くるみは緑谷出久の腕の中で、目を閉じていた。
その温もりが、彼女の心を一瞬だけ癒やす。しかし、すぐに感じるのは、やはり深い孤独だった。
彼女は心の中で叫ぶ。「一人で生きるんだ。」
緑谷の声が耳に入る。
「くるみ、もう逃げなくてもいいんだ。」
その優しい言葉は、くるみにとってはかえって重荷に感じられた。
「でも、私は逃げなきゃ…」
彼女は心の中でつぶやく。
その瞬間、くるみはふと心に決意を固めた。
「私は…私だけで前に進むんだ。」
その思いが、身体の中で何かが弾けるように広がった。
くるみは緑谷から手を引き、ゆっくりと地面に足を着けた。
彼女の動きには迷いがない。
ただただ、前へ進みたかった。
「ありがとう。」
くるみは、誰に向けて言うでもなく、低く呟いた。
その言葉が、彼女の心を少しだけ軽くした。
そのまま、くるみは周囲を見渡す。
ヒーローたちは、くるみが一歩を踏み出すのをじっと見守っている。
その中で、爆豪勝己が少し眉をひそめて言った。
「お前が一人で行くなら、俺たちも言うことはねぇ。」
その言葉は、くるみを試すようなものだった。
けれど、くるみはそれに動じることなく、しっかりとした足取りで歩き出す。
「そうだ、私は一人で行くんだ。」
その一言が、くるみの心を決定づけた。
彼女は他の誰かに頼ることなく、自分の力で進んでいく。
その覚悟は、どこか痛みを伴っていたが、それでも強く足を踏み出す。
何もかもを投げ出して逃げたくなる気持ちを抑え込み、くるみは空を見上げた。
昼間の青空が広がり、白い雲がゆっくりと流れている。
その景色に目を向けると、ほんの少しだけ心が軽くなるような気がした。
「私は、一人で生きる。」
その言葉がくるみの心に響く。
彼女は何度もその言葉を繰り返した。
その瞬間、空を見上げながら、自分の羽を広げた。
小さくて黒い羽。それは、くるみがずっと持っていたものだ。
それが、彼女の力でもあり、重荷でもあった。
しかし、今、その羽はくるみにとってただの重さではなく、自分を守るための力であり、自由を掴むための翼だと感じていた。
くるみは深呼吸を一つして、再び羽を動かし、空へと飛び立った。
その羽音は、軽やかでありながら確かな意志を持っていた。
どこへでも行ける、そしてどこでも生きていけるという、強い決意の羽音。
彼女は空を飛びながら、心の中で静かに誓った。
「私は、もう一人で進む。」
彼女の中に、迷いがなくなったわけではない。
孤独や恐怖が完全に消え去ったわけでもない。
でも、今は自分の力で進むべき時だと、強く感じていた。
くるみが羽を広げて飛ぶ姿は、空を自由に翔ける一人の少女の姿そのものであった。
彼女は今、誰にも縛られることなく、自分だけの道を切り開こうとしていた。
その背中には、もはや誰かに頼ることなく、ただ自分の力で生きるという決意が強く感じられた。
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