テラーノベル
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事の発端は、向井康二の何気ない一言だった。
「やっぱな、しょっぴーの一番可愛い顔を引き出せるのは、専属カメラマンの俺やと思うねん!」
楽屋のど真ん中で、向井がカメラを掲げて宣言した。
ソファでスマホを見ていた渡辺翔太は「はあ?」と顔をしかめたが、それがゴングの合図だった。
「いやいや康二、それは違うね」
即座に噛みついたのは佐久間だ。
「翔太が一番心を許して甘えてくるのは俺だろ! 俺の膝で寝る時の翔太、マジで猫だから!」
「ちょっと待ってよ!」
ラウールが立ち上がり、長い手足を広げて渡辺を背後に隠した。
「翔太くんのサイズ感に一番フィットするのは僕だし! 大型犬と飼い主みたいなこの可愛さは、僕だけの特権でしょ!」
「お前らさぁ、表面的なことばっか言ってんじゃねーよ」
低い声と共に、深澤辰哉がニヤリと笑いながら割り込んでくる。
「俺と翔太の関係値、ナメんなよ? 言葉なくても通じ合うし、財布も共有してる(一方的に)。熟年夫婦の空気感は俺だけのものだわ」
「ふっかさん、それただの介護じゃん」
冷静にツッコミを入れた阿部亮平が、眼鏡の位置を直しながら一歩前へ出た。
「翔太の体調管理からスケジュールの把握、欲している言葉の『正解』を出せる確率。データで見れば俺が一番の理解者だけど?」
「はいはい、ごちゃごちゃ言わない」
岩本照が腕組みをして仁王立ちする。
「翔太が一番安心するのは、昔からの『男友達』としての俺だろ。ドライブ連れてって、タピオカ飲ませて機嫌取れんのは俺だけ」
そして、少し離れたところから、目黒蓮が真っ直ぐな瞳でボソッと言った。
「え、俺っすよね? 翔太くん、俺が触ると嫌がるフリして顔赤くするし。……俺のこと大好きですよね?」
一斉に全員の視線が渡辺に集中する。
7人の男たちが、獲物を狙うハイエナのように渡辺を取り囲んだ。
「「「なぁ、翔太!俺が一番だろ!?」」」
大の大人が7人がかりで詰め寄ってくる圧迫感。
耳元で響く怒号のような愛の告白。
渡辺のキャパシティは、音を立てて崩壊した。
「……ぁーもう、うっっっせぇなああああ!!!」
渡辺が頭を抱えて絶叫する。
全員がビクッとして一瞬静まり返った隙を突き、渡辺はソファから飛び出した。
「お前らマジでしつこい!暑苦しい!胃もたれすんだよ!」
「えっ、しょっぴー!?」
「翔太、どこ行くの!?」
「逃げんなよ翔太!」
追いかけようとするメンバーたち。
しかし、渡辺が向かった先は、楽屋の隅っこ。
そこには、この騒動の間、一切会話に入らず、優雅にバスローブ姿で紅茶を飲んでいる宮舘涼太がいた。
渡辺は迷わず宮舘の元へ行くと、その隣の椅子にドサッと座り込み、宮舘の腕にしがみついて顔を埋めた。
「……りょうた……」
消え入りそうな、助けを求める声。
その瞬間、楽屋の時が止まった。
宮舘は、眉ひとつ動かさずにカップをソーサーに置くと、しがみついてくる渡辺の背中にゆっくりと手を回した。
「……騒がしいね、翔太」
「……うん……」
「疲れたかい?」
「……つかれた……もう無理……」
渡辺は完全に幼児返りしていた。
誰が一番とか、そんな議論をする余地すらない。
生まれた時から一緒。DNAレベルで刻み込まれた安心感。
ここは「一番」を決める場所ではなく、渡辺翔太が「帰る場所」なのだ。
宮舘は、呆然と立ち尽くす7人のメンバーたちにゆっくりと視線を向けると、国王の余裕たっぷりに、フッと口角を上げて微笑んだ。
「……だ、そうです」
その一言の威力。
完全なる勝利宣言。
誰も何も言い返せない。
「うわぁぁぁ! やっぱ舘様には勝てねぇぇ!」
「ズルいよ幼馴染! 強すぎるよ!」
「解散解散! ゆり組の時間だわこれ!」
メンバーたちが悔しそうに散っていく中、渡辺は宮舘の匂いに包まれて、ようやく安堵の息を吐いた。
「……ありがと」
「いいよ。……で、夕飯どうする?」
「……涼太んち行く」
「はいはい」
結局、世界はゆり組を中心に回っている。
騒がしい争奪戦の勝者は、戦わずして玉座に座っていた宮舘涼太だった。
コメント
7件

舘様には勝てません🤗 誰もが納得です♥️💙

やっぱり舘様に勝てる人はいませんよね‼️‼️‼️ ゆり組最高です❤️💙🌹
