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「平気」
「うん。それは良かった」
母さんも時々、涙声になるけど明るく話した。
「歩が元気なのは……。でも、治るんですよね? 先生」
「そんなにも、悲観的だと治った時が大変では?」
村田先生はテープレコーダーのような声で冗談を言って笑う。
窓の外から花の匂いが生暖かい風で、ぼくの鼻に届いた。
窓の外には雨雲が覆っているけど、村田診療所の立派な庭には、小さな花を咲かせた花壇が幾つもあった。
ぼくはそれを見て不思議に思ったことがある。
ここは、御三増町の外れにあって、ぼくの家から遠く離れていた。
裏の畑からもかなり離れているし、犯人はどこから来るのだろう?
目の前の村田先生とあの人形のような声の男性。
御三増町に本当にこんな異様な人たちがいるのだろうか?
「歩君。これから君は大きな病院へ行くんだ。すぐに良くなるからね。今は無理をせず、走ったりしないで静かにしているんだよ」
村田先生はぼくに向かって言った。テープレコーダーのような声は優しかった。
こんな善良そうな人が殺人犯たちの仲間?
考えられないけど、ぼくの空想には起こり得るんだ。それに紛れもない現実だとた思う。
大原先生から負った傷がなくなったり。ぼくの周辺で人々がおかしくなったり、裏の畑でのバラバラにされても生きている子供たち。
一体、この事件はなんなのだろう?
「村田先生。そろそろ今日の患者さんたちが来ますよ」
どこかいそいそとしているが、優しい看護婦の声に、村田先生は項垂れ、真夜中に聞いた悲しいテープレコーダーのような声を発した。
「先生?」
看護婦の声に村田先生は、ぼくの目を見て。
「この町には……。不死があるんだ……」
ぼくは無邪気に頷いて、凍りついた。
不死……?
死なない人たち……?
昔、おじいちゃんが言っていたんだ。不死は魂に毒だって。
午前の診療時間には多くの人たちが病院へあつまっていた。強い太陽光と生暖かい風を受けながら、汗ばんだ母さんの手に握られて、父さんの白い車に乗った。
昔、父さんはこの車は四輪駆動なんだと自慢していた。
その車でドライブをした記憶が真新しい。