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ご本人様方とは一切関係ありません
犯罪組織と戦うメンバーさんの、戦闘パロ のお話です
水視点
「……かは…っ…!」
止まっていた息が動き出すような感覚。
咳き込む自分の声に脳が覚醒する。
「!?!?」
バッと飛び起きたけれど、今自分に何が起きているのかが分からない。
何があったんだっけ…。
必死で考えを巡らせるけれど、そう簡単にうまくはいかなかった。
…そう、確か…いふくんがないちゃんの遺体を担いでいて…。
僕は彼がどこかに行こうとするのを止めようとしていた。
ないちゃんを取り戻したくて。
でもあの時……
ゆっくりと思い出しながら、首筋にそっと触れる。
そう、いふくんが、手にしていた注射器を僕に刺した…はずだった。
考えがまとまらないまま、ぶるりと身震いする。
…寒っ。異様に低い室内の温度。
思わず両手で自分の体を抱きしめるようにして、辺りを見回した。
薄暗い部屋。冷気に満ちた空間。
冷たく固い床に身を起こしながら、ぐるりと視線を巡らせる。
やがてその先に僕は一つの影を見つけて目を見開いた。
「…ないちゃん!」
少し離れたところにあるベッドに横たえられた、細い体。
胸の下で両手を組まされた姿は洒落にならなかったけれど、僕は思わずそちらに駆け寄った。
ピンク色の髪の下で閉じられた瞼。
涙が込み上げてきそうな、ツンとした感覚が胸を襲う。
謝りたかったのに謝れなかった悔しさが募っていくのが分かった。
こらえきれなくなり、視界がぶわと涙で滲んでくる。
「ごめんね、ないちゃん…」
もうどうしたって届かない言葉を呟く。
ぽとりと溢れた涙がないちゃんの頬を濡らした。
そうしてもう一度彼の顔を見て……僕は次の瞬間、思わず瞠目する。
ないちゃんの瞼の下で、眼球がゆるりと動いた気がしたから。
「…ない…ちゃん…?」
信じられない思いで小さく呼びかける。
震えそうなその声と共に手を伸ばした。
ないちゃんの頬に…そして首筋に触れる。
部屋の冷たすぎる空気で冷え切ってはいるけれど、感じる。……体温を。
「ないちゃん!?」
思わずガクガクとその肩を揺さぶった。
どうして…!? 驚いて言葉はうまく声にはならない。
ただ、ないちゃんから静かな生気を感じられるということだけが確かな事実だった。
「……ん…」
いつもより掠れた、低めの声が漏れる。
長くて細い指先がピクリと動いた。
そしてゆっくりと開かれる瞳。
ピンク色の宝石のような目は、ぼんやりと天井を見上げた後でゆるりと視線を巡らせた。
そうしてやがて、僕の顔の前で止まる。
「ほとけ…っち…?」
小さく消え入りそうな声に、僕はたまらずベッドの上に体を乗り上げた。
その身を横たえたままのないちゃんに、覆い被さるように抱きつく。
「ないちゃん! …ごめん…ごめんね…」
ぎゅっとその肩を抱きしめると、ピンクの髪が頬に触れた。
この部屋の冷気に長い間さらされていたせいなのか、その髪も固く軋んでいる。
「…ひどいこと言って…ごめんね」
何度謝っても謝り足りない。
言葉を尽くしたいけれど気持ちの全てを声にはできなかった。
代わりにないちゃんを抱きしめる手に更に力をこめる。
まだ状況を把握しきれていない彼は、少し戸惑ったように間をあけた後、やがて僕の肩をポンポンと叩いた。
大丈夫だとでも言うように。
そしてその僕の服が思ったより冷たかったからか、ないちゃんは「ここ、何? 寒くない?」とまだ小さく細い声でそう言った。
「冷凍室…かな」
体を起こしながら、僕はそう答える。
右手で涙を拭いながら、もう片方の手をないちゃんに差し伸べた。
引っ張り起こしてあげると「…冷凍室?」と難しそうな顔をして辺りを見回す。
恐らくないちゃんは、自分が死んでいた自覚はないんだろう。
あのときのないちゃんと同じように僕も死んでいたのだとしたら…冷凍室に入れられているのも理解できる気がする。
「頭を整理したいんだけど…それより先にここを出ないと」
言いながら、僕はベッドから立ち上がろうとしたないちゃんの姿に上から下まで視線を這わせた。
ないちゃんは家にいたせいか、ラフなスウェットに素足だった。このままじゃ凍死しちゃう。
「…鍵かかってんね」
ぺたぺたと素足で音を立てながら歩き回り、ないちゃんは部屋の入り口ドアを確認した。
外側からしか鍵の開け閉めができないタイプだ。
重厚なドアは少し揺らしたくらいではビクともしない。
「ないちゃん、何人ならいける?」
入り口近くにあったメタル製の棚に手を伸ばしながら、僕はそう尋ねる。
「…3…いや、せめて2人にしてほしいかなぁ」
首を竦めて応じながら、ないちゃんも同じ棚に手をかけた。
互いに顔を見合わせる。
「せーの!」
僕の掛け声で、同時に手に力をこめた。
メタルラックを引き寄せて勢いよく倒す。
ガターン!!と大きな音を立てて倒れたラック。
それを無遠慮に踏みつけるようにして乗り越え、ドアの前に戻る。
扉の内側で息を潜め、僕はないちゃんと大きく頷き合った。
音を聞きつけてやってきた敵はたった2人だった。
きっと僕たちのことを死んでいると思いこみ、大した警戒をしていないのだろう。
冷凍室から音がしたことで一応様子を見にきたけれど、死体が動き出すとは思っていなかったようだ。
油断していた2人をあっという間に倒したけれど、更なる応援が来る気配は今のところない。
気絶させた敵2人の持ち物を漁り、使えそうな武器を取り上げる。
ナイフがないのが心許ないけれどこの際贅沢は言っていられない。
銃を2丁奪い、ないちゃんと1丁ずつ手にした。
「ないちゃん、服ももらった方が良くない?」
薄いスウェット一枚のないちゃんにそう声をかけると、「うーん…だよねぇ」と苦笑いを漏らす。
嫌そうに顔を歪めながらも、ないちゃんは2人のうち背格好が似ている方からジャケットと靴を拝借した。
決していい匂いはしなさそうだけど仕方がない。
使えそうなものを全て取り上げて、意識のない2人を丁寧に縛りあげる。
冷凍室に監禁するのはかわいそうな気もしたけれど、情けは無用だと思い直した。
2人を置いてその部屋の扉を再び堅く閉める。
外に出た瞬間の空気は生暖かく感じて、ホッと息を漏らすには十分だ。
冷凍室のすぐ隣の部屋を覗くと、そこは小さめの倉庫になっていた。
ないちゃんに手招きされてそこに入る。
とりあえず寒さを脱して作戦を練りたいというのが共通の気持ちだろう。
大きめの木箱を椅子代わりにして座り、ないちゃんは拝借してきた弾丸を銃に丁寧に詰め始めた。
「情報整理しよう、ほとけっち」
シリンダーを振り出してそこに弾を装填する。
それを眺めながら、僕の方もさっき敵から奪ってきた小さめのタブレットを開いた。
結構いい物を使っていて、最新機種らしいそれに小さく口笛を鳴らす。
ホーム画面に浮き出るロックは指紋認証だったため、さっき冷凍室に閉じ込める前に持ち主の指先を借りて解除してきた。
我ながら賢明な判断だったと思う。
画面が開いているうちにと、ロック方法を変更しておく。
簡単な4桁のパスコードを入力する方法に替え、僕は一息ついたところでないちゃんに声を返した。
「ないちゃんは何があったの?」
タブレットに自分がいつも使っているアプリをダウンロードしながら、彼の隣に座る。
「俺は…家に帰ってリビングでまろと話してて…」
その時のことを思い出しているのだろう。
少し目線を泳がせるようにしながら、ないちゃんは言う。
「…正直、何があったか分かんない。話してる途中でまろが、『裏切り者は自分だ』って言って…」
…『分かんない』? 僕と同じように注射器を刺されたわけではなくて…?
「ないちゃん、その時2人はどういう位置関係だったの? 話してるとき」
首を傾げながら言う僕に、ないちゃんは「え!?」と何故か大きな声を上げた。
それから言葉に詰まりながら大きく瞬きを繰り返す。
「いや、それは…」
「早く。多分重要だからそれ」
何を渋っているのかよく分からない。
急かすように言葉を重ねると、渋々といったようにこちらに手を伸ばした。
僕の手を取って、自分の方に引き寄せる。
そして僕の右手を、ぎゅっと抱きしめるように自分の背中に回させた。
「こ、こう…?」
耳元でないちゃんの低い声がする。
そんな彼の恥ずかしがっているようないたたまれないような素振りは全部無視して、「ちょっとごめん」とそのうなじの辺りに指を這わせた。
いふくんの右手がないちゃんの背に回され、左手が自由だったんだとしたら…。
「あった」
首の斜め後ろの辺りに注射針の跡。
それを見つけて、僕はようやくないちゃんから手を離した。
これなら確かに、ないちゃんからしたら何をされたのか分からくても仕方ない。
「ないちゃん、順番に説明するね」
ほんのり顔を赤くしたないちゃんをそのままに、僕は再びタブレットの操作に戻る。
「病院に行った後、しばらくしてから僕だけ家に戻ったんだ。その時、玄関でないちゃんを抱えたいふくんに会った」
「……」
インストールしたばかりのアプリを、慣れた手つきで開く。
「その時、ないちゃんは確実に死んでたよ」
告げた瞬間、ないちゃんがゴクリと息を飲むのが分かった。
「僕はその後、いふくんと戦って…でも敵わなくて、注射器を刺された。ないちゃんの首の後ろにも同じような跡があるよ」
トントンと首を指さして言う。
そんな僕にないちゃんは困惑したような目を向けた。
「ほとけっちも、俺みたいに死んだってこと…?」
「多分」
「…でも今、俺たち生きてるけど…」
「一旦死んで生き返る薬なんてあるのかなぁ?」
「数時間仮死状態にする…とかなら、腕利きの調合師ならできる…のかも?」
よく分からないけど、と付け足してないちゃんは複雑そうに眉を寄せる。
「でね、これ見てほしいんだけど」
話を改めて、僕はタブレットの画面をないちゃんに向けた。
「僕、何かあったときのために普段から発信器付きの小型盗聴器を持ち歩いてたのね。受信器はあにきに預けてある。それと、このアプリでも見れるようになってる」
「…まさか…」
「急な奇襲とかに備えてただけで、まさか仲間に盗聴器つけることになるとは思ってなかったけどね」
あのとき咄嗟に、いふくんの服の裏側に仕込んだ。
今頃、位置情報と彼側の音声はあにきに筒抜けなはずだ。
「ここ地下なのかなぁ。通信状況がよくないみたいで音声はほとんど拾えない。でも位置情報はこれ」
画面上の地図を見せ、赤く点滅している部分を指差す。
「分かる? いふくんが今いるこの場所、昔物流センターだったとこ」
「うん」
「で、重なるように青く点滅してるのがこのタブレットの位置情報」
つまり…いふくんは僕たちと同じ場所にいる。
しかもこの物流センター、僕たちの家からはそれなりの距離がある。
でも幸いなことに組織のあの病院からはそれほど遠くない。
「つまり、あにきからの助けが期待できる?」
「うん、多分」
さすがに頭の良いないちゃんには、ほとんど説明らしい説明がいらなかった。
アプリの1番右側にある音声マークをもう一度試しに押してみる。
だけど聞こえてくるのは雑音ばかりで、はっきりと音は拾えない。
…やっぱりここじゃ無理か。
それでも位置情報が拾えただけでも良かったと思おう。
そう思って、連中から奪ったリュックにタブレットをしまおうとしたときだった。
『……が……だ…』
途切れがちの雑音に混じって、ほんの少しだけ人の声がした気がした。
自信はないけど…でも、いふくんの声ではないように聞こえた。
だとすると、いふくんはこの「誰か」と手を組んで、僕やないちゃんを殺したということだろうか。
「……」
ゆっくりとないちゃんを振り返る。
そこには目を見開いて立ち尽くす彼の姿があった。
茫然としているわけではなくて…ただ静かに感情を押し殺しているようにも見える。
「…ないちゃん…今の声、聞き覚えある?」
試しに尋ねてみる。
問われた彼はハッと我に返ったように顔を上げ、取り繕うように笑みを浮かべた。
無理をしているような表情で頷き返す。
「俺が…ほとけっちのパソコンからデータ引き抜いた人」
「前のチームのリーダー?」
「そう」
それで、ないちゃんの元恋人の?
そう聞こうかと思ったけれどやめておいた。
ないちゃんの表情からそんな甘い関係には見えなかったし、あの噂はデマなんだろうと分かったからだ。
それに何より、今の彼にはその質問は意味がない。
だってないちゃんが今想ってるのは、この人じゃないことは明らかだ。
だから、代わりに全然別の事を口にした。
「ないちゃんは…5発くらい拳で殴っても許されると思うよ、いふくんのこと」
そう言った僕を、彼は目を丸くして見つめ返す。
「僕も1発は殴る権利あると思うから、僕の分もないちゃんにあげる。6発殴っておいでよ」
「…ふふ」
眉を下げて、ないちゃんはおかしそうに笑みを漏らした。
それから覚悟を決めたように表情を改めて、もう一度目線を上げる。
「ほとけっち、ここから二手に分かれようか」
準備運動をするかのように靴の踵を鳴らしながらそう言った。
「『あの人』がまろと仲間だとは考えにくい。だとしたら…まろが脅されてるとしか思えない」
「そうなの…?」
「まろを部下として扱えるほどの器じゃないよあの人は。かと言って実はまろが裏ボスで、あの人やそれ以外の人間を仕切ってるとはもっと思えない」
…確かに。
それに仮にいふくんがその人たちと手を組んでいるとしたら、僕たちを殺したフリをして生かしている意味も分からなくなる。
どうして殺したと偽装しなければいけなかったのか……それはきっと、敵の目を欺きたかったからだ。
「まろを迎えに行って、ここを連中ごと爆破したい」
ないちゃんの言葉に迷いはなかった。
怒りを抑えているんだろう。
体の前で握った拳を押さえつけるように、もう片方の手に力をこめているのが分かる。
「爆破…できるの?」
「俺に爆弾のノウハウ教えてくれたのあの人なんだよ。あの人がいるなら、ここには材料が揃ってるはず」
だから、とないちゃんは力強く付け足す。
「各所に爆弾を仕掛けてから、まろのところに向かう。ほとけっちにはその間の時間稼ぎをしてほしい」
「いいね。システムダウンでもさせてやろうかな。セキュリティ関係ぶっ飛んで焦るんじゃない?」
「うまく時間が稼げればあにきからの応援も期待できるかもしれない」
「そうだね」
タブレットをしまったリュックを背負い直し、頷いた僕は思い出したように言葉を継いだ。
「ないちゃん、覚えてる? 僕に最初に諜報スキル教えてくれたのいふくんだって話」
「え? うん」
敵から取り上げた銃を腰に装備しながら、僕はニッと笑った。
「じゃあ行きますか。お互いに、ムカつく師匠をぶっ飛ばしに」
グローブをはめた手をないちゃんに差し出す。
それを一瞥した後、彼はピンクの髪を揺らしながら「ん」と微かに笑って握り返した。
…ごめんね、と、もう一度言いたかった言葉は飲み込んだ。
多分ないちゃんはそんなこと望んでいないから。
だから、全く別の言葉を声に乗せることにした。
「ないちゃん」
先に部屋を出ようと前を歩き始めた彼に、後ろから呼びかける。
ゆっくりと振り返ったないちゃんは首を傾けて僕を見つめ返した。
言葉を続ける前に、僕は小さく深呼吸をする。
「こんなことになっても…まだ、いふくんのことが好き?」
思いがけない問いだったんだろう。
ないちゃんは大きな目を更に瞠った。
だけど、それも一瞬のことだった。
ピンク色の目を細め、ないちゃんは言葉なくそれはそれは綺麗に微笑んでみせた。
コメント
2件
初コメ失礼します 2人頭良すぎるやろッッッッ((((((( 続きめっちゃ楽しみです!
まってぇぇ"えぇ" 水さんと桃さんが生きてたんですね…!? えぇ…、嬉しすぎます!! こっから反撃開始ということでしょうか、? 最後の桃さんの表情的にまだ好きということでしょうでしょうか…? うわぁ〜、ドキドキしますぅ!! 次回も楽しみです!!!