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男女6人組で旅行へ来ていた。
3連休の1、2日目を使って。
最近集まれていなかったので、大切な大切な旅行だった。
栗巳(くりみ)は、メンバーの昇太と交際中である。
相手に告白され、両思いから始まった交際。
ただ2年経った今、2人の間にはマンネリが生まれてしまっている。
昇太には女好きな一面があり、最近他の女性と楽しそうに喋っていることが多くなっていた。
過去はしていた嫉妬もとうとうなくなり、2人の心はどんどん離れてしまっている。
もう栗巳自身どうでもよくなっていて、別れを切り出そうかと思っていた頃だ。
そのようなことなど知らないメンバーは、2人を楽しませてあげたいという思いで旅行に誘ったのだが。
2人にとっては正直迷惑でしかなかった。
言い出しっぺであり、このメンバーのリーダー的存在である隆(りゅう)がとってくれた旅館は、和風でとても趣がある。
深夜、栗巳は昔ながらの電気を、布団の中から見上げていた。
どんなに好環境だとしても、栗巳はこれからのことを考えると眠れなくなってしまう。
自分たちのせいで皆がバラバラになってしまったら?
または自分がここに居られなくなってしまったら
そう考えると眠れなくなるばかりで、栗巳は体を起こす。
…リビングに食べられる物でもあるだろうか
同室で熟睡している女子メンバーを起こさないように、廊下を進んだ。
リビングには、1人で酒を呑んでいる隆の姿があった。
そういや夕飯のときから呑んでなかったけ。
酒に弱い栗巳はただ凄いなぁと思う。
「…おう、呑むか?」
栗巳の気配に気付いたのか、隆は振り向いてにっと笑う。
第一声がこれとは、何て能天気なんだと苦笑い。
せっかくなので、1番弱い酒を出してもらった。
「何かあったのか?」
「え、…いや」
リーダーなんかに、これを知られるわけにはいかないだろう。なので上手く隠そうと努めるが、隆は勘が鋭かった。
見透かしたような目で、何があったのか言えと催促してくる。栗巳は負け、うつむき話した。
「…ちょっと最近、昇太と上手くいってなくてさ」
やはり気づいていなかったのだろう、隆は目を見開き、驚いたような素振りを見せる。
「──だから、ちょっと悩んでるってか。人肌が恋しいって言うのかな」
「…じゃあ、協力してやろうか」
「え、?」
一拍置いて放たれた言葉に、栗巳は顔を上げる。
するとキスを仕掛けられた。しかも唇に。
だがすぐに離れ、隆はニヤリと笑った。
「あいつを、嫉妬させる。あとお前の欲求も解消してやるよ。あと俺の気持ちもぶつけさせて貰わなきゃな」
「え、え?」
「一石三鳥、ってやつ」
何を言っているのか分からない、ちょっと待ってと言うが、隆はポンポンと話を進める。
しかし、ふいに聞こえた「本当はお前が好きなんだよ」という言葉に、栗巳はときめいてしまった。
再び重ねられる唇を離そうとしなかったのは、もう昇太への愛など無かったからだろう。