💛side
💚やあ、お二人さん、遅かったね
阿部から観覧車の前に来いとLINEが来ていたので、俺は翔太を連れてここまで来た。
もう日は落ち、あちこちで電飾が瞬いている。
遊園地は、昼間から全くその姿を変え、今は恋人たちにぴったりなムードを醸し出していた。
人影も大分減った。
もう誰も俺たちを見ていなかった。
💛待たせたな、阿部
💙佐久間は?
阿部は観覧車を見上げた。
💚今頃うまくいってると思うよ
💙そっか。よかった
💛おいてめえ!佐久間に何をした?
俺は阿部に掴みかかった。
💚翔太、お前が好きなのは誰?
💙えっ
💛また翔太をいじめる気か?
俺はますます頭に来て、阿部の胸ぐらを締め上げた。
💚暴力反対。人が見てるよ
仕方なく手を離す。
阿部が襟元を整えた。
揉める俺たちを面白そうに見ていた人たちは、俺と阿部が離れると興味を失ってその場を離れて行った。
💚ねえ翔太。答えてよ。お前が好きなのは、誰?
💙そんなのこんな場所で言えるわけないじゃん……
翔太は、阿部に弱々しく反抗した。
💚渡辺翔太!!!
急に大きな声で、阿部が翔太の名を呼ぶ。
俺もびっくりして、阿部を見た。
💚俺はお前に無理強いはしていない。お前が本気で好きな相手を聞いてるだけだよ。
💙亮平……
翔太が、阿部を下の名で呼んだ。
そんなふうに翔太が阿部を呼ぶのを初めて聞いた。
俺は胸が痛くなった。
💚選んで?翔太
翔太は阿部しか見ていない。
ここに俺がいるのに、まるで目に入らなくなったようだった。
その横顔は俺が今まで見たどの瞬間の翔太とも違っていた。
💙…っ。ごめん、照。俺は亮平を選ぶ
翔太はそう言うと、阿部の元へと歩いた。
阿部はふうっ、と息を吐いた。
💚じゃあ照。そういうことだから。俺たちもう行くね
そう言って、阿部は翔太を連れて、人混みの中へと消えて行った。
二人は手を繋いでるわけでも、腕を組んでいるわけでもないのに、愛し合う恋人同士にしか見えなかった。
そして、その場にはたった一人、俺だけが取り残された。
俺は何か勘違いをしていたのだろうか?
阿部に付き従う翔太は、いやいやには見えなかった。翔太に繰り返し誰が好きなのか問う阿部も、意地悪というのではなくて、切実だった。
選ばれなければ死んでしまうような切羽詰まったどこか悲しい響きがあった。
俺には解ってしまった。
洗脳なんかじゃなく、あの二人は魂の底で愛し合っているのだと。
俺は阿部が翔太を全身全霊で求め、翔太がそれに全力で応えていることを頭ではなく、心で理解した。
俺が呆然と立ち尽くしていると、二人が消えた人混みの中から、よく見知った顔が現れた。
💜照!いたいた!!
💛ふっか?どうして……?
💜いや、阿部に呼び出し食らってさ。阿部は?
💛たった今帰った
💜そっか。まあいいや照に会えたし
ふっかは、俺の様子を労るように、言った。
💜まあ、色々あるよな。でもいずれ時間が解決してくれるさ
💛そうかな…
💜俺もせっかく来たし、何か乗らね?
💛よし、行くか
そうして俺たちは夜の遊園地を楽しんだ。
コメント
3件
ここでまたいわふかが始まっちゃうのかな🫣💛💜