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「迎えに来るならどんな奴か見てやろうかな」
「止めてよ。ってか、さっさと帰りなさいよね」
咲結が男の事で浮かれているのが面白くない亮介は、何とかして自分に目を向けて貰おうと絡むも相手にされないどころか邪険にされる。
「玉井、悪い事は言わないから、ここは帰った方がいいよ」
見兼ねた優茉が亮介にそう声を掛けると、
「あ! さっくんから着いたって連絡が来た!! それじゃあ優茉、私行くね!」
朔太郎から連絡の来た咲結は嬉しそうに声を上げると、優茉にだけ挨拶をして慌ただしく教室を出て行った。
「……なあ寿、『さっくん』ってどんな奴なんだよ?」
「うーん、まあ一言で言うなら、超優良物件な男の人よ」
「はあ?」
「玉井、アンタが咲結を好きな事は分かるんだけど、残念ながらアンタは咲結のタイプじゃないのよ。だから悪い事は言わない、もう諦めた方がいいよ」
いつも咲結と共に居る優茉だからこそ、亮介が咲結を好きな気持ちも、亮介の事が全く眼中に無い咲結の気持ちも分かるだけに、これ以上亮介が傷つく前に何とかして諦めさせたいと助言するのだけれど、
「アイツが俺の事意識して無いのは自覚してる。けどさ、分かってても好きな気持ちは止められねーんだよな」
「玉井……」
「それに、諦めるにしても俺は絶対自分の気持ちを伝えなきゃ納得出来ねぇからさ。もう少しだけ頑張ってみるつもり。じゃあな」
自分が納得するまでは頑張りたいという亮介の想いが少しでも報われるといいのにと思った優茉は、それ以上何も言う事はなかった。
「さっくん!」
「おう、待たせたな」
「あの、わざわざごめんね?」
「いいって。ほら、早く乗れよ」
「う、うん……」
朔太郎の元へやって来た咲結は迎えに来てくれた事が嬉しい反面、周りにちらほら学校の生徒たちが居る中で男の人の車に乗り込む事に少々戸惑いを感じていた。
(傍から見たら、彼氏の車に乗り込んだって思うかな?)
けれど、乗り込んでしまえば戸惑いは優越感へと変わり、そんなしょうもない事を考える余裕すら生まれていた。
「何処か行きたいとこあるか?」
「えっと……特には……」
「ねぇのか? 別に遠慮する事ねぇんだぞ? 今日は時間あるから、行けるとこなら連れて行ってやれるぜ」
そう言われると咲結は迷ってしまう。
「それじゃあ、どこかゆっくりお話出来る所がいいな」
「話? んーそうだな……それじゃあ俺のとっておきの場所に連れてってやるよ」
「とっておきの場所? 私に、教えてくれるの?」
「ああ、特別な」
「嬉しい!」
「そうか? それじゃあ行くか」
朔太郎の『とっておきの場所』へ連れて行って貰える事になった咲結は自分が朔太郎にとって特別な存在になれた気がして嬉しくなり、目的地に着くのが楽しみで仕方なかった。