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私にとって彼女は特別な人間だった。
私が彼女と出会ったのは五年前。彼女が十歳の頃の話だ。その日、私はいつも通り孤児たちを連れて『白笛』と呼ばれる遺跡に向かっていた。
しかし運悪く悪天候に見舞われてしまい、私たちは雨宿りする羽目になったのだ。
そこで偶然にも一人ぼっちの女の子を見つけた。それが彼女だった。
当時の私はもうすでに六本もの白笛を集めていて、『赫の獣』の調査のために訪れた街では英雄扱いされていた。だからなのか、私は無意識のうちに彼女を自分の家へ連れて帰ったのだ。
そうしてしばらく一緒に暮らすうちに、彼女と仲良くなった。それから数年かけて私は彼女に様々なことを教わりながら共に過ごしてきた。時には喧嘩することもあったけど、今となってはとても良い思い出になっている。
そんな私の宝物のような日々が終わったのはほんの数カ月前のことだ。
ある日を境に、彼女は豹変してしまった。今まで見せたことのないような邪悪な笑みを浮かべるようになったのだ。そして、ついに人を殺してしまった。
当然、最初は信じられなかった。でも……彼女が殺した死体を見て理解せざるを得なかった。
あれだけ愛らしかった笑顔の裏に隠れていた狂気を目の当たりにして、背筋が凍った。
それでもなんとか説得しようと試みるも無駄に終わり、私は逃げるようにその場を去った。
だけど彼女は追ってきた。執拗に追いかけてきて、最後には私を殺そうとした。
殺されるわけにはいかないと思った。ここで死んでしまえば、これまで積み重ねたものが全て失われてしまう。それだけは何としても避けたかった。
必死に逃げ続け、どうにかこうにか地上まで逃げ延びることができた。
「ふぅ……とりあえずここまで来れば大丈夫かな?」
後ろを振り返りながらそう呟くと、俺は胸元を押さえて呼吸を整える。心臓はまだバクバクしているが、それでもさっきまでの息苦しさが嘘みたいだった。
しばらくその場で立ち止まっていると、不意に俺を呼ぶ声が聞こえてくる。その方向に視線を向けると、そこには心配そうな表情を浮かべたアイセアがいた。
「あー……だいじょぶか? リクっち」
「なんとかね……」
大きく深呼吸をして酸素を取り込むと、乱れた髪や服を整えてから改めて周囲を見回す。すると周囲には俺達と同じように地面に座り込んだり立ち上がって周囲を見回したりしている人達がいる事に気がついた。
「……ここは?」
『恐らく先程までいた場所とは別のダンジョンの中だと思うよ』
「別の? という事は、あの機械仕掛けの部屋は別の場所に移動するための装置だったのか」
『そうみたいだね。ボク達はどうやら強制的に移動させられたようだ』
周囲に他の人間がいた事で少しだけ安心して肩の力を抜いていると、突然背後にいた中年の男が慌てたような声を出した。
「おい! お前らもさっきの変な光に巻き込まれたのか?」
そう声をかけてきたのは、赤い髪の少年だった。
歳は同じくらいだろうか? いや、身長的に少し下かもしれない……。
でもなんとなくだけど、雰囲気的には年上のような気がした。
「あぁ……うん」
僕はとりあえず肯定しておくことにした。
だってこんなわけのわからない場所で、初めて会った人だしね。
それに――。
(あれ? これってチャンスじゃないか?)
なんて思ったのだ。
その反面、戦闘においては非常に冷静沈着で、どんな窮地でも動じることなく状況を打破していく。特に危機察知能力に優れ、相手の動きや視線を読むことに秀でているため、危険回避能力は群を抜いている。
性格的には、物事に対してあまり深く考え込まず、楽観的で楽天家なところがあり、持ち前の明るさで周囲を和ませることもしばしば。しかし一方で、自分の弱さや未熟さを認めようとしない頑固さと意地っ張りな一面を持ち、そのため無理をしがちでもある。
アビスと出会ってからは彼女に振り回されることが多かったが、次第に彼女を理解しようと努めるようになり、良好な関係を築いていく。最初はただ単に面白そうだと思って行動を共にしていたが、やがて彼女を守ることが自分の使命だと自覚するようになる。それはレグも同様だったようで、二人にとってお互いの存在は大きなものになっていたようだ。
アビスが死んでからは、塞ぎ込むことが多くなったものの、それでも諦めずに前へ進もうとする姿勢は崩さなかった。また、レグとの約束を果たすべく、いつか彼女が再び戻ってくると信じて日々を過ごしていく。