10話目もよろしくお願いします!
今回はいよいよ、、、(♡)
スタートヽ(*^ω^*)ノ
『……今日は泊まっていいって言ったの、レトさんだよ?』
キヨが囁いたその声は、熱を帯びていて──鼓膜から、心臓までじわじわと痺れていく。
レトルトは目を逸らすこともできず、ただじっと、目の前の男を見つめていた。
キヨの瞳は暗い部屋の中でもはっきりと光っていて、その奥に映っているのは、自分だけ。
(だめだ……こんな言い方、ずるい……)
頬が熱くてたまらなかった。
自分でもわかるくらいに耳まで真っ赤になっていて、なのに息をするたびキヨの体温が近くて、逃げ道なんてない。
それでも、逃げたくなかった。
むしろ……。
「……俺、さ……」
レトルトが、ぽつりと落とすように言った。
「……キヨくんが……欲しい」
言った瞬間、自分の顔がどれだけ赤くなったのか、もうわからなかった。
けれどそれ以上に──目の前のキヨが、固まったように瞬きを忘れていた。
『……今、なんて……?』
掠れる声。
それが嬉しくて、レトルトはほんの少しだけ、目を細めた。
「キヨくんが、欲しいって……言ったの」
キヨの喉が、ごくりと鳴る。
数秒の沈黙のあと──
『……レトさん、責任とってよね』
ぎゅう、と強く抱きしめられた。
腕の中の体温が熱くて、安心して、苦しくて、それでも心の底から心地よかった。
『もう俺、止められないかもしれない』
「うん……止めなくていい」
そう言ったレトルトの声は、震えていたけれど、迷いはなかった。
──夜の帳が、2人を静かに包みこんでいった。
『レトさん….おいで…』
そう言ったかと思えば、キヨはひょいっと軽々とレトルトの身体を抱き上げた。
「え、ちょ、ちょっとキヨくん!? な、なんで──」
『だって、俺の大事な人なんだもん。…ちゃんと俺の手で運ばせてよ』
「だ、大事とか言うな……っていうか、お姫様抱っことかっ……!」
レトルトは慌てて身をよじるけど、キヨの腕の中は思った以上に安定していて、逃げ場なんてない。
それに、近い。
視線を上げればすぐそこにキヨの顔。
真っ直ぐで、照れもなくて、まるでレトルトしか見えてないみたいな目。
「……もー……ほんと、ずるいよキヨくん」
レトルトが諦めたようにぽそっと呟いた頃には、もう寝室の前に立っていた。
『観念した?レトさん』
「……うん、観念した」
その返事に、キヨはくすっと笑う。
『じゃあ今夜は、俺のものになってね』
小さく頷くレトルトを、キヨはそっとベッドに降ろした。
優しく布団の上に置かれる感覚が、思ったよりも心臓を揺らして──レトルトはきゅっと目を閉じる。
けれど──すぐに、温もりが覆いかぶさってきた。
『レトさん、怖くない?』
「……ううん。キヨくんだから、大丈夫」
そう言ってレトルトが開いた瞳は、もう濡れてなんていなくて、まっすぐにキヨを見つめていた。
言葉なんて、もう要らなかった。
重なる唇。絡まる指。
夜は静かに──けれど確かに、2人の距離をゼロにしていった。
部屋の灯りが落ちて、外の街灯がカーテン越しにぼんやりと差し込んでいた。
キヨの手がそっとレトルトの頬に触れる。
その手はいつもみたいにおどけたものじゃなくて、どこまでも真剣で、どこまでも優しかった。
『レトさん……ほんとに、いいの?』
問いかける声は、いつもより少しだけ震えていた。
レトルトはうっすらと目を伏せたまま、静かに頷く。
その仕草だけで、全部伝わってしまう気がした。
『俺、優しくするから。レトさんが怖くないように』
キヨの唇が、そっとレトルトの額に触れる。
続いて、頬、耳元、そして唇──一つひとつを確かめるように重ねられていく。
レトルトの指がキヨの服の裾をぎゅっと掴んだ。
「……キヨくんだけだよ、俺……」
『うん。俺も。レトさんだけ、だよ』
キヨがレトルトの髪に指を滑らせるたび、レトルトの体が小さく震える。
だけどその震えはもう、戸惑いや不安じゃなかった。
ただ、これまで感じたことのない想いに、心が追いついていないだけ。
カーテンの隙間から差す光に、レトルトの濡れた髪がきらめいて見えた。
その姿が、どうしようもなく綺麗で、キヨは思わず目を細める。
『レトさん……愛してる』
ふいに告げられたその言葉に、レトルトの目が大きく見開かれる。
だけど次の瞬間には、瞼がそっと閉じられて──
「……俺も、キヨくん愛してるよ…」
たった一言が、重くて温かくて。
2人の体温が、音もなく重なっていった。
指先が、唇が、肌が、心が。
ひとつずつ確かめ合うように触れながら、
“好き”の形を、静かに、深く、夜の中で育てていった。
外は雨が降っているようで、時折窓を叩く音が聞こえる。
だけど、部屋の中はぬくもりに満ちていて──
その夜、レトルトはキヨの腕の中で眠った。
初めて、誰かにすべてを預けるように。
つづく