遅れましたが、誕生日💛おめでとうございます!
今日は仁人の誕生日。
……そして、いつものことながら太智は完全に忘れていた。
リハーサルスタジオに入った瞬間、
「仁人、誕生日おめでとう!」
「じんちゃんおめでと〜!」
とメンバー全員が口々に言い出して、太智は一拍遅れて現実を理解する。
(あ、今日……)
「お、おめでとう!」
慌てて声を揃えると、仁人は一瞬だけこちらを見て、ふっと微笑った。
勇斗はさりげなく高そうな香水、
柔太朗は似合いそうな帽子、
舜太は手紙付きのアクセサリーケース。
――みんな、ちゃんと用意してる。
太智はというと、手ぶらだった。
帰り道。
太智は駅前のアクセサリーショップに滑り込むように入った。
目に留まったのは、シンプルなシルバーのブレスレット。
主張しすぎないのに、どこか品があって、仁人に似ていた。しかもペアになってる。
「これ、ください」
夜。
仁人の部屋の前で、太智は少しだけ深呼吸する。
「……遅くなってごめん。これ」
差し出された小さな箱を、仁人はきょとんとした顔で受け取った。
蓋を開けると、中のブレスレットを見て目を見開く。
「……太智から?」
「うん。遅れたけど、誕生日プレゼント」
仁人はすぐにそれを手首につけて、嬉しそうに笑った。
「ありがとう。大事にする」
その表情に、太智は胸がきゅっとなる。
でも同時に、ふと不安がよぎった。
(……意味、知ってるのかな)
ブレスレット。
それは“束縛”とか、“ずっと一緒”なんて意味を持つアクセサリー。
仁人は太智の視線に気づいたのか、首を傾げる。
「なに?どうした?」
「いや……そのさ、」
太智が言い淀んでいると、仁人はふっと意地悪に笑った。
「意味くらい、知ってるけど?」
「……え」
「忘れてたくせに、こんなの選ぶんだって思っただけ」
そう言って、仁人は太智の手首を掴み、自分のブレスレットと並べる。
「離す気、ないってことでしょ?」
耳まで赤くなった太智に、仁人は満足そうに微笑った。
「じゃあ責任取って。これ、外れなくなるまで一緒にいよう」
「……最初から、そのつもりだから」
遅刻した誕生日プレゼントは、
想像以上に重くて、甘い“約束”になった。
コメント
1件
のんさんの作品大好きです!!