
しかも最前列にはラウルの姿が見えて、思わず箒から落ちそうになる。
ステラは、すぐさま崩壊しかけのダークライン防壁の上に立つと、自身の胸から聖剣(杖)を取り出し、詠唱に入る。
「ウチの子をイジメないで!!」
◇
もう膝が折れそうだと思った時だった、周囲の崩れ落ちた防壁の破片や、荒野の岩が、まるで磁石に引き合わされているようにガチガチとくっつき合っていく。
なんだこれはと思っていると、大地から地鳴りが響く。
まさか別の魔獣が地下から出てくるつもりか? と思ったが、顕われたのは石で形成された巨大な指だ。五本の指が大地を突き破って出てくると、次は腕が形成されていく。
肩、頭、胴体と、自分の身体を造りながら石の巨人は立ち上がっていく。
赤石の鎧を纏ったような巨人の大きさは、タイタスを超えるほどだ。
「古の巨人兵!? この規模の生成を、一体誰が!?」
魔法に詳しいソニアは、驚きの声をあげる。
「ラウルちゃん、ママよ、ママが来たわ!」
背中から声が聞こえた。どうやらこの巨人を作り上げているのはママ上らしい。
石中から生まれ出た石鎧の巨人は、回転するタイタスを両手で掴み、無理やり回転力を弱める。
明らかに動きが遅くなった。俺はその隙を逃さず、号令をかける。
「今だ、暗黒騎士隊前進せよ!!」
攻撃に耐え続けた兵たちが一歩ずつ前に踏み出し、コマを下からひっくり返すように、巨大な甲羅を下から盾で押し上げる。
「ひっくり返せぇ!!」
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」
鍛え抜かれた騎士たちが、能力アップバフを貰って懸命に力を込める。
俺も全カロリーを、この一瞬に賭ける。
「奥義カロリーバーストイグニッション!!」
俺の全カロリーを消費するかわりに、全ステータスが向上。ほんの一瞬だけだが、俺の力は歴戦の騎士をも凌駕する限界突破を発動。
各国の兵たちの力が一つになり、巨大な魔獣の体が土煙を上げながら裏返る。そのシーンはスローモーションのようにゆっくりだった。
ズドォォォン――
タイタスは自分で起き上がることができず、本物の亀のように足をジタバタさせ、しばらくしたら動かなくなった。
直後、騎士たちから怒号のような歓声が巻きおこる。
「「「オオオォォォォォ!! 我ら帝国の勝利だ!!」」」
俺はなんとかなった安堵から、腰をぺたんと落とす。
「はは、一応人類の勝ちでいいのかな」
「勝ちで間違いねぇだろ。ってうわぁ!?」
ジャガーは俺を見て驚きの声を上げる。
「なんだ、今腹減って骨と皮になった気分なんだ」
「いや、みたいじゃなくて骨と皮になってんぞお前!」
なに言ってんだこいつと思いながら、俺はアクアシールドで生成された水たまりを見やる。
そこにはほっそりとした、枯れ木みたいな男が映っていた。
「誰だこれ。……俺か?」
奥義カロリーバーストの代償か。
そのことに気づいた俺は、そのままぱたりとその場に倒れ込んだ。
「おいヒーラーすぐ来てくれ! 王子が干からびてる!!」
「あぁラウルちゃん、なんてことなの!?」
ジャガーと慌てるママ上の声を聞きながら、意識はフェードアウトしていく。
◆
ラウルが竜騎兵のカーゴに乗せられ、砦へと運ばれていくのを見送った同盟軍代表達。
ダークラインより撤収し、負傷者及び被害状況の報告が行われていた。
「とりあえず急しのぎで良い。崩れかかっている防壁に、硬化粘土剤を注入して魔獣が外に出られないようにするんだ。あと目張りして、外が見えないようにしとけ」
「はっ了解! リガルド帝国が、亀の魔獣を砦に運ぼうとしているみたいですが」
「あーじゃあウインチ貸してやれ」
「随分価値がありそうな魔獣ですが、くれてやってもいいのですか?」
「オレ達の為に軍動かしてくれたんだ。向こうも経費くらい貰わないと割にあわないだろ」
ジャガーは工作兵にてきぱきと指示を出す。
そこにソニアとセレーネが集まってくる。
「そっちの被害状況はどうだ?」
「半数以上が生き残ったが……私は無様だ」
「こちらも同じようなところです」
「ウチも砦の兵、約3割と備蓄の爆薬をほとんど失った。リガルドにはでかい借りができて、メタボ王子は救急搬送。反省しかない戦いだった」
ジャガーは物資の入った木箱に腰を下ろし、自身の短髪をかきむしる。
「ラウル王子は、命に別状ないとのことですが」
「別状あったら、リガルド本国が動いて終わってた」
全員が深い溜め息をつくと、そこにどこに行っていたのかガレスの代表グローリーが走り寄る。
「おーい、皆大丈夫だったか!」
「テメェ、今更ノコノコ出てきて何しに来たんだ!」
「そう怒らないでくれ。ボクはリガルドとは絶対手を組まない。だから協力できなかったんだ」
「民よりも、己の思想を優先したわけか」
ソニアが冷たい声で事実を告げると、グローリーは大きく首を振る。
「それは人聞きが悪いよ。こうして同盟軍が魔獣たちに勝利したんだし、もっと喜ぼうよ。ボクらの勇気の勝利だ」
拳を掲げるグローリーに、他3国は冷めた視線を送る。
「これが勝ちって……」
「リガルドに介入されなければ、壊滅していましたよ」
「手柄の横取りは美しくない」
「いや、彼らがいなくてもボクたちは勝っていた。勝ち戦にリガルドが勝手に乗ってきて、勝利を横取りしようとしたんだ」
「お前マジか? 裏切った国にこんだけ助けられて、勝利を主張するってやばいぞ」
「ボクはそうは思わないけどね。むしろピンチになったのは、リガルドの連中が、あの亀の魔獣を防壁まで連れてきたからだと思う」
「いやいやいやいや。お前リガルド憎しで動きすぎだぞ」
ジャガーは頭痛いわ、と額を押さえる。
するとソニアが、大きなため息を吐く。
「無様なトリスタンは、この4国同盟を今日で抜ける。以上だ」
「ギデオンもだ。これ以上恥晒したくねぇ」
「えっ? えっ?」
「すみません……アクアレムも検討に入らせていただきます」
「なんで!? えっ!? 君たち! ダメだよ、そんな勝手なこと!」
ジャガー達は、今後どうすっかなと各々の拠点へと戻っていった。
コメント
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いやあ、第33話「総力戦」、めっちゃ熱かった!各国が連携してあのデカブツのタイタスに立ち向かう展開、胸熱すぎるわ。特にラウルがカロリーバーストで骨と皮になるところ、笑ったけどマジでヤバかったな。ステラの「ウチの子をイジメないで!」からのギガントロック召喚、ママ上強すぎて草。でもグローリーのクソっぷりが際立ってて、思わず「お前、空気読めよ!」ってツッコんだわ。連携が光る名エピソードだった🔥