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東京地検特捜部の動きは速かった。
信也の議員宿舎、議員会館の事務所、地元の事務所、陽奈のマンションに捜査が入った。
有罪判決が下るのは確実だ。
信也は所属政党を離党して、議員辞職した。
『衆議院議員 伊崎信也』の政治家生命は、完全に断たれた。
マスコミは誤った報道を謝罪して、信也を攻撃し、紗姫を擁護した。
誹謗中傷していた人達は、掌を返して紗姫を称賛した。
紗姫は目的を達成したが、もう一つ問題が残っている。
義弟と後妻に乗っ取られた実家の件だ。
紗姫が「父が入院している病院を調べて下さい」と頼んだとき、
伊織は「御実家のことは御安心を」と言った。
珊瑚は「ヨッチャンがいるもんね」と言った。
紗姫は ヨッチャンが〈誰か〉判らなかったが……、
紗姫とヨッチャンが〈再会〉したのは、政治資金パーティーの日だ。
紗姫は、ホテルの一室で着物に着替えた。
その着付けをしたのが、錦藤家の住込み家政婦、北原 佳乃だ。
佳乃は72歳。紗姫の祖父の代から、錦藤家の家政婦を務めている。
先祖は錦藤家の奥女中で、江戸藩邸に勤めていた。
錦藤家の家紋を配った 五つ紋の色留袖は、紗姫の母、真姫の形見だ。
それをホテルまで運んで着付けてくれた。
義弟の部屋から〈偽造写真〉を持ち出したのも、佳乃だった。
このとき紗姫は、錦藤家が多くの人から守られていることを知った。
着付けをしながら、佳乃は話した。
「この市には、今でも錦藤家を藩主と慕う者が大勢います」
ホテルの支配人も、父が入院中の病院の院長も、先祖代々この地に住んでいる。
そこで働く人々も、錦藤家に感謝して暮らしているという。
「御安心を。後妻や義弟の味方はいません。二人はもうすぐ御家を出ます」
佳乃の予言通りになった。
父は、体調不良で検査入院をしたあと「しばらく静養する」と言った。
後妻と義弟は重病と思って喜んだが、病気では無かった。
病室からリモートワークで仕事を続け、業務を進めていた。
その間に信頼できる部下を使って、後妻と義弟の行動を調査した。
家では佳乃に監視を頼んだ。
悪行が目に余るようになったからだ。
義弟は、気に入らない社員を左遷し、イエスマンで周囲を固めた。
セクハラ、パワハラ、モラハラ放題だった。
後妻は不倫をしていた。
父が入院すると、羽目を外して不倫相手と旅行に出かけた。
すべての証拠を揃えて、弁護士を立て、父は後妻と離婚した。
義弟とも縁を切った。
二人は錦藤家から追い出され、行方知れずになった。
後妻と義弟が消えた錦藤家に、紗姫が帰る日が来た。
「もう二度と、ここに戻ってはなりません」
櫻花が、潜窟の入口を板で塞いだ。
「でも、たまには遊びに来てね」
ピースする珊瑚の頭を、伊織がポカリと叩いた。