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つかであきひろ
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エルザ:ガルディニア帝国の大皇妃。新婚生活にも慣れ、皇宮の生活を楽しんでいる。ギルベルト:ガルディニア皇帝。妻が作ったお弁当を国宝に指定しようとする重症の愛妻家。ノヴァ:神竜。人間の姿でお弁当のつまみ食いを狙う、頼れる(?)相棒。「よし、これで完成です!」皇宮の巨大な厨房で、私は満足げに声を上げた。目の前にあるのは、私が朝から張り切って作った特製の「お弁当」。ガルディニア帝国で採れた新鮮な野菜をたっぷり使い、ギル様の大好きな甘い卵焼きと、ジューシーな唐揚げをこれでもかと詰め込んである。「主、それは我の分もあるのだろうな? なければ今すぐこの皇宮の備蓄をすべて食い尽くすぞ」厨房の特等席で、出来立ての唐揚げを指でつまみ食いしながら、漆黒の長髪を揺らす美青年――ノヴァが不敵に笑った。「もう、ノヴァ! つまみ食いはダメって言ったでしょ? もちろん、ノヴァの分も特大サイズで用意してあるから安心して」『万物看破』で見なくても、ノヴァがこのお弁当をどれほど楽しみにしていたかは、その嬉しそうにパタパタと動く背後の(幻の)尻尾を見れば一目瞭然だった。【暗黒神竜・ノヴァ】状態:幸福・お腹がペコペコ本心:『主の作る料理はやはり世界一だ。あの堅物皇帝に全部独占させるわけにはいかん。我も家族として半分は権利を主張させてもらうぞ』「ふふ、ありがとう。さあ、執務室で待っているギル様のところへ届けに行きましょう!」私はバスケットにお弁当を詰め、ノヴァと共にギル様のいる執務室へと向かった。◇「――エルザ!? どうしてここに。いや、来てくれたのは嬉しいが、体調は大丈夫なのか? 歩いて足は痛まないか? 疲れてはいないか?」執務室の扉を開けた瞬間、山積みの書類に囲まれていたギル様が、弾かれたように立ち上がって私に駆け寄ってきた。そのまま流れるような動作で私を横抱き(お姫様抱っこ)にし、フカフカのソファーへと優しく横たわらせる。「ギル様、落ち着いてください! ほんの少し歩いただけですし、私はとっても元気です!」「しかし、君の細い体が心配なのだ。……ん? そのバスケットは……」「はい! 今日はギル様のために、私が朝からお弁当を作ってきたんです。いつもお仕事、お疲れ様です」私がはにかみながらバスケットを開けると、ギル様はまるで伝説の国宝でも見るかのように、お弁当を大真面目な顔で見つめ、それから劇的な溜め息をついた。「……信じられない。エルザの手作り弁当だと? 素晴らしい、これは我が国の国宝に指定するべきだ。今すぐ魔導技術で時間を止め、永久に保存する手続きを――」「保存しちゃダメです! 今すぐ食べてください!」【ギルベルト・ガルディニア】状態:感動の極み・限界突破した愛妻家本心:『ああ、エルザが私のために料理を……! 愛おしすぎて胸が苦しい。食べるのがもったいない。いや、でもエルザの愛を一口も残さず私の体内に取り込まなければ。よし、国宝指定は次の機会にしよう』(……ギル様、本当にお仕事の時とのギャップが凄すぎます……!)それでも、ギル様が私の作った唐揚げを口に運び、「世界で一番美味い」と幸せそうに微笑んでくれる姿を見るだけで、私の胸は甘い幸福感でいっぱいになった。『おい皇帝、我の分の唐揚げを睨むな。これは主が我のために作ってくれたのだ』『ノヴァ、お前は少し食べたらすぐに庭の警備に戻れ。エルザと私の空間に長居するな』二人がいつものように子供っぽい口喧嘩を始める。世界を滅ぼしかけた神竜と、大陸最強の皇帝。そんな二人が、私の作ったお弁当を囲んで笑い合っている。かつてレムリア王国で「無能」と蔑まれ、誰からも必要とされていなかった私が、今ではこんなにも愛され、世界の中心で笑っている。過去の苦しみは、この最高の幸せに出会うためのプロローグだったのだと、今なら心から思えた。「――んっ……」その時、急に胸の奥が淡く熱くなり、小さな目眩が私を襲った。「エルザ!?」「主!?」ギル様とノヴァの顔が、一瞬で強烈な焦燥に染まる。ギル様はすぐさま私を抱きしめ、その額に手を当てた。「どうした、どこが痛む!? やはり疲れが――」「あ、いえ……痛いわけではないんです。ただ、なんだかお腹の奥が、温かくて不思議な感覚がして……」私は自分のアゴの下あたりに手を当て、それからふと思い立って、自分自身の体を『鑑定』してみた。画面に表示された文字を見た瞬間、私は驚きに目を見開いた。【エルザ・バランタイン】状態:至福・極めて健康宿りし奇跡:【ギルベルトとの間に新しき命(小さな魔力の光)が宿っています】「え……嘘……」私が呆然と呟くと、私の視線の先を追ったギル様が、ハッと目を見開いた。最高位の魔力を持つギル様とノヴァには、私の体内で小さな、けれど信じられないほど純粋で温かい「新しい命の魔力」が灯ったのが、はっきりと分かったのだ。「エルザ……それ、は……」ギル様の銀色の瞳から、一筋の美しい涙がこぼれ落ちた。あの冷徹で知られる皇帝陛下が、声を震わせながら、愛おしそうに私のお腹へとそっと大きな手を添える。「我が子……君と私の、宝物か……。ああ、ありがとう、エルザ。私を世界一の幸せ者にしてくれて……!」ギル様は私を壊れ物を扱うように抱きしめ、何度も何度も、愛を確かめるように髪や頬にキスを繰り返した。『ほう……我に、人間の弟か妹ができるのだな。ふん、我が最強の神竜の加護を授けてやろう。世界で一番安全な赤子になるぞ』ノヴァも人間の姿のまま、とても優しく、誇らしげに目を細めて微笑んでいる。「ふふ、二人とも、気が早すぎますよ。……でも、嬉しいです。これからもっともっと、賑やかで幸せになりますね、ギル様、ノヴァ」大好きな二人の愛に包まれながら、私はお腹の小さな命に向けて、優しく微笑みかけた。無能と捨てられた鑑定聖女の物語は、ここからまた、新しく、もっと幸せな『家族の未来』へと続いていくのだった。