コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「わたしの為にアック様がーー!」
「わらわのおかげだもん!!」
宿に戻るとスキュラが出迎えてくれた。
しかし未だにルティとフィーサの口喧嘩が続いている。彼女たちの様子を見てスキュラは呆れた表情を見せているが、機嫌は良さそう。
「お帰りなさいませ、アックさま。フフッ、随分と賑やかなお戻りですのね」
「これは……」
落ち着いた雰囲気を見せるスキュラは余裕そうに見える。
「街の中も慌ただしくなっていますけれど。そこの小娘たちと関係がおありなのでしょう?」
「何か知っているのか?」
「ええ。近く、剣闘場が開催されるようですわ」
あの馬車の集団はやはり――
「なるほど、それでか」
「どうでもいいことですけれど、貴族がわき立っているのではないかと」
貴族たちの動きに気を付けるべきなのか。
それにしても、
「小娘が今さら色気づくなんて、邪魔なの、邪魔なだけなの!!」
「わたしはフィーサよりも一番最初っから、アック様にお会いしているんですからね! 呼び方を変えただけであって、深い意味なんて~……え、えへへ」
「あ~うざい、うざ~い!!」
ルティとフィーサはラクルの港の時から仲が悪い。そんな彼女たちを気にせず、スキュラが話の続きを催促してきた。
「それで、アックさま。あなたさまは剣闘場に出られるのですか?」
「そのつもりは無かったんだけど、何というかルティが……」
「ふぅん? 大体分かりますけれど、アグエスタの騎士団なんかがドワーフの娘ごときを気にするなんておかしな話ですわね」
「――というわけなんだ。ベッツって名は、確か酒場の男の名前と同じはず」
真面目に聞いてくるスキュラに対し、おれは事の成り行きを話した。
「ふふ、あたしの出番ですわね?」
「――! 出来るならぜひ頼むよ」
スキュラはすぐに理解してくれた。
「あなたさまはあたくしたちに頭を下げて頼んではいけませんわ! 小娘たちと同様ですけれど、お傍にいたいお方……それがアックさまですわ。頼むのではなく、命令を出して頂きませんと」
「それじゃあ、スキュラ。貴族騎士アルビン・ベッツに近づき、動向を探れ」
「……承知しましたわ」
未だルティとフィーサの口論は収まりそうにない。そんな中、スキュラには引き続き貴族騎士のことを調べてもらうことにした。
「ゼーハーゼーハ……」
「くどい! 小娘、くどい!」
本当に仲が悪いな。しかし問題は山積み。剣闘場、ルティの処遇。
そして――
「そろそろいい加減にし――」
「イスティさま!! 小娘はどうでもいいけど、イスティさまには時間が無いの! 分かってる?」
時間が無いというのは剣の実力のことだ。
「いや、それは」
「戦うにしたって、わらわを軽くすればいいってわけじゃないんだよ? ちゃんとスキル上げしないと駄目なの!」
拳と魔法だけなら結構自信がある。剣のスキルは今までまともに握ってきていないツケがここで訪れてしまった。いくらフィーサ自身が強くても、おれ自身を鍛えなければ意味が無いからな。
「あぁ、アックさま。以前から気になっていましたけれど、どうしてお使いにならないのです?」
「何を……?」
「剣を扱ったことが無いのは見れば分かりますわ。ですけれど、そうであれば魔石ガチャで何とかすればよろしいのでは?」
ルティと似たことを言うものだ。
「ガチャで何とかするってどういう意味で? 強くするものを出すっていうのは、それはどうなのかなと」
「フフフッ! 同じではありません? あなたさまはそこのドワーフ娘、宝剣の小娘……それら全てでお強くなられておりますわ」
拳にしても身体的な強化にしてもルティの恩恵を受けている。フィーサも外で助けられた。
「むむ……」
「全て頼ることをどうして嫌っているのか存じませんけれど、それがあなたの良さなのですわ。使えるスキルを存分にお使いになられても、あたくしたちは咎めませんわ」
そう言われればそうか。ルティやフィーサは、ガチャを引いて出た子たち。おれがガチャで別の何かを出しても、口出しなんて出来るはずもないか。そうじゃないスキュラは違う見方が出来る。
今のままでは間違いなくフィーサ主導で動くだけ。彼女の動きだけでは、Aランク騎士に太刀打ち出来ないどころかおれの成長もままならない。
「――よし」
【Uレア ソードスキル習得の書 Lv.–】
【Uレア スキル上げスキル Lv.0】
「何だか不思議なものが出ましたね~!」
「…………うーん」
新しく加えた魔石には一切変化が見られない。そう思っていたが、その内の一つだけスキル専用と書かれた魔石が見えた。魔石の色は今まで変化がなく普通の黒っぽい石だった。しかし今回変わった魔石はアメジストの色に変わっている。
「やりましたのね、アックさま! 魔石も変化させたということは、スキルも成長をしているということなのでは? それもスキル向けの魔石ということでしたら使い勝手がよろしいのでは」
「そ、そういうことなのか」
どんな属性なのかは不明だ。しかし、今回出たスキルに対し魔石の色が変化した。今後はこの色のある魔石でスキル向けのアイテムが出るかもしれない。ソードスキルを習得出来るアイテムのようだけど、実戦でどう使えるのか。
とにかくこれらを使って剣闘場に参加出来るはず。