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まず、ミノリは右手の親指の先端を噛み、自分の血を『巨大ゴムパチンコ』に変えると、床に置いた。

すると床一面が足場を固定するためなのかは、よく分からないが、とにかくミノリの血液で覆われた。

名前をつけるなら『ブラッドカーペット』だな。

そんなことを考えているうちにミノリは左手の親指の先端を噛み、『ブラッドアーマー』を作ると、それを身に纏った。(ナ○ツアンドマ○ックにあんなのがあったような……まあいいか)

その後、ミノリはそれを懸命に支えていた。

血液の使い過ぎなんじゃないか? と俺は少し心配したが、今はミノリに構っていられなかったため、他のことに集中することにした。

次にマナミがそれのゴムを限界まで引っ張り、支えた。

するとシオリがマナミに触れて『グラビティコントロール』を発動した。

これでギリギリまでその体勢を維持できるらしい。

続いてツキネがコユリの翼に水のようなものを纏わせ、強化した。

それは物質に触れると強化または修復後に蒸発するらしい。

その証拠にコユリの翼はいつもより輝いて見えた。コユリは翼を広げられるだけ広げて、準備をした。

よし、これで大体の準備は整ったな。それじゃあ、仕上げといくか!

チエミは、四枚の翼をパタパタと動かすと、薄い緑色の渦を作り、俺を包み込んだ。

どうやら俺に風の力を付与させているらしい。(チエミ曰く……これで、ある程度は風が俺の言うことを聞いてくれるらしい)

そして最後に俺は再びあの力を解放した。


「『トリニティバインドチェイン』!!」


目の前に大罪の力を持つ者はいないが、一応、身体能力を向上させておく。

なにせ、この世界に来て初めてアパートの敷地外に出るのだから……。

これで準備完了。あとは全員の息を合わせるだけだ。

俺たちは『巨大ゴムパチンコ』の前に集合すると、組み体操のピラミッドを作るよりも迅速かつ丁寧に発射準備に取りかかった。

俺とコユリは『巨大ゴムパチンコ』の発射場所まで移動すると、コユリは俺を背後から抱きしめ、俺は十本の鎖を翼に絡(から)まらないよう注意しながら、コユリの体に巻き付けた。

その間、ツキネはシオリの後ろに、チエミはツキネの後ろに行って固定に協力した。

そして、ついにその時がやってきた……。

今は『ブラッディースリングショット』を予定より早く作れたことに喜んでいる場合ではない。

一刻も早く巨大な『亀型モンスター』と友好関係を築かなければ、旅はおろか生活することさえままならないのだから……。

俺は自分の頬を二回叩き、覚悟を決めると、ミノリに合図をした。


「ミノリ! 頼む!!」


ミノリは俺の声を聞くと気持ちの良い大きな声でこう答えた。


「ええ! 任せといて! それじゃあ、みんな行くわよ!」


それに反応して、俺以外の全員が応答した。『おー!』と……。


「それじゃあ、カウントダウン開始!」


俺がそう言うと俺以外の全員がカウントダウンを始めた。


『十、九、八、七、六、五、四、三、二、一!!』


「いっけー! ナオトーーーーーーーー!」


ミノリ(吸血鬼)がそう言った直後、俺以外の全員が「ゼロ!」と言った。

それと同時に閉まっていたはずの玄関の扉が開いた。

おそらくチエミ(体長十五センチほどの妖精)がやったのだろう。

そんなことを考えている間に俺とコユリは勢いよく外に飛び出していた。そう、まるで、弾丸のように。

ジェットコースターよりも速く、空を飛ぶどの鳥たちより速く飛んでいるように感じた。

え? 俺の『ジェットアクセル』より速いのかって? うーん、あの時はミノリを助けるのに必死だったから、よく覚えてないな。

だが、自力で空を飛べない人類がこれほど心地よい風を感じることはあまりないだろう。

まあ、スピードはかなりあるから、ジェットコースターとかが苦手な人にはあまりオススメしないがな。

俺が周囲を見渡しながら巨大な『亀型モンスター』を探しているとコユリが話しかけてきた。


「マスター、どうですか? 空を飛んだ感想は?」


「ああ! すっごくいいぞ! 最高だ!!」


俺はそう言いながら親指を立てた。

俺を抱えているためコユリからは見えなかっただろうが、それを聞いたコユリはこう言った。


「そうですか。それは良かったです。ですが、今はそんなことよりも一刻も早く『亀型モンスター』を探し出し、友好関係を築くことが先決です。でないと、あのアホ吸血鬼が心配してやってきてしまいますからね」


「ははは、そうだな、早く見つけて交渉しよう。というか、ミノリってあんなことできたんだな」


「それは何のことですか?」


「いや、自分の血で色々作れたんだな……って」


「あー、あの力ですか。吸血鬼型は全員できるらしいですよ?」


「全員って、他にもいるのか?」


「正確な人数までは分かりません。ですが、私が育成所にいた頃に聞いた話だと、少なくとも五人、多くて十人ほどの同型がいるようです」


「じゃあ、ミノリに限らず、お前たち全員に同型が最低あと四人いるってことか?」


「はい、その通りです。しかし、獣人型のマナミさんとシオリさんがそろってマスターのところにいるのを見た時は、さすがの私も少々驚きましたけどね……」


「ん? それはどういう意味だ? とても仲のいい姉妹にしか見えなかったぞ?」


コユリはなぜか俺の問いに答えるのをためらった。

何か訊いてはいけないことを訊いてしまったのだろうか?

だが、俺の中の好奇心はコユリが返事をしてくれるのを期待していた。

しばらくコユリは何も言わなかったが、その事が気になって仕方がない俺の心境を察してくれたのか全てではないが話してくれた。


「マスター。もし自分が完全な存在になるために自分と同じ存在、つまり同型の生命を奪わなければならないとしたら、どうしますか?」


俺はコユリ(本物の天使)が言ったその言葉からマナミ(茶髪ショートの獣人)とシオリ(白髪ロングの獣人)が本当の姉妹であるかのような……あの光景を疑ってしまった。

それと同時に二人が苦渋の決断をしたのだということに気づいた。

二人は自分が完全体になるよりもお互いの共存を選んだのだ。

知らなかった……いや、俺は知ろうとしなかった。

最初にミノリ(吸血鬼)が届いたあの日も、みんなと出会った時も俺は知ろうとしなかった。

じゃあ、俺はこれからどうすればいい? ……って、そんなこと……とっくに分かりきってるよな。

俺は歯を食いしばりながら、コユリにこう告げた。


「コユリ、とっとと終わらせて帰るぞ。それから『はじまりのまち』に行く道中でいいからみんなを集めてくれ。話がしたい」


最初からコユリの狙いはこれだったのだと思った。俺がその事も含めて自分たちのことを知ってもいい頃だと感じていたから、コユリはこのタイミングで俺にそのきっかけを与えたのだろう。

コユリの見た目は本物の天使なのに考えていることは悪魔っぽいことがわかった。

コユリは、その言葉を聞くと、その言葉が聞きたかったと言わんばかりに。


「分かりました。では後ほど、お会いしましょう、マスター」


ただそれだけを言うと、俺を巨大な『亀型モンスター』の頭上に落とした。(手を離した瞬間にコユリに巻きつけていた鎖を解いた)

はぁ……でもまずは、こいつをどうにかしないといけないんだよな……。

俺はそう思いながらも、早く戻らなければ! ということを考え始めた。

『作戦名 巨大亀の怒りを静めよう!』は現時刻をもって最終段階に移行する! こっから先は俺のターンだ!

その時、いいえ! ナオト! 私たちのターンよ! というサナエ(『ダークネスパラダイス』の主)の声が聞こえた気がした……。(ス〇ブラの主人公とヒロインのセリフじゃねえか)

ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜

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