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宇津Q
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猫さん
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第86話、読み終えました……。晶子がカンナの“違う種類の頭の良さ”に気づいていく過程、すごくじんわりきました。「親友になってよかった」って急に出た言葉、本心だったんだろうな。カンナの「ギャハハ」で返すところも含めて、ふたりの距離感がちゃんと温かくて好きです📘🤍
それから晶子の受験勉強のラストスパートが始まった。夏休みはほぼ全部塾通いと大手予備校の模擬試験の日程で埋め尽くされ、どこかへ遊びに出かけるなどという余裕はかけらもなくなった。
翌年一月中旬の、当時は「センター試験」と呼ばれていた国立大学の共通試験でそれなりの点数を取る必要があったため、晶子がカンナと会うのは塾が終わった後、夜間定時制の授業が終わるカンナと一緒に帰宅する時だけになった。
カンナは四年間の定時制期間の三年次になっていたが、その頃は授業の内容が理解できずに四苦八苦する事はなくなっていた。以前の様に晶子に、勉強の事で助けてくれと言わなくなったカンナに、晶子はある夜訊いてみた。
「カンナ、最近はあたしに勉強教えてくれって言わなくなったよね。成績よくなったの?」
カンナはあっけらかんとした口調で答えた。
「三年目からだと商業の専門の授業が多くなるんだ。あたいにはそっちの方が向いてんだろな」
「へえ。例えばどんな授業?」
「ええと、簿記、財務会計、マーケティングとか、そんなやつだな」
「ええ! 商業科ってそんな難しい事、授業でやるの?」
カンナは意外そうな表情になって晶子に顔を向けて言った。
「別に難しくはないぜ。実際の金勘定とか商売の基本教わるわけだから、数学とか理科とか、古典だの世界の歴史だの、そんなのよりずっと身近な内容だろ?」
晶子は一瞬ポカンとして言った。
「高校でお金の扱い方とか授業で習うのか。あたしの学校ではそんな事聞いた事もないなあ」
「そりゃ晶子の高校は名門進学校だろ。あたいらみたいな頭の悪いやつが行く高校とは違うさ」
晶子はふと考えた。自分とカンナ、頭がいいのはどっちなんだろう? そう考えた。確かに学校のテストの点数は昔から晶子の方が断然上だった。
だからカンナは友達になった小学生の頃からいつも、晶子は頭がいい、自分は頭が悪いと言っていた。だが、頭がいい悪いとは、そもそもどういう事なんだろうか? 晶子は駅までの道を歩きながらまた考えた。
カンナは確かに学校のテストの点数は昔から晶子をいつもヒヤヒヤさせるレベルだったが、競馬の一口馬主の時といい、英語もまだ全然しゃべれないうちに身振り手振りで浅草の外国人観光客に道案内をするとか、そういう事に関しては、晶子が想像も出来ない行動を平気でやってのけてきた。
カンナは晶子が考えるのとは全く違う意味、全く違う基準で「頭がいい」のではないだろうか? その「頭の良さ」が世間一般でそうとは認識されていないだけで。
晶子はそう考えてみたが、その疑問を明確に言葉に出来なかった。代わりに晶子の口から出たのは、自分でも思いがけない言葉だった。
「あたし、カンナと親友になってよかったな」
カンナは驚いて振り返って晶子の顔を見て、「ギャハハ」と豪快な笑い声を上げて言った。
「何だよ、急に。おだてても何も出ねえぞ。バイトの給料日前で金ないからな」
「あはは、ううん、何でもない」
カンナには、まだ晶子が知らない面があるのだろうか? そう思いながら晶子はカンナと肩を並べて歩き続けた。