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🩷side



見上げるような大きな観覧車のふもとに着くと、阿部ちゃんは眩しそうに目を細めてそのてっぺんを見つめた。



日は大分西に傾き、夕暮れ時のオレンジ色の空をバックに観覧車はゆっくりと動いている。

阿部ちゃんは、係の人と何か話して、その係の人が頷いた。



💚佐久間、乗って


🩷阿部ちゃんは?


💚俺も後から行くから


🩷?



俺はよくわからなかったけど、先にゴンドラに乗り込んだ。

すると阿部ちゃんが乗り込まないまま、扉が閉められてしまった。

扉が閉まる間際に阿部ちゃんが言った。



💚佐久間、楽しかったよ



🩷えっ、どうして…?



阿部ちゃんは笑顔で手を振っている。

俺はゴンドラの窓に張り付いて、どんどん小さくなっていく阿部ちゃんをなんとも言えない気持ちで見つめていた。



❤️佐久間


🩷えっ



振り返ると、無人だと思っていたゴンドラの中に、涼太が座っていた。

手には持ちきれないくらいの大輪の薔薇の花束を抱えている。



🩷なんで?


❤️佐久間にちゃんと告白しに来た


🩷阿部ちゃんは?


❤️佐久間。阿部は、本当は翔太と付き合ってる


🩷うそ!!!!!



俺は涼太を信じられないような気持ちで見た。

そんな馬鹿な。

だって、たった今まで、阿部ちゃんは俺を見てくれて、それで優しくしてくれて…



❤️佐久間も薄々わかってたんじゃないか?阿部と翔太のこと


🩷……ちがう


❤️佐久間


🩷やだ、やだよ…阿部ちゃん…っ



涙が溢れて止まらない。

涼太は立ち上がって、俺をゆっくり隣りに座らせた。



❤️佐久間。俺じゃ、阿部の代わりにならない?


🩷…………



涼太は俺を見つめている。



❤️全力で、お前の失恋の傷を俺が癒すよ


🩷……俺が、阿部ちゃんを好きなままでもいいの?


❤️構わない。俺は佐久間の隣りにいられるだけでいいんだ



ゴンドラが一番高い位置へと差し掛かった。

もう阿部ちゃんの姿はどこにも見えない。

遊園地のイルミネーションが涙で霞んでゆらゆら揺れる。まるで夢の中のような光景だった。

むせ返るような薔薇の花の香りと、変わらない涼太の優しい眼差しが俺を次第に落ち着かせていく。



🩷俺、本当はわかってたんだ。阿部ちゃんには、本当は別に好きな人がいるんじゃないかって


❤️うん


🩷でも、その相手は翔太じゃないといいなって思ってた


❤️そうだね


🩷俺、翔太の友達なのに、翔太の幸せの邪魔してた


❤️…………


🩷翔太に謝りたい。阿部ちゃんにもちゃんとごめんって言いたい


❤️二人は、佐久間に謝りたいって言ってたよ


🩷えっ


❤️二人とも佐久間のことが大好きだから、苦しませたくなかったんだと思うよ


🩷そんな……



俺は泣いた。

二人が何も言わないのは、俺が阿部ちゃんを好きだって言い続けたせいなのかな。

俺が傷ついて、苦しむのが嫌だから、さっきも俺とデートまでしてくれて…。



❤️俺は阿部にはなれないけど



涼太は想いのこもった目で俺だけを見ている。



❤️佐久間が好きだ。佐久間だけが好きだ


🩷涼太……ありがとう



俺は、涼太に身体を寄せた。

今一番居心地が良くて安心できる場所はここだと思った。

主役は佐久間くん

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さっくん頑張ったね!ゆっくり傷を癒して欲しいです。舘様がずっと傍にいてくれるから

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