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どこまでこの人は優しいんだろうと感じながらも身請けされるのが吉原の女の勤め。他の皆は黙って行っているというのに自分だけが逃げていいはずがない恐らく最初の頃の自分はそう思っていただろう
でも会いたい、会いたいこの人にそう望んでしまったからにはもう戻れない
「私、逃げてもいいんですか…?」
「あぁ」
その一言で積もっていた感情が爆発し涙が溢れながら涼太郎に抱きついてしまった
涼太郎は何も言わずに陽菜乃の手首にかけられている機械を壊し陽菜乃を抱いたまま窓から身を投げ出し逃げ出した
そう簡単に逃げ切れるはずない。普通の遊女なら人の目を気にせず逃げ切れるが、陽菜乃は花魁としても有名なのだ
雪色の髪が風に靡かせ顔も恐ろしいくらい綺麗な人なら誰もが目で追う。そして見つけられバッドエンドだ
涼太郎は陽菜乃を守る為、人目を気にしながら逃げてはいるがそう長くは持たない
「涼太郎さん….私..」
「月雪‼︎」
涼太郎の背中に隠れながら後ろを振り向くとそこには…陽菜乃を身請けしようとした客と陽菜乃の店の店主やらなにやらたくさん人がいた
「あんた何事だい?身請けはいい話じゃないか」
「陽菜乃あっちに向かって逃げてくれすぐ行く、1人にしないから」
「涼太郎さんあの人達….武器を」
「俺実を言えば江戸でちと有名な侍やねん。こんな事すぐ片付けきれるがな!だから」
ぽんと陽菜乃の頭に手を置き大丈夫と安心させるように撫でてやる涼太郎はすぐに戦闘体制に入り目を先ほどの優しさではなく冷血のような人の目に変えた
私は涼太郎さんが走り出した瞬間に逆方向へ走り出し夜の街を走り何も結っていない髪を風に靡かせ周囲はこちらに釘付けだった
後ろで刀と刀がぶつかり合う音が聞こえすぐにでも後ろを振り返りたかった。でも涼太郎さんは大丈夫と言っていた。そして私を信じてくれている。なら私も涼太郎さんを信じなきゃ
陽菜乃は走り別店の前にいた用心棒にぶつかり
「月雪陽菜乃です!あのその銃貸してくださいませんか?お礼は…身体で」
花魁との夜なんて希少価値がかなり高い。だから唆す事も容易にできる。用心棒がよろめいたところ腰に引っかかっていた銃を盗みさらに前へと走り出した
路地裏を突っ切って人目につかないところに隠れて涼太郎が来るまでずっと震えながら銃を持ち構えていた
「陽菜乃、待たせたね」
「涼太郎さん!怪我は…」
「大丈夫、相手が少し多かったんやな腕を切りつけられたぐらいや」
少し暗いせいで見えてなかったが右腕を見るとぽたぽたと小雨のような血が地面に垂れていた
それは浅い傷とは言えなかった、深い深い傷なのに涼太郎は弱音を吐かず陽菜乃を安心させようとしてくれた
その途端に息を殺し涼太郎の後ろに潜んでいた者が姿を現し両手で刀を振り翳した
その者は陽菜乃の身請け人だった。涼太郎もそれに気付いたが右腕は負傷して上手く刀を振るえない、陽菜乃はカチッと銃を構え撃った
運よくその弾は命中し左肩を貫きその者は倒れ込んでしまい、涼太郎は陽菜乃に駆け寄った
「陽菜乃大丈夫か⁉︎」
陽菜乃は自分が人を殺してしまったかもしれないという衝動でかなり精神的にきたのか過呼吸になり上手く息が吸えていなかった
「私、私人を殺したんですか…?」
「あれは人じゃない、だから陽菜乃は人殺しなんてもんじゃないよ」
陽菜乃の呼吸は段々と安定したものの精神的に苦痛なのか頭を抱えていた
涼太郎は陽菜乃に寄り添いながら自分の落ち度だと頭を悩ませながらも最優先のことは逃げ切ること、だから陽菜乃を抱きながら走ることにしようやく遠くの町はずれにある村に着くことが出来た
「陽菜乃ここなら大丈夫や」
「涼太郎さん私..人を殺したのに生きてて良いんですか..」
「言っとくやけど俺江戸で有名なのは有名なんやけど良い意味でじゃないんだ。人とか何人殺したか分かんねぇ」
1人じゃない死ぬんだったら自分も一緒だと言った涼太郎は陽菜乃が最初に涼太郎をあの花と一緒に見たような格好いい姿に見えた
「涼太郎さん私、私なんでここまでしてくれるのか全然分からないんです。でも、好きなんです私があなたをその気持ちだけ..」
続きは言わなかった、言えなかったの方が近いだろうか涼太郎に抱きしめられ上手く話せなかった。強く強く抱きしめられたから
「陽菜乃俺も..愛してるずっと」
それからいつの間にか寝ており起きたらどこか分からない部屋で目を覚ました。隣には涼太郎が居てそれだけで安心した陽菜乃は涼太郎に寄り添い涼太郎の胸に頭を寄せた
「一応起きとるんやけど笑笑」
「えっ!見なかったことにしてください!」
すぐに離れようとしたが涼太郎に行手を拒まれぎゅっときつく抱きしめられ陽菜乃の肩に顔を埋めて息をした
「陽菜乃どこにも行かんで、俺のそばに居て」
「当たり前です。涼太郎さんが居なかったら私死んじゃいます」
その後、指名手配として名をあげた2人だったが誰も彼らを見つけること、跡を探す事も生きているのか死んでいるのかも分からない
つまりお互いが共依存しあいながらも恋をした彼らがどうなったかは誰も知らないことだ
______終わり