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カテリナです。シャーリィ達が無事に帰ってきました。多少問題が発生したことは便りにより知っていましたが、まさか特大の爆弾を持ち帰るとは思いませんでした。

いや、戦車も驚きましたがそれ以外の手土産です。

「ふぉぉぉぉ……」

頭を抱えて踞る愛娘を見ながら私はため息を吐くのでした。

「頭を抱えたいのは私の方ですよ、シャーリィ。戦車は構いませんが、よりによって勇者を……」

「あんな孤島では寂しいです。それなら『大樹』の下に埋葬しようかと思いまして」

「貴女、ただでさえ『聖光教会』に狙われている立場にあるのですよ?それを、勇者の遺骸まで持ち帰るなんて。火に油を注ぐような真似は止めなさい」

命を狙われる可能性を増やしてどうするのか。

「ご安心ください、シスター。この件は私達しか知りません。具体的には、私達姉妹、ルイ、ベル、アスカ、エレノアさんだけです。海賊衆には漂流者として処理しています」

「他に伝えるつもりは?」

「幹部にだけ伝えるつもりです。具体的には、セレスティン、ロウ、マクベスさん、エーリカですね」

「おや、エレノアの弟の名前がありませんが?」

「ロメオ君に関しては、様子見です。エレノアさんが教えたとしても、罪に問うつもりはありませんけど」

「正しい判断です。暗黒街では信用ほど難しく貴重なものはありません」

なにせ、信じた奴が馬鹿を見る世界ですからね。騙し騙される。それが当たり前なんですから。

「それで、シスター。やはり埋葬する前に祝福を受けるべきだと思うんです」

「千年前とは形式が違うと思いますよ?信仰にも違いはある」

「それはそうですが、祈りは捧げるべきだと考えています。そして私に頼れる修道者なんて、シスターしか居ません」

「……分かりましたよ、呪われても困りますから。ただし、内密に行います。遺体を聖堂に運びなさい。そして周辺には厳重な警戒を」

「もちろんです。この事が知られて得をすることはありません」

「……部外者も居ますが?」

さっきから長椅子に腰掛けてるサリアが気になりますが。

「私の事は気にしなくて良いわ。口外するつもりはないし、そこまで人間社会のいざこざに興味はないから。まして、シャーリィを売るような真似をすると思う?」

「思わないからこそ、貴女の狙いを計れないのですよ」

「魔女に秘密は付き物よ。大丈夫、完全に知的好奇心だから」

「余計に質が悪い」

とは言え、この魔女の気紛れは今に始まったことでもありません。なにより、『海狼の牙』との関係悪化は避けなければいけない。

……はぁ、頭が痛い。

「シスター、頭痛ですか?」

「ええ、いつもの奴ですよ」

シャーリィを拾ったその日から、頭痛薬が手離せなくなったのは秘密です。

「貴女も大変ね、シスター」

「部外者面していますが、いつか貴女も巻き込まれますからね?」

「私は大歓迎よ。だって、見ていて飽きないんだもの」

くそっ、余裕があるな。 

「とにかく、今すぐと言うわけにはいきません。遺体は安置しますので、先ずは旅の疲れを癒しなさい。色々あったのでしょう?」

「はい。これからドルマンさんのところに寄って休むつもりです」

~ドワーフの工房『鉄の穴』~

こうして話すのは始めてだな。ドワーフのドルマンだ。

お嬢ちゃんは無事に『ライデン社』との取引を済ませたみたいだ。手土産として戦車を持ち帰ってきたのは驚いたが、既に概念は『帝国の未来』を読ませて貰ったから知っておる。

後はコイツを調査研究してより良い物を作り出すだけだ。予算や材料を気にしなくて良い今の環境は、ドワーフとして天国のようなものだ。事実、ワシ以外の同胞達も日々目を輝かせて仕事に打ち込んでおる。

これだけの環境を用意してくれたのだ。それ相応の逸品を作り出さねばドワーフの名が廃る。

ワシらにとって痛恨だったのは、『エルダス・ファミリー』との抗争で試作した機関銃三挺の内二挺が故障して部隊を危機に晒してしまったことだ。

新入りのエーリカ嬢ちゃんやマクベス達が身体を張って事なきを得たが、ワシらの作品が原因であることは一目瞭然。

ワシはドワーフ衆を代表して厳罰を求めたが、お嬢ちゃんは首を縦に振ることはなかった。むしろ今以上に良い環境を整えようとしてくれている。ワシらの要望を最大限に配慮してくれるその姿勢は、本当に十七の小娘なのか疑わしいくらいだ。

だが、だからと言って安穏とするつもりはない。お嬢ちゃんが責めぬのならば、より精進してより良い物を生み出すだけだ。

さて、そんなワシだが戦車の調査から少し離れて休んでおった。そこにお嬢ちゃんが訪ねてきたんだ。

「ドルマンさん、今お時間はありますか?」

「無論だ、お嬢ちゃんのためならいくらでも時間を作ろう。ささ、入りなさい」

ワシは工房の休憩室にお嬢ちゃんを招いて、椅子を勧めてコーヒーを淹れた。

コーヒーを淹れたカップを受け取ったお嬢ちゃんは首をかしげた。

「この黒い飲み物は?」

「ん?ああ、お嬢ちゃんは知らんか。豆を挽いた飲み物、コーヒーだ。苦味はあるが、それが癖になるぞ」

「なるほど、ではいただきます」

お嬢ちゃんは豪快にぐいっといった。

「……っ……こっ、これはっ……」

おやおや、珍しい。お嬢ちゃんが顔をしかめておるわ。

「苦かったか?その苦味が良いのだが……お嬢ちゃんにはまだ早かったか」

「むっ……これくらい飲めますよ!」

おっと、イジワルをしてみたらムキになって豪快に飲み干したわ。なんとも子供っぽくて愛らしいではないか。

「ううぅ、苦いぃ……」

「この苦味が癖になるんだ。まあ、ミルクや砂糖なんかを入れたら飲み易くなるだろうがな」

どちらも高級品だ。貴族様しか手は出せんよな。

「なんだか悔しいので、砂糖の量産を急ぎます」

うむ、農園では砂糖の試作を始めたとかロウが言ってたな。こう見えてワシも甘いものは好きだ。それが自由に食べられるようになるなら有り難いがな。

「それで、今回はどうした?戦車については、直ぐには無理だぞ?最低でも一ヶ月は貰いたい」

まだ初日だからな。これから構造や使われている鋼材、機関等を念入りに調査するのだからな。

もちろん使えなくなっては意味がないので、分解も慎重に行うつもりだ。

「戦車については、じっくり調べてください。それとは別件で、こちらをドルマンさんに調べてほしいのです」

お嬢ちゃんは古びた剣の柄を差し出した。

「なんだ、魔法剣が壊れたか?……っ!?こいつは!?」

ワシはそれを受け取り驚愕した。そして、そんなワシを見てお嬢ちゃんは笑みを深めるのだった。

……とんでもないものを持ち帰ったものだよ、お嬢ちゃん。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

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