テラーノベル
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約束の午前10時。
雲ひとつない快晴の空の下、みこは指定された待ち合わせ場所に立っていた。
みこ「……はぁ、寝不足だにぇ……」
鏡で見なくてもわかる。目の下にはうっすらとクマ。
昨夜、耳元で囁かれた「全部、予約した」という言葉が呪文のように脳内で再生され続けて、一睡もできなかったのだ。
星街「おはよ。……みこち、ひどい顔」
不意に背後から声をかけられ、みこの肩が大きく跳ねる。
振り返ると、そこにはいつも通りクールにバケットハットを被った星街すいせいが立っていた。
みこ「なっ、すいちゃんだって……! 目、赤いよ!」
星街「……夜更かししてテトリスしてただけ。ビジネスパートナーの顔色なんて、気にしなくていいから」
すいせいはぷいっと顔を背ける。けれど、その指先はどこか落ち着かなく、自分のストールをいじっている。
二人の間に流れる、昨日までとは明らかに違う、ひりつくような沈黙。
星街「……行くよ。たい焼き、冷めたら美味しくないでしょ」
すいせいが歩き出す。
いつもならみこが「待ってよぉ!」と追いかける展開。
けれど今日は、すいせいが数歩進んだところで立ち止まり、振り返らずに左手を後ろへ差し出した。
星街「……はぐれると、ビジネス的にタイムロスだから。……貸して、手」
みこ「……っ」
差し出されたその手は、昨夜、雨のスタジオでみこの手首を強く掴んだあの手だ。
みこは震える手で、その細い指をそっと握りしめた。
昨夜の雨が嘘のような青空の下。
二人の距離は、昨日よりも、ずっと近くなっていた。
コメント
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おぉ…神よぉ…今日も絶好調ですなぁ…(すごく最高)