この作品はいかがでしたか?
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「ほら、飯だ」
上から声が聞こえて顔を上げる。薄汚い皿に1つの食パンが置いてある。もちろん塗るものはなし。いつのものか分からないものだ。
「……もう少しくれよ」
「飯があるだけ感謝しろ。どうせ今日は最後の晩餐の日だろ」
あぁ、そうだった。今日は俺の死刑執行の日。確か好きなものが食べれるんだったな。何を頼もう。そう考えていると看守は檻の前から去ってしまう。いただきますと言ったあとパンに手を伸ばす。お世辞にも美味いとは言えないが話す相手もいないので無言で食べる。俺はこの牢屋に収監されている罪人。ただ、罪を犯した覚えは無い。なので冤罪、ということだ。だが今更弁解しても何ともならない。死刑を受け入れるしかないのだ。行儀は悪いが寝転がりながらパンを食べ続けた。
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「111番、出ろ」
ついに来た。死刑執行の瞬間。ここで暴れても何も残らないので大人しくついていく。コツコツと看守の靴の音が静かな廊下に響いていた。部屋に着くと牢屋とは違い、随分綺麗な部屋だった。全く、牢屋もこれくらいにしてくれないだろうか。椅子に座らされ、紙を渡された。家族、友人、恋人などに手紙をかけるらしい。要らないので断った。死刑の仕方は窒息死。ボタンを押すと床が落ちる仕組みである。1人で押すとその人が自分が殺したと責任を負い、死んでしまうことがあるらしいので三人でボタンを押し、どれかが繋がっているという。昔の人は頭がいいな。椅子に座り待っていると食事が運ばれた。メニューはハンバーガー。人生の最後なんだ。ここの飯は質素で食べた気にならない。しっかり食べなくては。口に運び味わって食べる。それは囚人生活の中で1番美味かった。ただ人に見られながら食べるのは中々に気まずい。いつもより早く食べ終わる。食べ終わると縄がある部屋に通された。首に縄を通す。看守三人がボタンの前に立つ。
「……何か言い残すことは」
看守が問う。
「…………この国は」
笑顔で言ってやった。看守は顔を背けると目をぎゅっと瞑ってボタンを押そうとした。その時、ドガーンと大きな音が鳴った。看守3人はしっかり伸びていた。そこには髪の長い女の人。その人はこちらにやってくる。俺の前まで来るとずいっと顔を近ずける。俺は思った。あぁ、こいつ頭がおかしいんだなと。なぜならそいつは重罪人を前に、目を輝かせていたのだから。
コメント
2件
新連載嬉しいー‼️今までいろんな人の小説見てきたけどゆいかの書く小説一番好きだよ😭💞続き楽しみ♩