テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

あ、でもお前、アイツのこと連れ戻してこい。連帯責任だ」

次の瞬間、僕の身体は海に投げ出されていた。なんでそうなるんだ…!視界に空が見える頃、僕は海面に沈んでいた。


「ったく、海軍長さまは相変わらず、とんでもないな!」

「僕は、君のせいで生け贄にされたけどね」

「何言ってるんだよ!お前もちゃんとした遅刻班じゃないか」

僕らが海面から引き上げられることには、夕方になっていた。

「なんで、朝から素潜りなんてさせられるんだよ。サメに食われたらどうするつもりなんだか」

身体を布に包みながら、部屋の中で温まる。隣のネイという青年は、愚痴ばかり零している。確かに、この感じは友人なんだよな。心の中で感じるこの違和感の正体は、一体何なのか。今の僕には、分からなかった。

「二人とも、お疲れ様」

部屋に入ってきたのは、フェレンさんだった。両手に魚料理を抱えていた。

「遅刻常習犯のおかげで、美味しい晩御飯が食べられそうだ」

「あ、それは俺らが素潜りでとった魚じゃないっすか!」

僕らの素潜りは、遅刻の罰と食料調達も加味したものだった。僕達は、何度かこの経験があるのでもう分かっていた。けれど、彼は毎度ご丁寧にリアクションをとる。

「相変わらず演技がわざとらしいのな、ネクトは」

僕は、そう言って笑った。

「お前、何言ってんだよ」

横から鋭く制した声に、僕はハッとした。それは、掟を破ってしまった時の、血の気がひく感じと似ていた。

「ちょっと、こっちも素潜りのせいで頭やられちまったみたい」

笑って誤魔化すような青年の異質な笑い声が響く。僕は、何を焦ったのだろう。何をそんなに隠そうとしているのだろう。そんな疑問の中、フェレンさんは黙って、僕を見つめていた。

僕も、その場は笑って誤魔化すことにした。僕は、何を隠すんだ…?冷静な自分が、答えを探すように煽り立てるが、僕はこの違和感を深海へ帰した。

食後、夜の任務を背負い、フェレンさんは部屋を出ていった。

残されたネイと僕は、なぜか沈黙のまま時間を埋めるしか無かった。そもそも、朝の騒ぎなんて何一つ起こらなかったような静けさだ。いつの間にか彼は、横になっていた。夜風が窓から流れてくる。

「ネクト」と呼んだ自分の記憶をさらっていくような風だった。初めから何も無かったかのように、優しく。

僕が彼の背に、語りかけることはなかった。

この作品はいかがでしたか?

16

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚