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守は英子との待ち合わせ場所に向かう途中、これからの計画を頭の中でおさらいしていた。
無事に話が進むよう、何度もシミュレーションしてみるが、
ふと目に留まった駅前のニュースビジョンがその思考を遮った。
画面にはキャスターが映っており、
「目撃者によりますと、真っ白い大きな光が一瞬だけ夜空を照らし、
その後すぐに消えてしまったとのことです」と真剣な口調で話している。
守は足を止め、その言葉に耳を傾けた。
「白い光…?」と呟きながら、昨日のことが頭をよぎる。
ゲームを終えた後、夢の中であの光景を見た。
自分が真っ白な光に包まれ、全身に電気が走るような感覚がした。
まるで体が引き裂かれそうな激痛に襲われたが、次の瞬間には目が覚めていた。
「あれは…ただの夢だよな」と自分に言い聞かせる。しかし、
その不気味な感覚は、夢とは思えないほどリアルだった。
ニュースビジョンを見上げたまま、守は心の奥に芽生えた不安を振り払うように、
ゆっくりとその場を後にした。
約束の時間より30分も早く、守は待ち合わせ場所に到着していた。
胸の奥で鼓動が早鐘のように鳴る。期待と不安が入り混じったせいか、喉がひどく渇いていた。
「とにかく落ち着け……。」
守はスマホを取り出し、今日のプランを再確認する。
まずはおしゃれなカフェでお話を楽しむ。その後は、カップルに人気のある公園を散歩して――。
そんなふうに頭の中で段取りを組み立てていると、後ろから聞き慣れた声がした。
「守さん?」
ハッとして振り向くと、そこには天城がいた。
しかも、隣には可愛らしい女性が天城の腕に軽く寄り添っている。
「あ、天城くん……。」
思わぬ再会に守の胸がドキリと高鳴る。あの公園での一件以来の顔合わせだ。
「守さん、もしかして面接ですか?」
「め、面接?」
守は自分の服装を見下ろした。今日のために奮発して買った新しいスーツ。
確かに、そう言われると仕事用に見えなくもない。
「い、いや……。」
曖昧に答えた守が戸惑っていると、天城の隣の女性がくすりと笑った。
「デートなんじゃない?」
天城が目を丸くする。
「デート!なるほど、そうだったんですね。すみません、気が付かなくて。」
「い、いや……別にいいんだ。」守は口ではそう言いながらも、心の中ではこう叫んでいた。
(早くどこかへ行ってくれ!頼む!)
しかし、天城は興味津々といった様子で話を続ける。
「守さん、彼女できたんですか?」
「ま、まだ彼女ってわけじゃ……ないけど。」
「へぇ~。」天城の声には少し驚きが混じる。「紗良一筋だと思ってたのに、意外ですね。」
守の心臓が跳ね上がる。
(ドキッ!紗良ちゃん……。確かに好きだ、大好きだ。でも、現実的じゃないだろう!)
そんな守の動揺をよそに、天城の隣の女性が彼の腕に寄りかかりながら、にっこり微笑んだ。
「私たちもデートなんです。これから一緒にダブルデートしませんか?」
「だ、ダブル!?」
守は目を丸くして叫んだ。喉の渇きが一気に悪化した気がした――。
守は完全に戸惑っていた。ダブルデートだと!?
こっちは今日が初めて会うんだぞ。そんな人に
「一緒にダブルデートしませんか?」なんて言えるわけがない。
天城「ダブルデートって、邪魔しちゃ悪いよ」
舞「いいじゃん。楽しそうだし。あ、私、英二君の後輩で舞って言います!」
守は心の中で叫んだ。(天城くん、君は空気が読めるイケメンだ。このまま去ってくれ!頼む!)
守は必死に天城に目で「お願いだから引いてくれ」と合図を送る。
しかし、舞はそれを無視したように笑顔で言った。
舞「ほら、守さんも『いてほしい』って目をしてますよね?」
守(ち、違う!なんでそう見えるんだ!?このお姉さん、何を勘違いしてる!?)
舞はさらに続ける。
舞「それに、私たちがいたほうがリラックスして話せるんじゃないですか?」
守(いらない!いらないよ!!余計なお世話だ!)
天城はそんな守の必死な目配せを見て、クスッと笑った。
天城「まあまあ、もう行きますね。舞、ほら行こう。」
そう言って舞の手を引いて去ろうとする。
守は心の中でガッツポーズを取った。(さすが天城くん!最高だ!)