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#そのじん
笑う門には福来る
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舜太side
ここは、東京都渋谷区恵比寿総合病院。
都内でも有数の規模を誇るこの病院では、A棟からD棟まで、それぞれ専門の診療科や病棟が設けられている。
そのD棟で研修医として働く俺_曽野舜太は、今日も朝から慌ただしく走り回っていた。
「舜太くん、調子はどう?」
「はい!お陰様で!」
「そっか、頑張ってね」
「ありがとうございます!」
この人は、山中柔太朗。 普段は救急救命士としてこの病院で働いている。
救命士なのに、俺の研修にまで付き合ってくれている、いわば教育係だ。
判断が早く、何より患者さんへの対応が的確で優しい。
俺にとっては尊敬する先輩の1人だった。
「ふぅ…」
一通りの仕事を終え、小さく息を吐く。
「お疲れ、だいぶ慣れてきたじゃん」
「ほんまですか?」
「うん、最初の頃より全然いいよ」
「よっしゃー!」
「でも、まだまだだからね、?笑」
「ですよねー……笑」
「ははっ、笑」
そんな、いつも通りの1日になるはずだった_
「曽野くん、教授がお呼びだよ」
そう言われたのは昼過ぎのことだった。
「俺ですか?」
「うん、すぐ来て欲しいって」
思い当たる節が何も無く、少し不安を抱えながら教授室に向かった。
「失礼します」
「おぉ、来たか曽野くん」
「はい」
教授は俺の顔を見るなり、手元の資料をパタン、と閉じて俺に視線を移した。
「君に1つ、頼みたいことがある」
「なんでしょう……?」
そして告げられた言葉に、俺は思わず目を丸くした。
「新しいプロジェクト、”EBiSU MER”の一員に君を選ばせて頂いた」
「え……?」
「EBiSU MER」
この病院の新プロジェクトで、いわば救急救命隊のようなものだ。
何となく、意味はわかっている。
けれど_
「僕、研修医ですよ?」
思わず確認してしまった。
「そうだね」
「で、ですよね…」
「だから、君を選ばせてもらった」
「……」
何が何だかわからない。
教授は続けた。
「現場へ直接赴き、救急患者に対して迅速な処置を行う。病院へ搬送する前から治療を始める、これまでにない試みだ」
「……現場に?」
「そう。医師、救命士、麻酔科医など、各分野から選抜されたメンバーで構成する」
そこで教授は、一枚の資料を俺に渡した。
「集合場所は地下の訓練室。詳しい説明はそこで受けてくれ」
「……分かりました」
返事をしながらも、頭の中は疑問だらけだった。俺なんかが、本当に参加していいのだろうか。研修医の俺に何ができるのだろうか。
正直不安でしか無かった。
それでも、胸の奥ではなぜか少しだけワクワクしていた。
指定された時間。
俺は地下の訓練室へ向かった。
扉を開ける。
「……あれ?」
そこにいたのは、見慣れた顔だった。
「柔太朗さん?」
「……え?」
柔太朗さんも俺を見るなり、驚いた顔をする。
「舜太くんも選ばれたの?」
「そうなんですよ!」
「びっくり、まさか舜太くんだとは思わなかった……笑」
「俺もですよ!笑まさか研修医が選ばれるなんて……」
「えぇっ!?君、研修医なん!?」
隣から声が飛んできた。
振り向くと、そこには知らない男性が立っていた。明るそうな人。
俺は慌てて背筋を伸ばす。
「D棟から来た研修医の曽野と申しますっ!よろしくお願いします!!」
すると、その人はパッと手を差し出した。
「B棟、麻酔科医の塩﨑太智です!」
「よろしくな!」
ぎゅっと握手を交わす。
「いや〜、研修医が来るとは思わんかったわ!」
「俺もです……笑」
「まあまあ!一緒に頑張ろうや!」
「はい!」
その明るい雰囲気に、少しだけ緊張がほぐれた。
それから俺たちは、30分ほど話をしていた。
どんな活動になるのか。
どんな人が来るのか。
そして、どうして自分たちが選ばれたのか。
そんな話をしていたとき。
「すみません!」
「緊急のオペで遅れてしまいました」
勢いよく扉が開いたかと思うと、白衣を着た男性が入ってきた。
「まだ1人来てないんで大丈夫ですよ!」
太智さんが明るく返す。
「そうですか、よかったです」
その人はほっとしたように息を吐くと、俺たちの方へ向き直した。
「A棟、医師の吉田仁人と申します。」
落ち着いた声に、ものすごく冷静な雰囲気。
「よろしくお願いします!」
俺が頭を下げると、仁人さんもこちらを見る。
「……君は?」
「あ、研修医の曽野舜太です!」
「研修医?」
不思議そうに聞き返された。
「そうなんですよ、笑」
「そっか……」
仁人さんは少し考えるように俺を見てから、ふっと表情を和らげた。
「まぁ、これから経験だよね」
「よろしく」
「はい!」
差し出されたその手を取った。
ガチャっ
また扉が開く音がして、全員が一斉にそっちを見る。
「ふわぁ〜」
大きな欠伸をしながら、男性が入ってきた。
「あれっ、みんなもう来てんじゃん」
「14時からじゃねーの?」
「13時からですけど」
眠そうな声でそういった男性に、 仁人さんが即答する。
「おっ、仁人せんせ〜」
男性が仁人さんに手を振る。
仁人さんは一瞬だけ見て、黙ってすぐにそっぽを向いた。
初対面の俺にも分かるくらい、明らかに空気が変わった。
そんなことを気にしている間にも、その人は全く気にせず笑っている。
「A棟から来た佐野勇斗で〜す、よろしく!」
「……えっ、!?」
その名前を聞いた瞬間。
俺の中で、何かが繋がった。
「佐野……勇斗……?」
「ん?」
「えっ、あの……!」
俺は思わず身を乗り出した。
「『天才医師』って言われてる……?」
「あー」
勇斗さんは少し考えるような顔をしたあと、
「そうなの?」 と笑った。
「人違いじゃね?笑」
「いやいやいや!」
思わずツッコんでしまう。
この人の名前は、院内でもかなり有名だった。
難しい症例を何度も成功させている凄腕の医師。
A棟だけでなく、他の棟からも応援を頼まれることが多い。
俺みたいな研修医でも知っているくらいの有名人だ。
「……ほんとにあの佐野先生なんだ」
「だから人違いかもよ?」
「絶対違わないですよ!」
俺がそう言うと、太智さんが笑った。
「舜太くん諦め、この人こういう感じやから」
「太ちゃん褒めてる?」
「褒めてますよ!」
「絶対嘘じゃん笑」
その横で、仁人さんがため息をつく。
「……佐野先生、始めますよ」
「はーい」
「そんな怒んないでよ〜、仁人先生?」
「……」
どうやら、本当に仲が悪いみたいだ。
全員が揃ったところで、仁人さんが資料を広げた。
「では、今後の活動について説明します」
資料には、プロジェクトの概要や活動内容が細かく書かれていた。
現場への出動。
患者の状態確認。
必要に応じた応急処置。
病院との連携。
そして、搬送先の決定。
「実際に現場へ到着した場合、役割分担が重要になります」
仁人さんが説明を続ける。
「医師が診断と治療方針を決定。救命士は患者の状態確認と初期対応、搬送までの管理。麻酔科医は必要に応じて気道確保や鎮静などを担当します」
俺は必死にメモを取った。
「そして曽野くん」
「はい!」
突然名前を呼ばれて、背筋が伸びる。
「君は研修医という立場だから、最初は我々のサポートを中心に動いてもらう」
「分かりました!」
「分からないことがあれば、現場で勝手に判断しないこと。必ず誰かに確認するように」
「はい!」
当たり前のことだ。
それなのに、 胸の奥が少しだけ痛かった。
やっぱり俺だけ、明らかに経験が足りない。
みんなはそれぞれ専門家。
柔太朗さんは救命士。
太智さんは麻酔科医。
仁人さんも勇斗さんも、院内では名の知れた凄腕医師。
その中に、 研修医の俺。
「……大丈夫かな」
小さく呟いた。
すると隣にいた柔太朗さんが、俺にだけ聞こえる声で言った。
「舜太くん」
「はい?」
「焦らなくていいからね」
「……」
「俺がちゃんと見てるから」
「……ありがとうございます」
少しだけ、心が軽くなった。
その日の夕方。
教授への報告を終え、5人で訓練室を出る。
「じゃ、明日から訓練開始やな!」
太智さんが元気よく言った。
「よろしくお願いします!」
俺も頭を下げる。
「こちらこそ」
仁人さんが答える。
柔太朗さんも笑った。
「頑張ろうな、舜太くん」
「はい!」
そして勇斗さんは。
「まあ、楽しくやろーぜ」
そう言って、俺の肩を軽く叩いた。
「……はい!」
5人の救急救命隊としての生活が、始まった。
だけど、 帰り道。
一人になった俺は、ふと足を止めた。
本当に、俺についていけるのかな。
今日一日で、何度もそう思った。
救命の現場は、病院の中とは全く違う。
一つの判断が、そのまま患者さんの命に関わる。
そんな場所に、俺が立つ。
正直、不安だった。
でも。
俺には、忘れられない記憶がある。
まだ幼かった頃。
事故に巻き込まれた俺を、救急救命隊の人たちが助けてくれた。
何も分からず、不安でいっぱいだった俺に、
「大丈夫だから」
と声をかけてくれた人。
その人たちの姿が、ずっと俺の憧れだった。
だから俺は医者になった。
いつか、自分も誰かを助けられる人になりたい。
「……頑張らないとな」
小さく呟く。
もちろん、不安が消えるわけじゃない。
それでも、 俺は一歩ずつ進むしかない。
こうして俺の、新しい日々が始まった。
実はこっそり書いてました……笑
TOKYOMER大好きなんです🥲
コメント
3件

MER×M!LKは私得すぎます、、🫶✨️ 続きが楽しみです! いつも素敵な作品をありがとうございます😊💕
いやあ、第2話、めっちゃ良かったです!研修医の舜太くんがまさか選ばれるとは思わず、正直「えっ?」ってなりましたけど、不安とワクワクが入り混じる感じがすごく伝わってきました。それに、メンバーそれぞれのキャラが立ってて、特に仁人さんと勇斗さんの空気の違いが印象的でしたね。最後の舜太くんの過去のエピソードもじんわり来ました。これからのチームの成長、楽しみにしてます!