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「……ねぇ、手。いつまで繋いでるのさ」
歩道橋の上、みこが顔を真っ赤にしながら呟く。
「……あ。……忘れてた」
すいせいは無造作に手を離すが、その指先が離れ際、名残惜しそうにみこの手のひらを一度だけ強く撫でた。
到着したたい焼き屋は、香ばしい甘い香りに包まれていた。
「二つ、ください。……あ、違う。半分こするから一つでいいです」
「えっ、すいちゃん!? なんで一つなのさ! みこ、丸ごと一個食べたいんだけど!」
「……バカ。ビジネスパートナーなら、同じ味を共有して感想を言い合うのが効率的でしょ」
すいせいは有無を言わさず、焼き立てのたい焼きを一つだけ買うと、近くの公園のベンチへとみこを引っ張っていった。
「ほら、半分。……あ、熱っ……」
すいせいがたい焼きを割ると、中から黄金色のカスタードが溢れ出す。
「……あーんして」
「にぇ……っ!?」
すいせいが、ちぎったたい焼きをみこの口元へ差し出す。
「ほら、手が塞がってるでしょ。いいから、食べて」
みこは恐る恐る、すいせいの指先が触れそうな距離まで顔を近づけ、甘い生地を一口齧った。
「……おいしい、にぇ……」
「……でしょ。あ、カスタードついてる」
すいせいが指を伸ばす。
頬についたクリームを拭うのかと思いきや、彼女の指先はみこの下唇を、ゆっくりと、なぞるように動いた。
「っ……あ……」
昨夜の、あの触れるか触れないかの距離がフラッシュバックする。
すいせいの瞳が、真っ昼間の太陽の下でも、昨夜と同じように深く、熱く、みこを射抜いていた。
「……予約の続き、まだ終わってないんだけど。……どうする? ビジネスパートナーさん」
すいせいの吐息が、カスタードよりも甘く、みこの耳元を掠めた。