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ベツレヘム(アカネ…アヴィニア人のリストには載っていない名前…でもじゃあなんで…『魔法』を…?)

アカネ「あ、あの…大丈夫ですか?」

ベツレヘム「あ、あぁ…大丈夫です。助けてくれてありがとうございます。本当に…」

アカネ君が助けてくれなかったら、確実に私は死んでいた。命の恩人にどうお礼をすればいいのだろうか。

アカネ「…!その足…!」

ベツレヘム「少し怪我をしてしまって…」

アカネ「母さんなら怪我を診れるかもしれません。乗ってください。」

アカネ君はそう言うと、私をおんぶしようとする体勢に入る。

ベツレヘム「ええ!?さ、さささ流石に無理ですよ!重たいとか以前にサイズ差が大きすぎます!」

アカネ「大丈夫ですよ。犬獣人はとっても力持ちなんです!」

そう言ってアカネ君は軽々と私を持ち上げる。

ベツレヘム「えええぇぇぇ!?」

アカネ君は、小さなリュックしか背負っていないような速度で歩いて母親の元に、私を連れて行ってくれた。あの時、走れただろうにそうしなかったのは私の状態を気づかってのことだった。激しく動けば私が痛い思いをすると、考えていたんだろう。本当に賢い子だった。

アカネ君の母親、マリアさんは私を見て少し驚いたがすぐにテキパキと慣れているのか治療の準備を始めた。気になって治療中にどうして、そんなに慣れているのか聞いた。すると意外な答えが飛んできた。

マリア「うちの子ね、やんちゃで外に帰ってくる度に怪我をして帰ってくるのよ。だから慣れてるのよ。本人は怪我があることに気付いてもないんだけどね、ふふっ。」

そう言って笑った彼女の顔は素敵だった。意外にもアカネ君はやんちゃならしい。あの礼儀正しい姿からは想像もつかなかった。

マリア「アカネのこと、やんちゃとは程遠いなと思ったでしょ?」

ベツレヘム「あ、えっと…」

マリア「…私にもっと力があれば、自由気ままにのびのび育ててあげられるのに。私はね、母親失格なの。自分の子供に無理を強いてしまっている。」

そう言ったマリアさんの顔はどこか寂しげで、放っておけばぽんっと消えてしまいそうだった。まずい、暗い話をさせてしまった。すぐに話題を変えないと。そう思った私はもうひとつの質問をする。

ベツレヘム「そ、そういえば…アカネ君…はどうしてあんなに力持ちなんですか?私を軽々と持ち上げて…」

私の2つ目の質問を聞いたマリアさんは目をぱちくりとさせた。まるで何故そんな当たり前のことを聞くのだろうという顔だった。

マリア「ただの個人差よ。…ここだけの話、筋肉が邪魔して身長が伸びないのよ。」

思わず遊んでいるアカネ君の方を見た。あの服の下にはムキムキの体があるのだろうか。


私はしばらく、マリアさん達の家に泊めてもらえることになった。その原因は足にあった。思っていた以上に状態が酷く、骨折をしていた。こんな状態で1人で出歩くのは自殺行為だということは私ももちろん理解している。それこそ、私は動物に近い暮らしをしていたからこそ、他の人より理解している。だけれども、私はマリアさん達の誘いを断った。私には仲間がいる。連絡を取れば迎えに来てもらうことだって出来る。時間はかかるだろうが。それに家の中を見渡せば、あまり生活が裕福でないことも分かった。そんな所に居座り続けるなんて失礼にも程がある。しかし思っていた以上に2人の押しが強く私は根負けして、ここに泊めてもらうことになった。そもそも私は団の規約で仲間のことを説明することが出来ないのもあった。結構いまでもルールは多い。危険と隣り合わせな分お硬めなのだ。


マリア「それじゃあ行ってくるわね。」

マリアさんはいつも朝早くに、仕事にでて夜遅くに帰ってきた。旦那さんはいなかった。聞くつもりもなかった。それがどれだけ人を傷つけることか知ってるから。マリアさんがお仕事に行っている間、アカネ君はよく、私を連れだし魔法を見せてくれた。

アカネ「ベツさんを助けた時に使ったのは、火の魔法なんだ!かっこいいでしょ?」

普段礼儀正しいアカネ君が唯一無邪気でいられる時間だったと思う。アカネ君はしっぽをちぎれんばかりに振り、目を輝かせる。

ベツレヘム「うん、かっこいい。とっても。」

嘘でもなんでもなく、心の底から思った。私を助けてくれた炎なんだ。かっこ悪いなんて、思うはずがない。

ベツレヘム「…アカネ君は、アヴィニア人なんですか?」

思わず、聞いてみる。…もしそうなら団の規約による保護義務が発生する。しかし、帰ってきた答えは的外れな答えだった。

アカネ「アヴィニア…人…?お伽噺の種族ですよね、確かにこの力は不思議ですが、僕はただの獣人ですよ」

ベツレヘム「そう…今の質問は忘れてください」

アカネ「?」

ベツレヘム「…魔法を使って大丈夫なんですか?」

アカネ「大丈夫というのは…」

ベツレヘム「えっと…その…」

アカネ「もしかして悪魔のことですか?」

ベツレヘム「…」

アカネ「…実際、僕はいまも悪魔として迫害されています。この時も。悪魔しか使えないはずの魔法が使える。だから、こんな場所にきて、遊んでる。ベツさんに魔法を見せるのは魔法を既に見られているのと、魔法を好きでいてくれるから。」

私は黙ってアカネ君の話を聞く。

アカネ「使い方次第なんだと僕は思っています。炎と一緒で味方にも敵にもなる。」

ベツレヘム「そっか。私のことを信用してくれてありがとうございます。」

アカネ君は環境のせいで、見た目より大人にならざるを得なかった。環境が彼を、不気味に変えてしまっていた。

ベツレヘム(悪魔とアヴィニア人か…。)

アカネ「そろそろ帰りましょう」

ベツレヘム「あ、はい。」


帰り道。

村人達の隠す気などさらさらないひそひそ声が聞こえた。…あるいは獣人の聴力は人間より優れているのを知らないのか。

村人A「…見てよ、あれ。」

村人B「またうろついてるわよ、あの化け物。」

村人C「さっさと出てって欲しいよ。」

村人A「何言ってんの!悪魔には死んでもらわなきゃ…」

村人B「母親は何してるのかしら…。自分で産んだ悪魔くらい、自分で殺してほしいわ…。」

村人C「あの魔女には無理でしょ。ほんと迷惑な話だわ…。」

思わず、村人達の方を見ようとするとアカネ君が制止する。

ベツレヘム「でも…!」

アカネ君は黙って横に首を振る。

アカネ「そのお気持ちだけで十分です。」

アカネ君と会話をしていると、アカネ君に石がぶつかり頭から血が出る。周りを見渡すと、どうやら村の子供が石を投げたようだった。それを村の大人達が絶賛する。物心ついた時からヒトとしの悪魔と接してきた私には異様な光景で、気持ち悪くて、吐き気がした。

アカネ「…やっぱりこの道から帰るのは、良くなかったですね…。僕のことなら心配しないでください。?ベツさん?」

思わず口を手で抑える。

ベツレヘム「…大丈夫です。」

アカネ「…急いで帰りましょうか。」



マリアさん達の家に帰ってきて、やっと気持ちが落ち着いてきた。

アカネ「…大丈夫ですか?」

ベツレヘム「…うん。」

アカネ「ごめんなさい、あの道を通るべきでは無かったですね…。」

ベツレヘム「そういえば…いつもは森から行くのに、なんで今日は街道から…」

アカネ「実は…街の外の方に悪魔がでたらしくて…」

ベツレヘム「えっ…!?」

アカネ「あの時の悪魔は確実に殺しました。なので別個体かと…。だから街道を選んだんです。あっ、午前森から行ってたのは、そのことを忘れてたからです。」

ベツレヘム「えっ

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